2月の新興株<マザーズ、ジャスダック>マーケットまとめ

 前月に「月間▲23.3%」という価格破壊を起こしたマザーズ指数。月が替わった直後、2月1、2日と連続上昇し、「さすがに下げ止まったか?(コツンしたかも?)」という雰囲気をチラつかせます。しかし、それがすぐに否定される(コツンじゃなかった)…この繰り返し。

 底入れ感からリバウンド狙いの逆張り買いが入るものの、あっさり安値を割ると逆張り買い勢のロスカットで需給が悪化する…その繰り返し。マザーズ指数は、2月24日を昨年来安値としましたが、この時点で年初来下落率は34%まで悪化しました。

 2月も米国の利上げ懸念が逆風に。インフレ指標米CPI(消費者物価指数)の予想上振れ、FRB(米連邦準備制度理事会)高官のタカ派発言も相まって、米長期金利は2年半ぶりとなる2%台に乗せました。いったん下げ止まっていた米グロース株が再び売りで反応すると、日本のグロース株も無条件に売られます。また、2月はウクライナ情勢の緊迫化も大きな関心事に。

 地政学リスクの高まりはリスク回避で債券が買われ、長期金利の上昇を抑えます。ただ、リスク回避ですので「株は売り」となり、これも逆風となります。二大リスク双方がグロース株にはネガティブでした。

 また、2月は3カ月に1度の決算発表シーズン。これまでは、決算警戒で事前に売られた場合、決算通過で反転する傾向もありました。実際、先に発表していた東証1部の大型グロース株の決算リアクションが激辛(進捗良好でも通期予想据え置きで急落など)だったこともあり、発表手前の警戒ムードは非常に高かったといえます。

 それだけに、決算発表シーズン通過後、タイミング悪く米金利上昇による米グロース株安に飲まれてリバウンド機会を逃したのは痛かったところです。また、マザーズ銘柄で信用買い残最大の一番人気銘柄FRONTEOの暴落が、センチメント悪化に与えたインパクトも甚大でした。

 二大リスクのひとつ、ウクライナ情勢が最も緊迫化したのが2月24日。この日の東京時間、ロシアがウクライナに侵攻したと伝わった後、マザーズは昨年来安値を付けました。結果的には“そこが底”になり、翌25日に脅威の7%高、月末28日も大幅高…ラスト2日で大きく戻しました(今回こそ本物のコツン?)。

 株式市場の古い格言「銃声が鳴ったら買え」に沿う展開だったわけですが、それでも2月も月間ではマイナスに。マザーズ指数の月間騰落率は▲4.3%で、これで6カ月連続の下落。その他指数は、日経平均株価が▲1.8%、TOPIX(東証株価指数)▲0.5%、日経ジャスダック平均▲1.1%でした。

2月の売買代金ランキング(人気株)

「ここまで下げたらさすがに安い」という値ごろ感から、個人投資家が信用を使って逆張り買いを続けた形跡を残していた2月。ただ、その過程で24日の昨年来安値を付けたことからしても、個人投資家の多くが相当な痛手を負った月になったのは間違いありません。誰が売った? でいえば、東証開示の投資主体別データからは外国人。マザーズ銘柄を大量に持っていたとは考えにくいため、個人のロスカットを誘発する目的で、(証券会社から高いレンディングフィーを払って株券を借り)空売りで下値を崩したのではないかと想像されます。

 そんな不条理な下落、短期前提での逆張りエントリーでも大きな含み損(大きなロスカット)が続き、「もうマザーズ触るの止めよう」という心境に追い込まれた個人投資家も多かったのではないかと感じます。これだけ水準を切り下げながらも、売買は低水準。マザーズ市場の1日当たり売買代金平均は前年12月が1,920億円だったのに対し、今年1月は1,439億円に激減しました。そして2月、決算発表シーズンにもかかわらず同1,399億円と前月比でさらに減りました(=さらに人通りが減った)。

