3月に注目したい新興株の動き

 新興株の市場は「マザーズ」と「ジャスダック」がありますが、その市場があるのも今月いっぱいまで。4月から「グロース」(マザーズとジャスダック・グロースの銘柄がここに区分されます)となるため、個人投資家にとって馴染み深いマザーズの名を呼べるのも本当にあと少しです(※ちなみに、マザーズ指数は2023年3月末まで存命します)。

 最後の1カ月を前に、価格崩壊を起こしたマザーズ指数。2年前の2月末、新型コロナウイルスが世界の猛威として認知される直前のマザーズ指数はほぼ700ポイントでした。その水準を、2月後半に割り込みました。つまりは、コロナラリー(巣ごもりやDX特需発生を先取るマザーズの大相場)で上がった分が帳消しになったということです。

 2020年3月のコロナショック安値から、同年10月中旬のピークまで実に7カ月程度で爆上げした分を、1年4カ月かけて溶かしました。マザーズ市場特有ですが、個人投資家の信用買いで相場が作られることもあり、レバレッジをかけた形で資金が流入します。上がるスピードは速いのですが、逆流して抜けるときもレバレッジをかけたお金の流出になりますので調整速度も速くなります(デ・レバレッジと呼びます)。

 とはいえ、コロナ禍で大量の会員を獲得するなど成長力を高めた企業も多いなか、株価的にコロナ前にリセットしたというのは腑に落ちない面もありますよね。とくに、今年1~2月の下げは尋常ではなく、業績を超越した下げではないか? と感じる部分があります。業績無視、需給で壊れたのではないのか? この側面は相当大きいといえます。

 いつものマザーズ市場と違う点が確認されました。それが、「指数売買の急増」。マザーズ指数の下落がたびたび報じられることで、逆張りで「マザーズ指数を買ってみたい」という投資家が増えたようです。マザーズ指数を売買するなら、マザーズ指数先物かマザーズ指数連動型ETF(コード番号2516)しか方法がありません。マザーズ先物でいえば、2月の月間出来高は過去最高でした。2月24日の出来高2万7401枚は、コロナラリーの2020年10月23日に記録していた当時の最高1万6,682枚を大きく上回っています。

 マザーズ指数連動型ETF(2516)の出来高最高は、3月1日の868万株でした。これも、2020年12月2日に記録した590万株を大幅超過しています。また、信用買い残を見ると、2月最終週時点で644万株と過去最高に積み上げています。これも、2020年12月の244万株を凌駕(りょうが)する買いポジション。マザーズ指数のリバウンドを信じ、マザーズのラストイヤーに逆張りで買い向かっている投資家の熱量はすごかったと断定できます。

 すごかったことが残高として可視化されていたがゆえに、安値圏で海外ヘッジファンド勢などの(ロスカット狩り目的の)売りで崩されたのが実情ではないでしょうか。今年は1月~2月末までの2カ月(37営業日)のうち、マザーズ指数が「一時3%安」を記録した回数が17回ありました。実に46%(2日に1回ペース)で“指数の急落”が発生していたわけです…これは、間違いなく異常。

 昨年は245営業日のうち23回、発生確率は9%(2週間に1回ペース)です。急落が日常だった、というのも異常ですし、ここまでの経緯にファンダメンタルズに関する要素は一切ないことも分かりますよね。

 需給で壊れた価格は、2月末から3月1日の急激リバウンドで修復が進みました。需給で壊れた価格は、需給で力強く戻せることを意味します。ただ、需給で戻しているだけに、ここでもファンダメンタルズは関係していません。また安値を割ってもおかしくないし、2月24日の安値が底値になってもおかしくない…。こればかりは、最注目の3月FOMC(米連邦公開市場委員会)を控えるなか、米グロース株の動向を(岸田首相ではないですが)「しっかり注視しておきましょう」としか言えません。

 需給で壊れたマザーズの市場としては最後の1カ月。最後の反撃を期待することを前提にすれば、“下げが大きい銘柄を狙う”、これが短期目線では狙いどころになりそう。年初から2月末までの下落率の大きいマザーズ銘柄(時価総額200億円以上)では、マクアケ(4479)、JTOWER(4485)、HENNGE(4475)が年初来で株価は半分以下に落ち込んでいます。単純なリバーサル狙いでいえば、下げの大きい銘柄ほど短期資金は向かうと考えられます。

 あとは、来月から新市場区分がスタートします。ここで上場企業にとって厄介なのが、これまでになかった概念の「上場維持基準」が設置されていること。流通株式比率や流通株式時価総額といった条件がありますが、最下位市場の「グロース市場」でも(1)流通株式比率25%以上、(2)流通株式時価総額5億円以上、の基準があります。

 このうち、(2)の流通株式時価総額は、株価を高めることでクリアできるタイプの基準です。株式分割、株主優待や増配など株式還元といった株価にプラスな刺激策を出す会社は増えることが期待されます。ちなみに、(2)の基準をクリアしていないと見られるマザーズ銘柄は多く存在します。例えば、和心(9271)、BCC(7376)、ピースリー(6696)、GMO TECH(6026)、Waqoo(4937)など。これら銘柄は中期目線で会社側のアクションに期待してみても面白いのではないでしょうか。

 米長期金利の上昇はマザーズ企業に影響するでしょうか? ウクライナ情勢とマザーズは縁遠くないでしょうか? 原油高騰によるコストインフレも無関係ではないでしょうか? 不条理に世界最弱化したマザーズ、有終の美をぜひ見たい! と願っています!頑張れマザーズ!!