(1)9月の中小型株ハイライトは「最後にまさかの高市ロス売り」
大型イベントの多かった9月ですが、終わってみると前月比では大した変化の無い1カ月に。9月の月間騰落率は日経平均株価がマイナス1.9%、TOPIX(東証株価指数)マイナス2.5%に対し、プライムの小型グロース株や東証スタンダードはアウトパフォームしました。東証グロース指数はマイナス2.6%とややアンダーパフォーム。
日経平均やTOPIXは9月の配当落ち分(日経平均で約0.7%、TOPIXは約0.9%)も含みますので、配当落ち影響の小さい東証グロース指数は軟調だったという総括が妥当かもしれません。
9月も引き続き「円高」に苦しめられた日本株(ドル/円の月間安値は16日の139.57円)。輸出関連株、とくに半導体株は空売りにさらされ下値を掘り下げる展開に。
中小型株は内需株が多く、本来は円高がポジティブになるともいえますが、信用残の多い半導体株の下げは個人投資家のセンチメント悪化を通じ新興株に波及します。結果、月前半は材料のあった低位株や小型株が消去法的に、かつヤケクソ的ににぎわう程度でした。
FOMC(米連邦公開市場委員会)直前でドル/円は140円を一時割り込む事態となりましたが、17日、18日開催のFOMCが円高一服のきっかけに。4年半ぶりの利下げは0.5%幅で決まり、通過後に米国株が再浮上。米主要指数の史上最高値更新(日本とエライ違い)が追い風になってくれました。また、月後半は、27日に控える自民党総裁選を最注目イベントとしてロックオン!
総裁選の接近につれ、高市早苗氏勝利の観測が強まる中、市場はアベノミクス踏襲を掲げる高市氏勝利を期待する「高市トレード」の様相に。「円売り/株買い」が総裁選当日に向けても加速。初回投票で高市氏がトップ通過し、決選投票に残ったことで日経平均は4万円台目前まで持ち上がりました。ですが…決選投票で勝利したのは、株式市場的に最もネガティブとされた石破茂氏に。
これを受け、手前で前のめり過ぎた(=「高市トレード」)反動から、「円売り/株買い」の逆回転が月末30日にさく裂。この日の日経平均株価はマイナス1,910円(マイナス4.8%)、東証グロース250指数もマイナス3.4%となり、この日の下げで月間マイナスへ「ちゃぶ台返し」での着地となりました。
「高市トレード」として、東証グロース市場に上場するサイバーセキュリティー関連株や宇宙関連株が直前に爆上げ。これらの銘柄が急落したのに対し、石破氏の関連銘柄(地方創生など)は時価総額が極めて小さい小粒株だらけだったこともあり、トータルでは市場にマイナスでした。
なお、底堅さも示し始めた中小型株市場ですが、引き続き売買のボリューム面での盛り上がりには欠けていました。9月は(3月決算企業の)中間配当シーズンということもあり、配当取りの意識が強まる時期。高配当株がほぼ皆無の市場だけに、9月下旬の配当狙いの動きの圏外に置かれます。
また、株主優待を取るためのクロス取引に資金も拘束され、個人のデイトレ資金も平常時より少なくなる時期という影響も受けたと考えられます。
新NISAで中小型株!今月の銘柄アイデアは…石破相場に強い株
2024年も残すところ3カ月。新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)元年、日経平均も史上最高値を更新…と、投資環境は良さそうに見えますが、中小型株の売買だけはさっぱり盛り上がりません。また、底入れ感はあるものの、グロース250指数はいまだ年初来マイナス(10月2日時点でマイナス8.8%)です。ここから中小型株は巻き返せるのか!?