市場 コード 銘柄名 2月終値 時価総額
(億円)
売買代金
25日移動平均値
(億円)
月間
騰落率
東証マザーズ 4385 メルカリ 3,550 5,682 137.5 -16.9%
東証マザーズ 2158 FRONTEO 1,835 721 124.9 -26.4%
東証マザーズ 2438 アスカネット 1,266 221 70.9 58.4%
ジャスダック 6890 フェローテック 2,388 1,066 63.9 -13.9%
東証マザーズ 7370 Enjin 2,845 210 55.6 2.3%
東証マザーズ 4485 JTOWER 4,070 896 48.9 -21.7%
東証マザーズ 4412 サイエンスアーツ 6,040 203 39.0 -10.1%
東証マザーズ 4478 フリー 3,815 2,139 32.9 -14.1%
東証マザーズ 9212 GEI 736 78 32.3 -47.1%
東証マザーズ 7133 ヒュウガプラ 4,190 145 32.0 -24.5%
ジャスダック 2702 マクドナルド 4,940 6,568 31.2 -1.6%
東証マザーズ 7342 ウェルスナビ 1,710 806 29.8 6.1%
東証マザーズ 4477 BASE 416 465 28.9 -8.6%
ジャスダック 1407 ウエストHD 4,280 1,970 26.9 25.1%
ジャスダック 2195 アミタHD 2,495 146 23.1 20.3%
ジャスダック 4582 シンバイオ 797 307 22.8 -20.8%
東証マザーズ 6027 弁護士コム 4,275 952 22.8 -10.4%
東証マザーズ 4194 ビジョナル 8,330 2,989 20.9 0.7%
東証マザーズ 4565 そーせい 1,419 1,157 20.3 -6.5%
ジャスダック 4080 田中化研 1,505 490 19.9 -33.3%

売買代金ランキング(5銘柄)

1 メルカリ(4385・東証マザーズ) 

 月末時点の25日移動平均売買代金は、前月の92.3億円から2月は137.5億円と急増し、売買代金で全体トップに浮上。マザーズ指数のシンボル銘柄だけに、投資家が感じる値ごろ感はマザーズ指数に感じた値ごろ感に近いのではないかと思われます。

 ただ、ファンダメンタルズでの下値メドが無いマザーズ指数と同じく、同社もフリマアプリ国内最大手で競合会社が特になく、ファンダメンタルズでの下値メドがない…値ごろ感の個人の逆張り買いVSヘッジファンドの空売りの構図になり、安値圏で売り方優位の中、後者が勝った1カ月だったように思われます。

 なお、3日に中間期決算を発表、営業損益は17.7億円の赤字(前年同期は13.7億円の黒字)でした。四半期ベースでも7四半期ぶりの営業赤字で、売上の伸びは強いものの、広告宣伝など積極投資が短期業績の見栄えを悪くしました。地合いの悪いなかでは「印象は悪い」と切り捨てられる格好に…。

2 FRONTEO(2158・東証マザーズ)

 決算発表当日14日の終値は2,850円で、この時点の信用買い残は金額ベースで推定112億円とマザーズ全体で最大。これは、「好決算を出して株価が上がってくれ!」と願って決算発表を迎える投資家の数、ポジションとも最大ということを意味します。そして発表された14日の第3四半期決算は、売上高が前年同期比12.7%増の85.2億円、営業利益が同21倍の13.9億円でした。この決算を受け…、多くの投資家の願いも空しく翌15日はストップ安に。

 決算失望の理由は「第3四半期(10-12月期)に限ると、営業利益が前年同期比17%減と減益だったため」とのことですが、地合いの悪さも相まってストップ安になるのは衝撃でしたし、ここからさらに下値を深くえぐったのも衝撃でした。

 これも、信用買い残が極端に多いこと、流動性が高いがゆえにヘッジファンドの空売り対象になったことが真相と思われます。決算翌日15日が17%安、16日15%安、17日20%安…安値はマザーズ指数の安値でもある24日ですが、この日の安値(1,343円)は決算発表前の半値以下。マザーズの信用買い残最大銘柄は、マザーズ銘柄で最大追証発生銘柄に…。

3 アスカネット(2438・東証マザーズ)

 材料株として注目されたタイミングが、マザーズ劣悪地合いに重複。地合いが悪いことが裏目に出る場合もありますが、同社に関してはむしろ追い風になりました。強い株が極端に少なかったため、モメンタム狙いの短期マネーが数銘柄に集中。その中でも特に短期マネーが集まったのが同社でした。

 買い材料になったのが、セブン-イレブン・ジャパンによる1日のリリースでした。セブン-イレブンの店舗で、非接触・空中ディスプレー技術を採用したキャッシュレスセルフレジ「デジPOS」の実証実験を行い、そのディスプレーに同社の「ASKA3Dプレート」が使用されるという内容でした。

 最初は東京都内6店舗からですが、セブン-イレブンといえば全国2.1万店舗を誇る超巨大コンビニチェーン。近未来的な「ASKA3Dプレート」への期待はありましたが、実証実験先としてはこれ以上ないこともあって、期待が期待を呼ぶ展開に。

