2018~2021年までの投機筋の売買を読み解く

 投機筋が日経平均を動かしてきていることを、2018年から2021年までの裁定残高の増減で見てみましょう。

日経平均と裁定売り残・買い残の推移:2018年1月4日~2021年12月30日

出所:QUICK・東京証券取引所データより楽天証券経済研究所が作成

 上のグラフの見方が分かって説明できるようになれば、投機筋の動き、裁定残の読み方は完璧です。以下、2018年以降の動きを説明します。

【1】裁定買い残高が高水準だった2018年

 上のグラフを見ると分かる通り、裁定買い残高は、2018年初には3兆4千億円もありました。この時は、「世界まるごと好景気」と言って良い状況でした。したがって、投機筋は世界景気敏感株である日本株に強気で、日経平均先物の買い建てを大量に保有していていました。

 ところが、2018年10月以降、世界景気は悪化しました。投機筋は、日経平均先物を売って、買い建てをどんどん減らしていきました。

【2】売り残を積み上げた後、踏み上げが起きた2019年

 2019年には製造業を中心に中国や日本の景気が悪化しました。それを受けて、投機筋は日経平均先物の売り建てを増やしました。そのため、裁定売り残一時2兆円まで拡大しました。

 ところが、2019年10月以降、世界景気回復期待が高まって世界的に株が上昇するとともに日経平均が上昇する中で、踏み上げ【注】が起こりました。日経平均先物を売り建てていた投機筋は、損失拡大を防ぐための、先物買い戻しを迫られました。その結果、裁定売り残が減少しました。

 ここで「踏み上げ」という相場の専門用語を使いましたので、説明をつけます。

【注】踏み上げ
日経平均が下落すると予想して日経平均先物の売り建てを積み上げていた投機筋(主に外国人)が、日経平均がどんどん上昇していく中で、損失拡大を防ぐために日経平均先物の買い戻しを迫られること。

【3】コロナ・ショックで売り残が再び急増、その後踏み上げで減少に向かった2020年

 2020年、コロナ・ショックで日経平均が暴落した2~3月、投機筋は再び日経平均先物売り建てを増やしました。裁定売り残は一時2兆6千億円近くまで増加しました。ところが、その直後から、世界的な金融緩和と景気回復を受けて日経平均は急騰、ここでも先物の踏み上げが起こりました。

【4】裁定買い残の増減にしたがって日経平均が上下した2021年

 裁定売り残は2021年になると低水準となりました。コロナからの世界景気の回復が鮮明となったので、日経平均先物をあえて売り建てしようとする投機筋はほとんどいなくなりました。日経平均は2021年、先物の買い建ての増減にしたがって、上下する動きとなりました。投機筋が先物を買い建てる時に裁定買い残が増加し、日経平均は上昇しています。

 しかし、継続的な上昇は見込めず、投機筋が先物の買い建てを閉じる時に、裁定買い残が減少し、日経平均は下落しています。投機筋が日本株に強気になったり弱気になったりを繰り返していることが分かります。日本株について外国人の投資スタンスが定まらない状況が続きました。