外国人の眼から見た東証再編、3つのポイント

 東証再編について、いろいろな分析や意見が出されています。賛否が別れるのは、適合計画書を出せば、プライム上場基準を満たさなくてもプライム上場が可能としたことです。

 外国人の眼には、それはプライム市場の信頼を損ねるものと映ります。これに対し、日本の投資家の一部からは、適合計画書を出した企業が、適合するように努力することで市場評価を高めていくことが期待されるという声が聞かれます。

 今日は、外国人投資家の眼で見た評価ポイントを3つ紹介します。外国人投資家の眼というのは、なんのしがらみもない、投資家としてもっともドライな眼ということです。私は、25年のファンドマネージャー時代、米国・欧州・中東・中国・韓国の年金基金や国家ファンド担当者と数多くの対話を重ねてきました。その経験を通じて、外国人の日本株を見る眼については深く理解していると自負しています。その外国人は、今回の東証再編について3つの意見を持っていると思います。

【1】プライム上場企業の数が多すぎる

 プライムに選別される企業数はもっと少ない方が良かったと思われます。たとえば500くらいでも良かったと考えられます。言い方を変えれば、プライムの上場基準をもっと厳しくして、プライムに上場できる企業をもっと少なくした方が良かったということです。そうすれば、プライム市場の「海外機関投資家の投資基準を満たす市場」としての信頼性はさらに高まったと考えられます。

【2】適合計画書を出せばプライム上場できるとしたことはプライムの信頼を損ねる

 上記で説明したとおり、欧米では基準を満たさない企業が努力目標を出すことで上場できるというルールは理解されません。近い将来、基準を満たすことが確実な企業ならば理解は得られますが、今回適合計画を出してプライム上場した企業には、長い年月かけても基準を満たすのは困難と考えられる企業があります。にもかかわらず、「いつまでに基準を満たさなければならない」という期限が定められていないことが問題視されます。

【3】入れ替え基準が明示されていないことが不安

 プライムの基準を満たさなくなった企業が、スタンダードまたはグロース市場に移管されるルールが決まっていないことが不安視されます。プライムの基準を満たさないままプライム上場を維持する企業が増えていくと、かつての東証一部同様、海外機関投資家の信頼は低下していくことになります。
 一方、一定の期間を経て、基準を満たさない企業をプライムから外すことをしっかり実施すれば、プライムの信頼性は一気に高まります。投資家の信頼が高まると同時に、プライム上場企業が、プライムを維持するための企業努力もさらに高まると考えられます。
 一定期間を経て上場基準を満たさなくなった企業をどう取り扱うか、東京証券取引所は現時点で明確なルールを示していません。東証再編1年後・2年後に、基準を満たさない企業にどう対処していくかにより、投資家の信頼が急速に高まることも、低下することもあり得ます。今後の市場維持ル―ルの運用がどうなるか、注目されます。

 本日は以上とします。今後、東証再編が、日本企業の投資価値に及ぼすと考えられる影響について、本コラムで継続してレポートします。