シーズン・イン・ザ・雇用統計

 人々の経済活動は1年の季節単位で規則性を持つことが多いのです。例えば、クリスマスシーズンの12月は経済活動が活発になりますが、1月はその反動で低調になります。これまで何十年も続いてきた経済パターンです。

 ところが、新型コロナ禍によって人々の行動様式が劇的に変化したことで、これまでのパターンが全く役に立たなくなってしまったのです。例えば観光は、季節よりもクーポンの期限に合わせて行く人が増えたことで、真夏でも温泉地が混んだり、真冬でもビーチホテルが一杯になったりします。

 1月の雇用者は+51.7万人を記録しました。これは過去10年間の同月の平均である+23.5万人と比べても、モンスター級の雇用増です。経済活動が低下するこの時期としては考えられないほどの大幅な増加でした。

 しかし、これは季節調整が機能しなかったことが原因であって、雇用市場全体における総数が増加しているわけではないのです。重要なことは、今年前半の雇用者の大幅な増加は、後半までに同規模の大きな減少で埋め合わされる公算が大きいということです。

 非農業部門雇用者数はこれまで、予想よりも結果の方が多い「アップサイド・サプライズ」が続いてきました。しかし、6月の雇用統計では、この1年間で初めて結果が予想より少ない「ダウンサイド・サプライズ」となりました(予想+22.9万人、結果+20.9万人)。

 これが雇用市場のトレンド転換の始まりなのかはまだわかりませんが、今後発表されるデータはより注意深くフォローする必要があります。

 最初に書いたように、雇用統計は、FRBの金融政策の方向に重大な影響を与えます。季節調整の混乱したデータのせいで、FRBが必要以上に利上げを行ってしまったとすれば、下半期から来年上半期にかけては「大幅利下げ」という形で再調整されるリスクがあるということです。