トランプ前大統領銃撃――日本時間14日(日)朝、ショッキングなニュースが飛び込んできました。
トランプ氏の傷は軽微で、凶弾にも屈しなかったトランプ氏の次期大統領への当選確率が高まる見通しが台頭したこともあり、日本が祝日だった15日(月)の米株式市場では、機関投資家が運用指針にするS&P500種指数が12日(金)終値比で0.28%上昇しました。
15日のニューヨーク外国為替市場の円相場は一時乱高下があったものの、終値は1ドル=157円90銭台。翌16日の東京外国為替市場では一時158円台後半まで円が売られました。
16日(火)の東京株式市場の日経平均株価(225種)の終値は、米国株高や円高が小休止したことから、前週末比84円高の4万1,275円と小幅に反発しました。米大統領選でトランプ氏優勢との観測が高まり、防衛やインフラ関連などの株が買われました。
前週末に売り込まれた反動から一時300円以上値上がりする場面もありましたが、引き続き高値警戒感が上値の重さとなりました。
15日に開幕した米国の共和党大会で、トランプ氏が正式な共和党の次期大統領候補に指名されました。今週は「もしトラ(もしもトランプ氏が再び大統領になったら)」に対する期待や不安が交錯する相場展開になりそうです。
トランプ氏の政策は、減税や規制緩和など株高につながりやすい面が強いですが、中国に対する高額関税発動や移民対策強化など物価高の再燃や金利上昇を招きかねない側面もあります。
振り返って、先週前半の日本株は歴史を塗り替えるような破竹の高値更新が続き、7月11日(木)には日経平均株価が6月末終値から実に2,640円高となる4万2,224円まで上昇し、3日連続で史上最高値を更新。
東証プライム市場を中心に上場企業全体の値動きを反映したTOPIX(東証株価指数)も2,929.17ポイントまで上昇し、2日連続で史上最高値を更新しました。
しかし、先週11日(木)夜発表の米国の6月CPI(消費者物価指数)が大きな転換点に。
6月CPIは前年同月比3.0%上昇、前月比ではマイナス0.1%でした。前月比では4年ぶりに物価が下落。株式市場では、9月の利下げが確実視され、2024年中にさらに1~2回の追加利下げが行われる見通しも有力となりました。
にもかかわらず、これまで早期利下げ期待で上昇してきた、米国の巨大IT企業を中心にした米国株は急転直下、下落。
「株式市場はあまのじゃく」と言いたくなってしまうような、「材料出尽くし」の典型例といえる売りが殺到しました。
6月CPI発表直後には日本政府と日本銀行による為替介入と思われる急速な円高も進行。
円相場は短時間で4円も円高に振れて一時1ドル=157円半ばまで上昇したこともあり、円高に弱い日経平均株価の翌12日(金)は前日比1,033円安の4万1,190円と、米国株以上に急落しました。
日経平均は週間では前週末比0.7%(278円)高とプラスを維持しましたが、ジェットコースターのような急騰→急落劇に見舞われました。
為替介入と思われる1円以上の突然の円高は12日(金)のニューヨーク為替市場でも発生。今週も急速な円高進行が日本株の急落要因になりそうです。
ただ今週は、米国で景気・住宅指標が発表され、米国企業の2024年4-6月期決算発表が本格化することもあり、日本株も米国の政治、経済、企業業績の変化に強い影響を受ける展開になりそうです。
先週:日本株は最高値更新後に米CPIショックで急落、米ラッセル2000指数上昇で中小型成長株の上昇に期待!?
