ホンネとタテマエの間で揺れる欧州主要国

 ウクライナ危機が勃発した背景の一つ、[#2 危機を勃発させた後の絵を描くことができたこと]、の中で述べた「西側の体力低下」が具体的に進行している例を述べます。これは「反西側体制」構築を許す一因です。

「自己矛盾」は、どの時代・どの場面においても良い印象を与えません。「自己矛盾」を抱えている人・団体・モノを見ると、隙(すき)があるように見えるものです。この意味で、今EU(欧州連合、ドイツ、フランス、イタリアなど欧州の主要27カ国)は世界に隙を見せつけてしまっていると言えます。

 以下のグラフのとおり、ウクライナ危機勃発後、EUのロシアからのエネルギー輸入量は急減していません。域外からのエネルギー輸入額の20%強が、まだロシア由来です(2022年8月時点)。

 危機勃発直後から、EUは「脱ロシア(ロシア依存度引き下げ)」を進めるべく、ロシアへの「制裁を強化する」(「買わない西側」を強化する)と同時に、これまでの流れである「脱炭素」をさらに強化する(化石燃料を使わないようにする≒ロシアから同燃料を買わないようにする)ことを標榜してきました。

「脱炭素」を徹底すれば、「脱ロシア」を進められるはずだったのかもしれませんが、実態は全くの道半ばと言わざるを得ません。(ロシアは自分から離れられなくなっているEUを見て、ほくそ笑んでいるかもしれません)

図:EUのエネルギー(石炭、石油、天然ガスなど)輸入額 単位:百万ユーロ

出所:EURO STATのデータをもとに筆者作成

「脱ロシア」を徹底できないのは、EUの体力不足(化石燃料の消費を減らすための体力がないこと)が主因でしょう。「脱ロシア」を標榜して実現できていない「自己矛盾」は、西側(EUの多くは西側に分類される)の体力低下をうかがわせる実例と言えるでしょう。