今週の日本株は10月27日(日)に投開票される衆議院選挙に向け「選挙は買い」の上昇相場が起こるかどうかに注目です。
15日(火)の公示後、2週間にわたる選挙戦が始まりましたが、各党の論戦の中心は株高につながる新たな経済対策や成長戦略というより政治とカネの問題。先週の株式市場はほとんど盛り上がりませんでした。
過去に掲げた政策の「てのひら返し」が目立つ石破茂新首相が独自の存在感を発揮して、自民党単独ないし公明党との政権与党で議席の過半数を確保できる見通しなら株価にポジティブ。自民党大敗になれば非常にネガティブでしょう。
日本が祝日だった14日(月)の米国株は決算発表のあった銀行株の利益向上などを好感して続伸。
機関投資家が運用指針にする米国S&P500種指数は先週、前週比1.11%上昇しましたが、14日も0.77%高の5,859ポイントまで続伸し、年内6,000ポイント超えも視野に入ってきました。
米国株が絶好調の理由は、一時景気後退も危ぶまれた米国経済が依然堅調でソフトランディング(景気軟着陸)が期待というより確信に変わっているから。
先週9日(水)には、9月18日に0.5%の大幅利下げを決めた前回FOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録が公開され、多くの理事が0.5%ではなく0.25%の小幅利下げを主張していたことが判明しました。
10日(木)発表の米国の9月CPI(消費者物価指数)は変動の大きい食品・エネルギーを除くコアCPIが前年同月比3.3%の伸びと予想より0.1%高く、食品価格の上昇で9月CPIも2.4%増と予想を上回りました。
物価鈍化の減速で米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が利下げを急がない見通しを受け、長期金利の指標となる米国10年国債の利回りは10日(木)に4.12%台をつけるなど上昇。
金利上昇は株価にとってネガティブのはずですが想定の範囲内と見なされています。
11日(金)には米国銀行首位のJPモルガン・チェース(JPM)が予想を上回る好決算を発表して前日比4.44%高。
今週以降、本格化する米国企業の2024年7-9月期決算発表への期待感もあり、米国株は金利上昇をものともせずに上昇しています。
一方、先週の日経平均株価(225種)は前週末比970円(2.5)%高の3万9,605円まで上昇。
週明け14日(月)祝日のニューヨーク市場では一時1ドル=149円90銭台まで円安が進み、150円突破が目前です。日経平均先物価格(12月期近)も急上昇しており、15日(火)の日経平均株価は4万円の大台を超える可能性が濃厚です。
今週、米国では15日に10月のニューヨーク連邦準備銀行製造業景気指数、17日(木)に9月の小売売上高、18日(金)に9月住宅着工件数など米国の景気動向が分かる指標が発表されます。
また、15日(火)に投資銀行のゴールドマン・サックス・グループ(GS)、医療機器世界最大手のジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)、17日(木)にハイテク株の先陣を切って映画ネット配信のネットフリックス(NFLX)、18日(金)に日用品世界首位のプロクター・アンド・ギャンブル(PG)などが2024年7-9月期の決算を発表します。
堅調な米国景気を背景に個別企業が好決算を連発すれば、今週もS&P500種指数やダウ工業株30種平均の史上最高値更新が続きそうです。
先週:バフェット買いへの期待で銀行株上昇!米国株は利下げペース鈍化見通しでも絶好調!