先週の日本株は、11日(木)までは全面高の展開でした。
9日(火)、10日(水)には、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が米国の上院・下院で半期に1度の議会証言。
利下げの具体的な時期については明言を避けたものの、インフレだけがリスクではない、労働市場は強いが過熱していないなど、市場の期待する9月利下げ開始に寛容な発言を行い、株価を勢いづかせました。
15日(月)の民間インタビューでも、物価上昇率が2%に下がるまで利下げを待つわけではないと語っています。
日本では、6月27日(木)に行われた米国の大統領選に向けたテレビ討論会で共和党のトランプ前大統領候補の支持率が上昇。
11月5日の大統領選で中国に対して強硬な姿勢を示すトランプ氏が勝利する観測が台頭。「中国がダメなら」と日本株に大量の見直し買いが入る「トランプ相場」が進行しました。
7月第1週(1~5日)、外国人投資家は現物株と先物取引合わせて8,810億円の買い越しとなり、2週連続で大規模な買い越しとなりました。
一説にはオイルマネー流入もうわさされ、カナダの公的年金による日本株投資も報じられるなど、外国人投資家の爆買いが、日経平均やTOPIXの史上最高値更新の原動力になったもようです。
しかし、11日(木)発表の米国6月CPIの上昇率が予想以上に鈍化したことで、これまで「マグニフィセント7」と呼ばれる巨大IT企業を集中的に買い、高金利が逆風となる中小型の成長株や住宅関連株をカラ売りしていたヘッジファンドが投資資金を逆回転。
米国巨大IT企業を利益確定売り、カラ売りしていた重厚長大産業の割安株や米国中小型株を買い戻す動きに走ったことが11日の米国株急変の一因でした。
その結果、巨大IT企業の影響力が非常に強いナスダック総合指数が前日比1.95%安と急落する一方、米国の中小型の成長株を指数化したラッセル(Russell)2000指数は11日に3.57%高と逆行高。週間でも前週比6%近く急上昇しました。
この流れは日本株にも反映され、日本の中小型の成長株を指数化した東証グロース市場250指数の12日(金)終値は前週末比3.0%高で、日経平均株価の0.7%高、TOPIXの0.4%高を大きく上回っています。
米国では、これまで独歩高だった巨大IT企業から中小型の成長株へ投資資金を移動させる「ローテーション(rotation:循環)」という言葉が盛んに取り上げられるようになっています。
また、12日(金)、15日(月)には米国企業の先陣を切って大手金融機関が2024年4-6月期決算を発表。
米銀最大手のJPモルガン・チェース(JPM)は不良債権増加に備えた貸倒引当金を大幅に積み増したことが不安視され、12日には前日比1.21%下落しましたが15日(月)には2%以上の反転上昇。
15日(月)には世界有数の投資銀行ゴールドマン・サックス(GS)の2024年4-6月期の純利益が前期比2倍と発表され、株価は過去最高値に達しました。
先週前半の日本株は、先物主導で外国人が買い進んだこともあり、日経平均株価に対する影響力が大きい銘柄の上昇が際立ちました。
日経平均株価に対する影響力が最も高いファーストリテイリング(9983)は11日(木)取引終了後の決算発表を見越して、11日終値時点では前週末比7.4%近くまで上昇。
11日(木)には2024年8月期の通期の最終利益を14%上方修正する好決算を発表。しかし、12日(金)は全体相場の急落に押されて前日比4.8%安。週間では2.2%の上昇にとどまりました。
12日のCPIショックによる急落が週前半の上昇を帳消しにしたのが主力の半導体株です。
日経平均株価に対する影響力の高い半導体製造装置メーカー最大手の東京エレトクロン(8035)は12日(金)の前日比6.2%安が響いて、週間でも前週末比1.8%のマイナスに沈みました。
今週:トランプ氏銃撃受けて「もしトラ」相場が進行!米企業決算発表が本格化
米国では今週16日(火)に米国の個人消費の動向が分かる6月の小売売上高が発表されます。
17日(水)には高金利政策で減少気味の6月住宅着工件数、18日(木)には7月のフィラデルフィア連銀製造業景気指数も発表になります。
18日(木)にはECB(欧州中央銀行)が理事会を開催。前回6月6日の理事会では政策金利を3.75%に引き下げ、8年3カ月ぶりの利下げを行いました。
今回は利下げを見送る予想です。
ラガルドECB総裁が次回9月12日(木)の理事会以降の利下げについて、具体的な時期や回数に少しでも言及するかどうかに注目が集まりそうです。
19日(金)には、日本の6月CPIも発表されます。市場予想では、価格変動が激しい生鮮食料品を除くコアCPIは前年同月比2.7%上昇と、円安進行もあって5月より伸び率が増加する見通しです。
輸入品をはじめとした物価高を阻止することが30日(火)~31日(水)に開かれる日銀の金融政策決定会合で政策金利の利上げや長期国債の買い入れ減額を決定する大義名分になっています。
米国では、2024年4-6月期の決算発表が本格的に始動。
16日(火)にはモルガン・スタンレー(MS)など金融株、17日(水)には医療機器世界最大手のジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)、18日(木)にはハイテク企業の先陣を切って映像配信のネットフリックス(NFLX)、19日(金)にはアメリカン・エキスプレス(AXP)などが発表します。
日本では18日(木)、株価が史上最高値圏にある半導体切断装置のディスコ(6146)が決算発表。
7月下旬から8月上旬にかけて本格化する3月期決算企業の第1四半期(2024年4-6月)決算の発表前に、業績を上方修正する企業に注目が集まりそうです。
また米国の中小型株指数ラッセル2000は15日(月)も1.8%高と続伸しており、日本でも東証グロース市場の成長株の中に株価急騰銘柄が生まれそうです。