インフレ加速が米国の金利高観測を強めている

 世界市場では米国を中心に株価の上値が重い動きが続いています。ウクライナ・ロシア危機の緊迫化と長期化が懸念されている中、米国ではインフレ加速に対応するためFRB(米連邦準備制度理事会)が金融引き締めを強化するとの観測が強まっています。

 図表1は、米国でインフレ指標として注目されているCPI(消費者物価指数)とPPI(生産者物価指数)の前年同月比上昇率を示しています。市場は、CPIやPPIの全体指数に加え、それぞれの「コア指数」(エネルギーと食品を除く物価指数)の上昇率にも注目しています。

 12日に発表された3月のCPIは全体指数の上昇率が+8.5%、コア指数の上昇率は+6.5%でした。ガソリンなど化石燃料価格の上昇と食料品価格の上昇が全体の伸びを加速させました。

 また、13日に発表された3月のPPIでは、全体指数の上昇率が+11.2%、コア指数の上昇率は+9.2%でした。PPIの伸びがCPIの伸びを上回っている状況は、経済の川上部門の物価上昇率が川下部門の物価上昇率を上回っていることを示し、PPIの上昇率がタイムラグを経てCPIの上昇率を加速させやすい可能性を示唆しています。

 一部の供給制約が緩和し、中古車価格や住宅価格の上昇率に減速がみられるものの、タカ派色を濃くしているFRBが5月3~4日に予定されている次回FOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げ幅を0.5%へ拡大させ、QT(量的金融引き締め)の決定と実施に踏み切るとの観測が有力です。長期金利が2.9%を超えて上昇した(20日)ことが米国株式の重しとなっています。

<図表1:米国のインフレ率は上昇傾向を続けている>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成。(2012年1月~2022年3月:月次)