中国の都市封鎖に伴う景気鈍化に要注意

 前述のように、アップルは中国の景気鈍化とサプライチェーン(供給網)混乱を業績不透明要因として取りあげました。こうした「中国リスク」は、すでに4月の上海総合指数の一段安や人民元相場の軟調に繋がっています。中国では中央集権的な共産党政府のもと、「ゼロコロナ政策」(厳格な防疫政策)をベースとするロックダウン(都市封鎖)を徹底させ、上海市などを中心に経済や社会が大きな影響を受けています。欧米が新型ウイルスとの共生を志向する「ウイズコロナ政策」を採用している一方、中国の封じ込め政策はその対極に見えます。どちらが正しいかは別にせよ、中国政府の厳しいコロナ対策は、消費活動、生産活動、物流活動を鈍化させ、工場の操業停止やサプライチェーンの混乱に伴い輸出が減速しつつあります。

 図表3は、中国国家統計局が4月30日に発表した4月のPMI(購買担当者景況感指数)を示したものです。製造業PMIは3月に続き2カ月連続で景況感の分岐点(50=活動拡大・縮小の節目)を下回る47.4に低下しました。同時に、建設業やサービス業を含む4月の非製造業PMIは41.9と急速に低下し、2020年2月以来の低水準に落ち込みました。

 こうした中国のコロナ対策に伴う景気鈍化が、部材供給や売上高の減少を通じて米国や日本を含む世界の企業景況感やガイダンス(業績見通し)に悪影響を与える可能性があります。ロックダウンが今後も断続的に続くと、中国の第2Q(4-6月期)GDP(国内総生産)の実質成長率がマイナスに転じる可能性も否定できず、内外の景気や企業業績への波及が懸念されます。今後の焦点は、中国政府がこうした経済への打撃を和らげるため、ゼロコロナ政策をどのように微調整していくのか。インフラ投資拡大など財政出動や追加的な金融緩和策でどのように景気を下支えていくのかを市場は注視せざるを得ません。

<図表3>中国の都市封鎖に伴う景気鈍化に要注意

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年4月-2022年4月)

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