先週は日経平均株価が前週末比2.5%上昇したのに比べ、より幅広い大型株の値動きを反映したTOPIX(東証株価指数)は0.5%高と低調でした。
半導体検査装置のアドバンテスト(6857)が11.8%高、年間売上高3兆円を達成した「ユニクロ」のファーストリテイリング(9983)が10.7%高となるなど、日経平均株価に対する寄与度の高い銘柄だけが突出して上昇した面もあります。
10日(木)に1ドル=149円50銭台の高値をつけるほど円安が進んだにもかかわらず、トヨタ自動車(7203)が0.9%の小幅安で終わるなど自動車株は低調な値動きでした。
一時、1ドル=161円95銭台まで円安が進んだころに比べると現状は10円以上の円高水準。11月上旬に集中する2025年3月期の中間期決算(2024年4-9月)で、業績上振れに期待できない可能性があることも外需株に買いが入りづらい理由かもしれません。
業種別騰落率ランキングでは、米国の金利上昇を好感して銀行株が上位にランクイン。主力の三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)は4.9%高でした。
10日には米国著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米国投資会社バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)が円建ての社債を発行して2,818億円を調達したことが判明。バフェット氏が日本の商社株に続いて銀行・保険株に投資するのではないかという期待感が高まっています。
2024年6-8月期の決算発表が相次いだサービス業、小売業セクターも上昇率上位に入りました。前期2024年8月期の営業利益が従来予想を大幅に上回ったカラオケチェーンのコシダカホールディングス(2157)は11日(金)にストップ高まで買われ前週末比14.9%も急騰しました。
8日(火)発表の8月の毎月勤労統計では、物価高の影響を加味した実質賃金が前年同月比0.6%のマイナスと3カ月ぶりに低下。
しかし個人消費拡大につながる賃金上昇が今後も続けば、インバウンド(訪日外国人)相手ではない内需小売・サービス企業の株価には追い風です。
中国の中央銀行に当たる中国人民銀行が大規模な金融緩和策を打ち出したことで急騰していた香港ハンセン指数は前週末比6.5%安と下落。
12日(土)の中国財政省の記者会見で具体的な財政刺激策が打ち出されなかったことで週明け14日(月)も0.75%下落するなど、中国株の急騰は一過性のバブルで終わりそうな気配も強くなっています。
米国ではAI(人工知能)関連株の主役エヌビディア(NVDA)が同社の次世代半導体「ブラックウェル」搭載サーバーの増産が台湾で拡大中という報道をきっかけに前週末比7.9%上昇するなど、半導体関連株の復調が続いています。
ハイテク株主体のナスダック総合指数の14日(月)終値はあと1%弱上昇すれば7月11日につけた最高値に到達するまで回復。今週中に史上最高値を更新する可能性も高いでしょう。
9日(水)に公開されたFOMCの議事録を受けて、市場では2024年の年内、11月7日・12月18日終了の残り2回だけとなったFOMCでそれぞれ0.25%の利下げが行われるという見通しが有力です。
しかし10日(木)にアトランタ連邦準備銀行のボスティック総裁が好調な経済指標が続けば11月のFOMCでの利下げ見送りは「問題ない」と発言するなど、利下げに慎重なFRB高官も多いようです。
高金利政策が長引いて米国経済に再び失速の兆しが出ると、株価の上昇に陰りが生じる可能性もありそうです。
今週:米国9月小売売上高や欧州利下げ、中国GDPに注目!石破関連の防災・地方創生株は盛り上がるか?
今週は17日(木)発表の米国の9月小売売上高が最重要指標になります。
前回、8月分は前月比で減少予想でしたが0.1%増と予想を上回ったものの、物価高で消費者がより低価格の商品を求める傾向が鮮明でした。
民主党のバイデン政権下で進んだ物価高に対する米国有権者の不満もあり、11月5日(火)に迫った米国大統領選挙では10月に入り中西部の激戦州でトランプ氏の支持率が現職の副大統領で物価高に無策だった民主党候補のハリス氏をやや上回る結果も出ています。
トランプ氏が次期大統領に選出された場合、不法移民の強制送還など過激な言動が巻き起こす政治的混乱や米国民の深刻な分断・対立が株式市場のリスクとして意識される可能性もありそうです。
17日(木)にはECB(欧州中央銀行)の理事会が終了。9月に0.25%利下げしたため、今回は利下げ見送りが予想されていましたが、0.25%の追加利下げに踏み切る見方も出ています。物価高抑制よりも欧州の景気減速を食い止める姿勢を鮮明にするためです。
18日(金)には深刻な不動産バブル崩壊に苦しむ中国の2024年7-9月期のGDP(国内総生産)も発表。前期2024年4-6月期のGDPは前年同期比で4.7%の伸びと政府目標の5%前後を下回りました。今回も4.6%の伸びと経済成長が鈍化する予想で、急騰した中国株に冷や水を浴びせるかもしれません。
27日(日)の投開票に向けて各党の論戦が始まった国内の衆議院選では、石破新首相がどんな経済政策を打ち出すかに注目したいところ。
石破首相が掲げる地方創生や防災省の創設などを受けて消防車両を製造するモリタホールディングス(6455)や産地直送アプリ「ポケットマルシェ」を運営する雨風太陽(5616)が一時急騰しましたが、先週には早くも失速しています。
今後も引き続き「これぞ石破銘柄」といわれるような急騰株の登場に期待したいところです。