市場はFRBの利上げ減速を意識している

 上述したマクロ指標結果を受け、6日の米国株式は約1カ月ぶりの大幅高となりました。特に雇用統計で賃金上昇率の減速が示されたことで、FRBの政策転換が近付くとの期待が広まり債券市場は堅調。債券金利の低下をカタリストにし、特に大手ハイテク銘柄のウエートが高いナスダック総合指数が年初来騰落率+4.4%と市場平均を上回っています(11日)。

 図表3は、2022年初から2023年1月11日までの株価と金利動向を示したものです。FRBは6月以降に政策金利を4回連続で0.75%引き上げましたが、12月FOMC(米連邦公開市場委員会)では利上げ幅を0.5%に縮小させました。1月31日と2月1日に開催される次回FOMCにて、利上げ幅が一段と縮小される(例:0.25%)のか前回同様0.5%引き上げられるかは見方が分かれています。当面は、目先のインフレ指標やマクロ指標の結果を確認しようとする思惑で市場がぶれる可能性はあります。

 とは言うものの、図表3で示されているとおり、10年債利回りも2年債利回りも政策金利(FF金利の誘導目標上限)を割り込む動きを示しています。先物市場での試算では、2023年前半は利上げ幅が縮小され、政策金利が5%前後でピークを付けるとの見方が意識されています。

 筆者は、2月と3月のFOMCで0.25%ずつ利上げが実施され、政策金利は年央までにターミナルレート(金利の到達点)を迎える可能性が高いと予想しています。本年春から半ばにかけての「利上げ停止」を巡る期待が広まれば、次に市場は秋に見込まれる「利下げ」や「2024年の景気の持ち直し」も視野に入れていくと考えられます。米国株式はインフレ、金融政策、景気の悪化度合い、業績動向を見極めながら、年後半に向けて復調傾向をたどると見込んでいます。

<図表3>新年の米国市場は株高&債券高でスタート

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2022年初~2023年1月11日)

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