<指数パフォーマンス比較~バリュー株orグロース株どっち優勢?~>
5月の中小型株ハイライトは「グロース株底割れ」
5月の株式市場は、日経平均株価でいえば「いろいろあったけど、現状維持でした」な展開でした。4月末終値3万8,405円に対し、5月末終値は3万8,487円、ほぼ変わらず(月間騰落率は+0.2%)。
とはいえ、物色の中身はかなり変化しました。電力株が大盛り上がりになったり、銀行や保険、証券など金融株も強い業種。一方でダメダメだったのがグロース株。ただしグロースでも半導体株は強かったので、半導体除くグロース株がボロボロ、そんな5月相場でした。
3月決算企業の本決算シーズンということもあり、ガイダンス(期初計画)に注目が集まります。結果は、(毎度のことですが)期初は保守的な見通しが多く、海外投資家の利食い売り材料にされたという評でした。
ただ、自社株買いを発表する企業が続出。これは今の日本株のカタリストでもありますので、株主還元強化サプライズを買い材料にする事例も相次ぎました。これがバリュー株優位の背景に。
半導体株が再びラリーの様相になったのは、中核である米エヌビディアの四半期決算があったため。手前で期待感を広げる雰囲気を強め、実際の決算でも超絶好決算&株式分割付きの満点回答。市場の期待を満たし、エヌビディア株は爆上げ!となりました。
これが半導体株全体を持ち上げるはず!なる確信が市場にはありましたが…まさかの「エヌビディアだけ上がる」に。このパターンは選択肢に入れてなかったという市場参加者が多かったようです。エヌビディア決算後は、「エヌビディア以外の半導体株」は軟調化しました。
そんな「いろいろあったけど」な5月相場において、株主還元強化の話題も無く、半導体株ラリーと無縁な東証グロース市場は年初来安値を切り下げる展開となりました(ここだけセルインメイ状態)。5月は日本の10年債利回りが12年ぶりに1%を超え、「金利のある世界」が復活。これもグロース株の敬遠要因に。
東証グロース250指数(旧マザーズ指数)でいえば、節目の600ポイントも一時割り込む始末。これは2020年4月3日以来ですので、歴史的なグロース株の上昇劇「コロナラリー」で爆上げした分を、ほぼ全部ぶっ飛ばす格好に。
決算発表でも、中小型グロース株は今はやりの株主還元強化の話題もほぼ皆無。数値のサプライズで直後こそ上がっても、買いが続くことは無く、気付けば地合いに飲まれて好決算分を消すような銘柄が続出。
決算をまたいでもダメ、決算またがず結果を見てから入ってもダメ…。下で買えたと思ってもまだ下がるからダメ…。その全てが戻り売り圧力として滞留するという、需給悪化のスパイラルはもはや泥沼に。
値動きの悪化、材料不足、金利上昇への警戒感から、中小型グロース株を敬遠するムードは日に日に濃くなりました。結果、さらに人通りは減り、東証グロース市場の売買代金は大幅に低下。
昨年の東証グロース市場の売買代金1日平均は1,529億円ですが、5月は今年最低の1,098億円。地合いの悪かった昨年の売買水準と比べても、さらに30%程度も目減りした市場のフロー。プライム市場とのギャップは、かつてないほど大きくなっている印象で、上で買った投資家の含み損のポジション(塩漬け株)は持ち越す格好ともなっています。
新NISAで中小型株!今月の銘柄アイデアは…「配当に始まり配当に終わる」
株主還元強化を今後見込めるバリュー株、すでに株主還元策で自社株買い期間中のバリュー株…銀行株や保険株、印刷会社株などから年初来高値を切り上げる銘柄が続出しています。一方で、年初来安値圏で苦しむのが中小型グロース株。
今月は6月11~12日のFOMC(米連邦公開市場委員会)、そして13~14日の日本銀行金融政策決定会合が注目イベントです。日米金利が共鳴するように、5月は金利上昇がグロース株の敬遠理由になりました。
