12月雇用統計は賃金上昇率の減速を示した

 新年相場の流れを変えたのがマクロ指標とされます。米労働省が6日に発表した昨年12月の雇用統計では非農業部門雇用者数が22万3,000人増加。堅調な雇用情勢を示し、失業率も3.5%に改善(11月の3.6%から低下)しました。一方、市場の注目度が高かった時間当たり平均賃金の上昇率は前年同月比で+4.6%と11月の+4.8%から低下しました(図表2)。

 賃金上昇率が2021年8月以来の低い伸びにとどまったことで、FRB(米連邦準備制度理事会)や一部の市場参加者が憂慮する「賃金インフレ」を巡る不安が後退し、債券市場金利(利回り)は低下しました。金融当局が昨年春から実施してきた金融引き締め策の累積効果を受け、2023年半ばまでに労働市場の勢いが鈍化する可能性も指摘されています。

<図表2>雇用統計は賃金上昇率の減速を示した

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2022年1月~2022年12月)

 また、ISM(米供給管理協会)が6日に発表した昨年12月の非製造業PMI(購買担当者景況指数)は49.6と前月実績(56.5)から大幅に低下。景況感の分岐点とされる「50」を下回り縮小圏に陥りました。米国東部を襲った寒波や大規模な停電の影響を受けた部分もありますが、すでに50を下回っていた製造業PMIとともに、縮小圏での推移が続けば需要見通しの減退観測が強まる可能性があります。なお、市場では「インフレ減速にはサービス業の景況悪化が必要」と認識されていました。サービス部門のインフレ低下期待が金融市場で広まり、債券市場の金利が低下したことで、債券と株式の同時高につながりました。