4 JTOWER(4485・東証マザーズ) 

 予想PER(株価収益率)、予想PSR(株価売上高倍率)など株価指標面で、どれをとっても極めて高いハイパーグロース株の位置付け(類似会社のいないオンリーワン銘柄がゆえ?)。昨年末から1月17日にかけた「11営業日続落」など、年初来のマザーズ株安の象徴的“売り銘柄”といえ、米利上げリスク相場で敬遠されるシンボルストックのようでもありました。

 その同社株価の反転タイミングになるか? と注目されたのが、8日発表の決算でした。ただ、ここで発表したのが通期売上高予想の下方修正。売上高は従来予想比で4億円下振れ、営業利益こそ2.6億円の上振れに修正されましたが開発費用の後ズレという後ろ向きな理由でした。

 この発表後はいったんアク抜け感を出しましたが、結局はマザーズ指数が安値を付けた24日まで下値掘り下げ。24日に付けた安値は3,540円と、およそ3カ月前に付けた上場来高値1万3,210円の“7割引”水準に…。

5 アミタHD(2195・ジャスダック) 

 株式分割を手掛かりに、昨年12月に人気化した仕手系材料株。注目度が増した状態で、決算発表の2月を迎えました。発表予定日は14日でしたが、その1週間前である7日に今2021年12月期業績を大幅上方修正。2013年12月期以来の復配も発表する強材料を出しましたが、高かったのは発表翌日の午前中だけで…。

 ファンダメンタルズで売買していない仕手系材料株を触る投資家にとっては、業績ニュースは重要とも言えないのかもしれません。株価にネガティブとなったのは、東証が発表した9日から開始の増担保規制。新興株市場の地合い悪化によるセンチメントの影響も響き、25日の増担保規制解除に向け軟調な展開が続きました。

2月の株価値上がり率ランキング

 決算発表シーズンということもあって、好決算銘柄の大幅上昇が散見されました。とはいえ、グロース株にとっては最悪級の地合いにあって、知名度の高い銘柄は激辛判定(進捗良好でも通期予想据え置きで急落など)ばかり。知名度が低く、流動性も低い(=決算発表に対する期待値が低い)銘柄に限って言えば、好決算をサプライズと見なして反応したというのが現実です。

 値上がり率ランキングに入った銘柄に好決算銘柄が多かったとはいえ、上位20位のうち時価総額100億円未満の小型銘柄が14銘柄。決算発表に対するハードルが低かったがゆえのサプライズであって、人気銘柄は総じて「なんでこの決算でこんなに売られるの?」な反応ばかりでした。

市場 コード 銘柄名 月間
騰落率
2月終値 前月末
終値価格
時価総額
(億円)
東証マザーズ 4592 サンバイオ 72.0% 1,863 1,083 965
ジャスダック 4932 アルマード 70.7% 804 471 84
ジャスダック 3094 スーパーV 69.1% 1,055 624 67
ジャスダック 3841 ジーダット 58.5% 2,089 1,318 41
東証マザーズ 2438 アスカネット 58.4% 1,266 799 221
ジャスダック 7045 ツクイスタッフ 57.2% 1,701 1,082 27
ジャスダック 8746 第一商品 56.9% 171 109 39
ジャスダック 4293 セプテーニHD 53.2% 639 417 1,349
東証マザーズ 4014 カラダノート 51.0% 1,105 732 70
ジャスダック 2776 新都HD 47.4% 84 57 22
東証マザーズ 4598 DELTA-P 46.1% 1,739 1,190 94
東証マザーズ 3989 シェアリングT 44.7% 123 85 27
東証マザーズ 4493 サイバセキュリ 44.1% 1,733 1,203 162
東証マザーズ 2586 フルッタフルッタ 41.9% 122 86 31
東証マザーズ 4056 ニューラル 41.2% 1,370 970 196
東証マザーズ 7372 デコルテHD 38.5% 1,068 771 61
東証マザーズ 4442 バルテス 38.4% 1,453 1,050 104
ジャスダック 2406 アルテHD 38.0% 683 495 70
ジャスダック 4171 グローバルI 36.4% 1,754 1,286 52
ジャスダック 3358 ワイエスフード 35.2% 238 176 14

値上がり率ランキング(5銘柄)

1 サンバイオ(4592・東証マザーズ)

 マザーズが安値を切り下げるなか、グロース株ど真ん中のバイオベンチャーが新興全体の値上がり率トップになったのは興味深い現象といえそうです。地合いに目をつぶってでも“買うべき強材料”と、市場が判断したと捉えるべきなのでしょうか。

