米国株は、「二つの金利上昇」に耐えられるか

 米国は今、二つの金利上昇に見舞われています。一つは市場金利の上昇で、もう一つはクレジットスプレッド上昇によるものです。

【1】市場金利の上昇

 FRBの急激な利上げが招いたものです。ただし、3月に入り、短期金利は上がっても2年金利や10年金利は、上昇しなくなっています。短期金利は上がっても、米景気減速によって、中長期的には今の高金利は維持されないとの見方が増えているためです。

【2】クレジットスプレッドの上昇

 オフィス市況の下落によって、オフィス用ローンの出し手が減少しています。これにより、オフィス用ローンのクレジットスプレッドは上昇しています。

 CS救済のために、CSが発行していたAT1債(劣後債の1種)160億スイスフラン(約2.3兆円)を無価値にすると発表された波紋も広がっています。銀行が発行する劣後債への信頼が揺らぎ、クレジットスプレッドが上昇しています。

 このように、市場金利の上昇は一服しつつありますが、信用悪化による金利上昇は続いています。信用悪化による金利上昇が、不動産市況をさらに悪化させ、金融不安が拡大するリスクに注意が必要です。オフィスや住宅市況がどう変動するか、注意して見ていく必要があります。

 米国景気、米国株には二つの不安がのしかかることになります。一つは、いつまでも利上げを続けるFRBの不安。もう一つは、クレジットスプレッドの拡大に歯止めがかからない不安です。

 米国株は、長期的には買い場と考えていますが、短期的には二つの金利上昇を嫌気して下落するリスクが残っていると考えています。

 今日のレポートは以上です。以下、SVB・CSの信用不安が起こった要因について、ご参考まで、より詳しく解説します。