FOMCについては、あまり織り込まれていない7月利下げの確率変化に注目。日本は利上げや国債買い入れ減額の思惑が浮上していますので、結果次第で順方向に動きそう。いずれにしても金利イベントの結果次第、日米金利の水準次第といえそうです。
また、(5月末でいったん下げ止まったとはいえ)中小型グロース株は売買が低調で、需給が悪いという苦境から脱したわけでもありません。グロース株のリバウンドを狙うには根拠が乏しいところ。
一方、金利上昇メリット業種とはいわれますが、もはや金利抜きで強いモメンタムを手に入れているように見える銀行株。伝統的に銀行株のウエートを落としてきたアクティブ勢が、銀行株を持っていないとパフォーマンスで劣ることを恐れた「持たざるリスク」に発展しているようにも映ります。
銀行株も代表的な高配当セクターですが、この6月は高配当株に注目する根拠が存在しますので紹介しておきます。これは毎年のことですが、6月末にかけて配当金が投資家に続々と振り込まれます。3月決算企業の株主総会シーズンで、総会終了後(ほとんどが翌日)に期末配当金を企業側は支払うためです。
どのくらいの配当金が投資家の手元に届くのか? これを、営業日別でまとめてみました。プライム上場の3月決算企業を対象に、浮動株ベースの配当振込額を集計しました。配当金の振込ラッシュは、6月最終週(24~28日)です。
6月に振り込まれる浮動株ベースの配当総額で約4.8兆円もあります。そのうちの10%程度でも再投資に回れば、5,000億円級の買い越し要因になるという算段。ただ、配当株から手に入れた配当を、どこに再投資するか?と考えると…配当株で得た配当金でグロース株に再投資するケースはまれでしょうから、配当株で得たお金は配当株に返ると考えるのが自然でしょう。
今回は、配当マネーの還流に焦点を当て、中小型の高配当株をピックアップしてみましょう。最も多いのは、Aという株でもらった配当の再投資は、Aという株を買い増しするパターンとみられます。6月に配当支払い日が来るスタンダード、グロースに上場する3月決算銘柄のうち、配当利回りの高い株を残しました。
唯我独尊!株価頑強な中小型高配当株
【条件】
(1)スタンダード、グロース上場で時価総額200億円以上
(2)年初来騰落率、4月騰落率、5月騰落率いずれもプラス
(3)配当利回り2%以上、(4)配当支払日が24年6月
※配当利回り高い順
コード | 銘柄名 | 配当 利回り |
PBR (倍) |
配当 支払日 |
---|---|---|---|---|
7305 | 新家工業 | 5.7% | 0.81 | 6月28日 |
6144 | 西部電機 | 4.3% | 0.97 | 6月28日 |
3951 | 朝日印刷 | 4.0% | 0.61 | 6月28日 |
9906 | 藤井産業 | 3.6% | 0.68 | 6月28日 |
6485 | 前澤給装工業 | 3.1% | 0.73 | 6月27日 |
6482 | ユーシン精機 | 2.8% | 0.72 | 6月11日 |
6834 | 精工技研 | 2.5% | 0.81 | 6月24日 |
3891 | ニッポン高度紙工業 | 2.4% | 0.97 | 6月21日 |
2790 | ナフコ | 2.0% | 0.48 | 6月28日 |
その中でも、中小型株にとって辛い地合いが続く中、地合いに逆らい4月と5月に連続で月間プラスだった株価頑強な銘柄に注目。TOPIX(東証株価指数)など指数に勝てない昨今の中小型ファンドにおいても、「この株を持っていたからパフォーマンスで助けられた」なトラックレコードを残した銘柄群といえます。
今後の株主還元増強にも期待、という意味でPBR(株価純資産倍率)1倍未満の株に絞ると、上述の9銘柄だけ(しかも全てスタンダード銘柄)でした。
1年前の6月、伝説の配当株相場が日本株市場で起きました。あれから1年。配当株に始まり、配当株に終わる…これいつまで続くのでしょうか?