 同社は10日、「SB623」の慢性期外傷性脳損傷プログラム「先駆け総合評価相談」が終了したため、承認申請の準備を開始したと発表しました。先駆け審査指定制度というのは、承認申請から承認までの審査が短縮されるという特例制度です。リリースによれば1カ月程度で承認申請を行うということで、3月前半辺りに続報リリースが出そう。重要なのは、その先の「結果」ですが…。

2 アルマード(4932・ジャスダック)

 昨年6月上場の直近IPO(新規公開株)ですが、1月に付けた安値は初値の半値。人気薄の状態で発表した上方修正が、想像を超える株価インパクトにつながる格好に。同社は14日、今期の売上高予想を従来予想の48.8億円から53億円へ1割増額。卵殻膜商品の広告運用強化が奏功し、直販の新規獲得や外販が好調だったようです。

 業績修正以上にサプライズ感につながったのは、無配予定だった期末配当を40円としたこと。さらには、発行済み株数の5.9%相当(金額上限は3億円)の自社株買い枠まで設定。時価総額が小さく、流動性が落ちていたこともあり、発表翌日から2日連続ストップ高買い気配に…。17日は上限値幅の4倍拡大措置がとられ、発表前545円だった株価は880円で全株一致しました。

3 ジーダット(3841・ジャスダック)

 1月28日に上方修正付きの好決算を発表するも、特段の買い材料にならず…。そんな低流動性、不人気銘柄が急騰するきっかけになったのが、決算発表から2週間強のタイムラグを置いて発表した増配と株式分割でした。

 17日、業績好調に加え、3月14日で上場15周年を迎えることを理由に期末配当を40円(従来計画は20円)に増配すると発表。さらに、流動性向上を目的として、3月末株主を対象とする株式2分割も発表しました。発表前株価1,303円に対し、2月22日に付けた高値は2,503円とほぼ倍増。

 おそらく、4月から始まる新市場(同社はスタンダード市場)の上場維持基準を見据えた対策と見られますが、20円増配と株式2分割で株価はここまで押し上げられるというモデルケースになったのではないでしょうか。

4 ツクイスタッフ(7045・ジャスダック)

 親子上場銘柄のTOB案件。ツクイホールディングス子会社の同社は4日、親会社ツクイホールディングスによるTOBで完全子会社化すると発表されました。4日終値1,122円に対して、TOB価格1株1,705円はプレミアム52%! 買付期間は2月7日~3月23日で、TOB価格にサヤ寄せする展開となりました。

 この手の事例は増加傾向にあります。ツクイスタッフはジャスダックスタンダード上場銘柄のため、新市場ではスタンダード市場に区分されます。それ自体はスライド的に果たされるわけですが、新市場ならではの上場維持基準が設けられています(スタンダード市場でいえば、流通株式時価総額10億円以上/流通株式比率25%以上など)。同社については、上場維持基準に満たしていないことが親会社によるTOBの理由のようです。

5 カラダノート(4014・東証マザーズ)

 上場来安値圏、かつ流動性が低下した状態での株価材料に強い反応を示しました。同社は4日、中部電力と資本業務提携すると発表。両社のアプリ顧客向けにライフイベントに応じた共同キャンペーンを行ったり、ライフイベントマーケティング事業の共同開発などを行うようです。また、将来的には子育ての視点から、少子高齢化社会における地域の社会課題の解決を実現する「新しいコミュニティの形」の提供を目指すそうです。

 漠然とした記述で、中部電力との提携後のイメージはあまり湧きませんが、株価が上場来安値圏かつ人気薄だったこともあって好反応に。とくに、中部電力が資本面では発行済み株数の4.76%相当(30万株)を上限に市場で買う予定とも記載されていたことが大きかったのかもしれません。

3月に注目したい新興株の動き

 新興株の市場は「マザーズ」と「ジャスダック」がありますが、その市場があるのも今月いっぱいまで。4月から「グロース」(マザーズとジャスダック・グロースの銘柄がここに区分されます)となるため、個人投資家にとって馴染み深いマザーズの名を呼べるのも本当にあと少しです(※ちなみに、マザーズ指数は2023年3月末まで存命します)。

 最後の1カ月を前に、価格崩壊を起こしたマザーズ指数。2年前の2月末、新型コロナウイルスが世界の猛威として認知される直前のマザーズ指数はほぼ700ポイントでした。その水準を、2月後半に割り込みました。つまりは、コロナラリー(巣ごもりやDX特需発生を先取るマザーズの大相場)で上がった分が帳消しになったということです。

