10月27日(日)に投開票が行われた衆議院選挙は自民・公明の連立与党でも過半数の233議席に届かず、想定以上の自民大敗という結果になりました。

 今後は石破茂首相が歴代最短で退陣するか、新たな連立政権の枠組みがどうなるか、株価にとってはネガティブといえる野党中心の政権が発足するのかなど政治の大混乱が必至の情勢で、今週の日本株は続落しそうです。

 ただ、少しでも政局が安定する材料が出れば、売られ過ぎという状況から今週中のどこかでリバウンド上昇する可能性も十分に考えられます。

 事前の世論調査では、自民・公明の連立与党でも過半数に届かない見通しも有力だったため、すでに先週から日本株は下落。「選挙は買い」という経験則が通用しませんでした。

 先週の日経平均株価(225種)は1,067円(2.7%)安の3万7,913円まで下落。衆議院選挙が公示された15日(火)始値から25日(金)終値までで2,133円(5.3%)も値下がりしました。

 一方、米国では機関投資家が運用指針にするS&P500種指数が0.96%安と7週ぶりに下落。

 米国の長期金利の指標である10年国債の利回りが一時4.26%まで上昇したことが、絶好調の米国株にもストップをかけました。

 しかし、トランプ共和党大統領候補の熱烈な支持者でもあるイーロン・マスク氏が率いる電気自動車のテスラ(TSLA)が、2025年の強気な販売見通しをきっかけに前週末比22.0%も急騰するなどハイテク株は好調。

 ハイテク株が集まるナスダック総合指数は今週に集中する巨大IT企業の好決算への期待感もあり、25日(金)の取引時間中に一時7月10日につけた史上最高値を更新しました。

 AI(人工知能)関連の主力株である高速半導体メーカー・エヌビディア(NVDA)も2.57%高と続伸しています。

 今週、最も注目されるのは米国巨大IT企業の2024年7-9月期決算です。

 日本時間30日(水)早朝にグーグルの親会社アルファベット(GOOG)、31日(木)早朝にマイクロソフト(MSFT)やフェイスブックの親会社メタ・プラットフォームズ(META)、月が替わる11月1日(金)早朝にアップル(AAPL)アマゾン・ドット・コム(AMZN)が決算発表。

 こうした巨大IT企業はAI向けデータセンターの建設などに巨額の設備投資を行っています。それがエヌビディアなどAI関連の半導体株、ひいてはハイテク株全体の株価上昇につながってきました。

 今回の米国巨大IT企業の決算発表では、AI投資の現状に加え、本当にAI関連ビジネスが収益につながってきているのかどうかに投資家の厳しい目が集まりそうです。

 11月1日(金)には10月の米国雇用統計も発表。それ以前にも重要な米国の雇用・景気指標が「てんこ盛り」といっていいほど数多く発表されるため、11月5日(火)の米国大統領選挙まであと1週間となった米国市場も乱高下が予想されます。

 まずは27日(日)の予想以上の自民党大敗というネガティブサプライズで日本株がどこで下げ止まるか、政局をにらみながら冷静に判断しましょう。

 下げ相場は確かにピンチですが、株を安く買うチャンスであることも頭の隅に入れておきましょう。

 週明け28日(月)の日経平均終値は前週末比691円高の3万8,605円と急反発しました。与党の過半数割れは前週の株価の動向に織り込まれており、選挙を終えた安心感などから半導体株を中心に買い戻す動きが進んだことが要因として挙げられます。

先週:「選挙は買い」の経験則が通用せず日本売りの株安・円安!米国では地銀株に波乱!

 先週の日本株は「選挙は買い」どころか、今回に限っては「選挙は売り」と言いたくなるような下落が続きました。

 週間の業種別騰落率では、一時1ドル=153円10銭台まで円安が進みましたが、輸送用機器セクターのみが辛うじてプラスを維持。主力のトヨタ自動車(7203)は前週末比1.9%高でした。

 しかし、それ以外のセクターでは全てマイナス。米国などの金利上昇で収益向上が見込まれることから上昇していた銀行業が利益確定に押され、下落率最下位に沈みました。主力の三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)は5.8%安でした。

 石破首相の防衛力強化政策に対する期待感もあって、10月上旬まで上昇が続いた防衛関連株も川崎重工業(7012)が10.1%安、三菱重工業(7011)が9.6%安とさえませんでした。