と行きたいところですが…「石破新政権」と投資家がどう向き合うか?なる日本株の大きな課題が突き付けられましたね。石破氏の大逆転劇により、手前でつくられた高市トレードのアンワインド(巻き戻し)がさく裂。
中小型株でも高市トレードとして、例えば宇宙関連株として時価総額約1,200億円のアストロスケールホールディングス(186A)、同約600億円のQPS研究所(5595)が大きく上昇していました。
アンワインドですので、そうした銘柄は売られる一方、石破トレードとして石破新総裁の関連銘柄は買われます。それで帳尻合わせ…とはならないのが、石破トレードの厄介なところ。
「地方創生」や「防災」がテーマとなりますが、直後に大にぎわいになっている関連銘柄は時価総額約30億円のイシン(143A)、同40億円の雨風太陽(5616)、同約13億円の地域新聞社(2164)など小粒株ばかり。
大きい株が売られ、超が付くほど小さい株だけが買われ、トータルで市場全体にマイナス…そうした理由でも、新政権は中小型株市場にネガティブとなっています。
10月の日本株は、季節性としてどうなのか? 日経平均株価とグロース250指数(旧マザーズ指数)の過去10年の(10月)月間騰落率を見てみましょう。
過去10年でいえば、10月の日経平均は6勝4敗と勝ち越しですが、グロース250指数は3勝7敗と大きく負け越し。「5月に売って9月に買え」という有名な相場の格言がありますが、言われた通り9月に東証グロースの株を買うと負け越しになってきたようです。
また、2021年と2022年はわずかにグロース250指数が日経平均をアウトパフォームしていますが、それ以外はアンダーパフォーム。過去10年でいえば、「9月に買うなら主力大型株」というトラックレコードを残しています。
今年の10月は?というと、やはり「石破新政権」が日本株固有、かつ避けられない課題。10月27日の解散総選挙まで「経済優先」風に豹変(ひょうへん)した石破総理が維持されても、その後に金融所得課税強化や法人税減税の検討などにまた豹変し、株式市場にネガティブサプライズとなるかもしれません(今のところ石破総理の発言には一貫性が無いこともあり…)。
また、今年10月は注目の大型IPO(株式の新規公開)も決定しています。23日に東京地下鉄(以下、東京メトロ)が東証プライム市場に上場予定で、その公開規模は約3,200億円と今年最大です。個人投資家の資金が東京メトロIPOに向かうことで、中小型株の薄商いに拍車をかける可能性もあります。
石破新政権に代わったばかりで、投資家も手探り状態…。新政権後は大幅安と大幅高で往ったり来たりですが、頑強な上昇トレンドの形成なんてシナリオは描きにくいところ。
サプライズとなった自民党総裁選の結果が出る直前、9月27日終値に対し、3営業日が経過した10月2日時点で好パフォーマンスの銘柄を「石破相場に強い株」と認定。石破新政権に対するストレスが低い銘柄をピックアップしてみました。
石破新政権にも強い好需給キープの中小型株
【条件】
(1)スタンダード、グロース上場で時価総額200億円以上
(2)9月30日~10月2日の期間騰落率がプラス
(3)年初来高値に対するマイナス乖離が10%未満
(4)25日移動平均売買代金が1億円以上
※時価総額大きい順
コード | 銘柄名 | 9/30~10/2 期間騰落率 |
年初来高値 乖離率 |
---|---|---|---|
2702 | 日本マクドナルドHD | 0.7% | ▲5.0% |
9166 | GENDA | 13.2% | ▲7.3% |
9436 | 沖縄セルラー電話 | 3.3% | ▲5.9% |
6736 | サン電子 | 4.5% | ▲3.3% |
5449 | 大阪製鉄 | 1.0% | ▲2.9% |
3254 | プレサンスコーポレーション | 1.0% | ▲2.4% |
8871 | ゴールドクレスト | 0.6% | ▲3.6% |
6877 | OBARA GROUP | 2.7% | ▲4.2% |
6946 | 日本アビオニクス | 9.5% | ▲6.3% |
3299 | ムゲンエステート | 0.7% | ▲1.4% |
6676 | メルコHD | 2.2% | ▲4.4% |
212A | フィットイージー | 3.4% | ▲3.8% |
8704 | トレイダーズHD | 1.6% | ▲8.8% |
9556 | INTLOOP | 1.4% | ▲7.0% |
3452 | ビーロット | 6.5% | ▲5.8% |
9月30日~10月2日の期間騰落率は、日経平均がマイナス5.0%、TOPIXはマイナス3.2%、グロース250指数はマイナス4.6%と全体地合いはマイナスの中、この期間をプラスリターンで乗り切った銘柄こそ「石破相場に強い株」。
スタンダードとグロース市場の中で、サイズ(時価総額200億円以上)、流動性(25日移動平均売買代金1億円以上)の両面での条件を満たし、さらには年初来高値からのマイナス乖離(かいり)が10%未満(=高値圏で需給環境が悪くない)の銘柄だけを残しました。
この条件で絞ると、残るのはわずか15銘柄。スタンダード銘柄が13で、グロース銘柄は黄色の網掛けをしたGENDA(9166)、INTLOOP(9556)の2銘柄だけでした。石破総理の発言で大幅安したり、大幅高したりとハイボラ化が加速しています。
こうなると、石破相場で下げやすい傾向を持つ銘柄の場合、「ポジションを大きめには翌日まで持ち越せない」という心理が広がります。新NISAの残り枠で買う中小型を選ぶ際にも、「石破相場下で長く持てる株かどうか?」に意識を向けた「石破相場に強い株」が求められそうです。