 2020年3月のコロナショック安値から、同年10月中旬のピークまで実に7カ月程度で爆上げした分を、1年4カ月かけて溶かしました。マザーズ市場特有ですが、個人投資家の信用買いで相場が作られることもあり、レバレッジをかけた形で資金が流入します。上がるスピードは速いのですが、逆流して抜けるときもレバレッジをかけたお金の流出になりますので調整速度も速くなります(デ・レバレッジと呼びます)。

 とはいえ、コロナ禍で大量の会員を獲得するなど成長力を高めた企業も多いなか、株価的にコロナ前にリセットしたというのは腑に落ちない面もありますよね。とくに、今年1~2月の下げは尋常ではなく、業績を超越した下げではないか? と感じる部分があります。業績無視、需給で壊れたのではないのか? この側面は相当大きいといえます。

 いつものマザーズ市場と違う点が確認されました。それが、「指数売買の急増」。マザーズ指数の下落がたびたび報じられることで、逆張りで「マザーズ指数を買ってみたい」という投資家が増えたようです。マザーズ指数を売買するなら、マザーズ指数先物かマザーズ指数連動型ETF(コード番号2516)しか方法がありません。マザーズ先物でいえば、2月の月間出来高は過去最高でした。2月24日の出来高2万7401枚は、コロナラリーの2020年10月23日に記録していた当時の最高1万6,682枚を大きく上回っています。

 マザーズ指数連動型ETF(2516)の出来高最高は、3月1日の868万株でした。これも、2020年12月2日に記録した590万株を大幅超過しています。また、信用買い残を見ると、2月最終週時点で644万株と過去最高に積み上げています。これも、2020年12月の244万株を凌駕(りょうが)する買いポジション。マザーズ指数のリバウンドを信じ、マザーズのラストイヤーに逆張りで買い向かっている投資家の熱量はすごかったと断定できます。

 すごかったことが残高として可視化されていたがゆえに、安値圏で海外ヘッジファンド勢などの(ロスカット狩り目的の)売りで崩されたのが実情ではないでしょうか。今年は1月~2月末までの2カ月(37営業日)のうち、マザーズ指数が「一時3%安」を記録した回数が17回ありました。実に46%(2日に1回ペース)で“指数の急落”が発生していたわけです…これは、間違いなく異常。

 昨年は245営業日のうち23回、発生確率は9%(2週間に1回ペース)です。急落が日常だった、というのも異常ですし、ここまでの経緯にファンダメンタルズに関する要素は一切ないことも分かりますよね。

 需給で壊れた価格は、2月末から3月1日の急激リバウンドで修復が進みました。需給で壊れた価格は、需給で力強く戻せることを意味します。ただ、需給で戻しているだけに、ここでもファンダメンタルズは関係していません。また安値を割ってもおかしくないし、2月24日の安値が底値になってもおかしくない…。こればかりは、最注目の3月FOMC(米連邦公開市場委員会)を控えるなか、米グロース株の動向を(岸田首相ではないですが)「しっかり注視しておきましょう」としか言えません。

 需給で壊れたマザーズの市場としては最後の1カ月。最後の反撃を期待することを前提にすれば、“下げが大きい銘柄を狙う”、これが短期目線では狙いどころになりそう。年初から2月末までの下落率の大きいマザーズ銘柄(時価総額200億円以上)では、マクアケ(4479)、JTOWER(4485)、HENNGE(4475)が年初来で株価は半分以下に落ち込んでいます。単純なリバーサル狙いでいえば、下げの大きい銘柄ほど短期資金は向かうと考えられます。

 あとは、来月から新市場区分がスタートします。ここで上場企業にとって厄介なのが、これまでになかった概念の「上場維持基準」が設置されていること。流通株式比率や流通株式時価総額といった条件がありますが、最下位市場の「グロース市場」でも(1)流通株式比率25%以上、(2)流通株式時価総額5億円以上、の基準があります。

 このうち、(2)の流通株式時価総額は、株価を高めることでクリアできるタイプの基準です。株式分割、株主優待や増配など株式還元といった株価にプラスな刺激策を出す会社は増えることが期待されます。ちなみに、(2)の基準をクリアしていないと見られるマザーズ銘柄は多く存在します。例えば、和心(9271)、BCC(7376)、ピースリー(6696)、GMO TECH(6026)、Waqoo(4937)など。これら銘柄は中期目線で会社側のアクションに期待してみても面白いのではないでしょうか。

 米長期金利の上昇はマザーズ企業に影響するでしょうか? ウクライナ情勢とマザーズは縁遠くないでしょうか? 原油高騰によるコストインフレも無関係ではないでしょうか? 不条理に世界最弱化したマザーズ、有終の美をぜひ見たい! と願っています!頑張れマザーズ!!