 米国では、防衛企業大手ロッキード・マーチン(LMT)が2024年7-9月期決算を発表。次世代戦闘機「F35」など航空部門が減収だったことが影響しました。

 衆院選の自民党大敗を見越した材料出尽くしの売りに押された面もありそうです。

 23日(水)に新規上場した東京メトロ(9023)は株の売り出し価格1,200円を36%上回る初値1,630円をつけ順調な滑り出しでした。しかし、その後は売りに押され、25日(金)は初値を下回る終値1,609円で先週の取引を終了しました。

 10月第3週(15~18日)の投資部門別売買状況によると、外国人投資家は現物株・先物取引合わせて4,159億円の売り越しに転じています。

 米国では、商業用不動産の不良債権化で経営不振に陥っている米国地方銀行大手のニューヨーク・コミュニティー・バンコープ(NYCB)が25日(金)に2024年7-9月期の大幅減収と赤字転落、株主配当の減配を発表。週間で13.0%も急落するなど、地方銀行を中心にした銀行株の下落が相場の足を引っ張りました。

 気がかりなのは米国の長期金利の指標である10年国債の利回りが一時4.26%台まで上昇していること。

 米国で金利が上昇しているのは、非常に堅調な米国経済の動向を受け、11月7日(木)終了のFOMC(米連邦公開市場委員会)で追加利下げが見送られるのではないかという観測が影響しています。

 11月5日(火)の大統領選挙で共和党候補のトランプ前大統領の当選が有力視され、減税や財政出動、中国の輸入品に対する高額関税など物価高再燃に直結しそうな政策が実行されそうなことも、米国の金利が再び上昇モードに入った背景にあります。

 米国の長期金利が5%に向かってさらに上昇し続けるようだと、絶好調な米国株急落の引き金になりかねません。

今週:政治の大混乱で日本売り加速!?米国10月雇用統計など景気指標や巨大IT企業決算で乱高下?

 今週は27日(日)の衆議院選の結果を受けた石破首相退陣の可能性や新たな政権の枠組み構想など政治的な大混乱が日本株の波乱要因になるでしょう。

 日本の政治的混乱を嫌気した外国人投資家の日本売りが進んで、円安、株安、債券安(金利上昇)というトリプル安が日本経済に打撃を与える可能性もないとはいえません。

 11月5日(火)には米国大統領選も控え、米国株も様子見の膠着(こうちゃく)相場が予想されます。

 しかも、今週は米国で巨大IT企業の決算に加え、非常に重要な雇用・景気指標の発表が相次ぎます。

 巨大IT企業の他に30日(水)早朝にはAI半導体でエヌビディアのライバルとなっている米国半導体メーカー、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)も決算発表を行います。

 経済指標では29日(火)に9月の雇用動態調査(JOLTS)の求人件数や民間調査会社コンファレンス・ボードの10月消費者信頼感指数が発表。

 30日(水)には給与計算代行会社ADP(オートマチック・データ・プロセッシング)社の9月民間雇用統計や2024年7-9月期の米国実質GDP(国内総生産)の速報値も発表。

 31日(木)には米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が最重要視する物価指標である9月の個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)も発表されます。

 そして11月1日(金)には早くも米国の10月雇用統計やISM(全米供給管理協会)の10月製造業景況指数も発表に。

 前回9月の雇用統計では予想をはるかに上回る力強い結果となり、その後の米国株の急上昇に貢献。今回、10月の非農業部門新規雇用者数は前月比10.8万人増と9月の25.4万人増からはかなり落ち着く予想です。

 雇用統計やISM製造業景況指数は8月初旬や9月初旬に予想を下回る悪い結果となり、日米の株価急落を招いているだけに要注意です。

 反対に予想以上になるとFRBの利下げ先送りが濃厚になるため、堅調な雇用を好感して株高になるか、金利上昇で株安に振れるか、予想しづらい面も出てくるでしょう。

 日本国内では31日(木)に日本銀行の金融政策決定会合が終了。追加利上げはせず現状維持の見通しです。

 しかし、先週、一時1ドル=153円10銭台まで進んだ円安をけん制するため、会合後の記者会見で植田和男日銀総裁が追加利上げに積極的なタカ派的な姿勢を示したことは日本株にとってネガティブといえるでしょう。

 国内でも3月期決算企業の中間期に当たる2024年7-9月期決算が本格化します。

 30日(水)には日本2位の時価総額を競うほどになった日立製作所(6501)、31日(木)には半導体検査装置の人気株レーザーテック(6920)、11月1日(金)には資源高で潤ってきた三菱商事(8058)三井物産(8031)など大手商社が決算発表します。

 好決算や積極的な株主還元策を発表した企業は下落相場でも下値の堅い展開になるかもしれません。