1月に注目したい新興株の動き

 新しい年になりました。「今年は稼ぐぞ!」という前向きな気持ちで臨んだ個人投資家の心を、ここまであっさりへし折るとは…。多くの投資家がイメージしていた1月相場と180度違うスタートになりました。

 年初の新興株の当初イメージでいえば、12月で節税目的の損出し売りは終了、怒涛(どとう)のIPOラッシュも無事通過、これで売りが減るなかで新規マネー流入による新興株のプチラリー。だったはずが…、4日の大発会はいきなり寄り天でマイナス(日経平均が510円高したのに)、そして5日にマザーズ指数5%安の急落が起きました。

 マザーズが大きく下げた前年(2021年)でも、1日の最大下落率は2月24日の4.3%安です。その下落率を、開始2日目にして超えたわけです。何かがおかしい…。

 このタイミングで何が起きたかを整理しておきます。年が替わった直後から露骨に起きたことは、「大規模なポートフォリオ見直し」のような動きでした。ポートフォリオ見直しですから、個人投資家ではなく、機関投資家(巨大ファンド)の話。目を引いたのが、バリュー株(低PBR銘柄)でも大型の銘柄に限って急激な値上がりを見せたこと。

 代表的なのは時価総額トップのトヨタ自動車株ですが、ソニーや日立、業種では銀行、保険、海運、総合商社など。いずれもバリュー株です。そして、グロース株(高PBR:株価純資産倍率銘柄)の大型の銘柄では、同時多発的に急落が起きました。

 バリュー株が買われ、性格が異なるグロース株が売られる(その逆も然り)現象は昨年も頻発しました。これは、ロングショート戦略をとる投資家のアンワインド(もしくは新規ポジションの構築)が主因と見られます。

 では、なぜそうした行動に出たのか? でいえば、「長期金利の上昇」しか見当たりません。米長期金利は1カ月ぶりに1.6%台となり、マイナス金利の独長期金利も2カ月ぶりに▲0.12%の水準に上がってきました。まだ水準自体は低いのですが、利上げ開始を前に「今年は金利がもっと上がる」という見立てがコンセンサス化しているのでしょう。

 機関投資家のアンワインドですので、舞台は大型株。マザーズは関係ないのですが、大型グロース株の急落に恐怖感が広がり、大型バリュー株の上昇で潮目変化への不安が広がり、「バリュエーションの高いマザーズ株は処分しておこう」「リバウンド狙いの買いはまだ控えておこう」という心理が広がります。

 そもそも昨年来の安値圏だった銘柄が多いだけに、ロスカットの重みに耐えきれず下値を崩していく…機関投資家とは関係ないマザーズ銘柄にも、個人投資家の行動変化を通じて伝染していったように見えます。年初からセンチメントが最悪に傾き、「トヨタやソニーを売買しておいたほうが安全」とか、「日本株より米国株のほうがやはり安全」といった認識も急速に広まった印象です。

 昨年も強烈な「バリュー株買い/グロース株売り」は何度か発生しましたが、いずれもトリガーは米長期金利の上昇でした。昨年までは、先高観が広がった米長期金利の上昇にブレーキがかかり、グロース株売りも早期収束を繰り返しました。今年はどうなのか? 現時点では、米長期金利の推移と、それに米グロース株がどういう反応をするか…これを見ながら、その都度判断(この場合、短期スタンスでしか参加できませんが)するしかなさそうです。

 金利以外にも、マザーズ敬遠ムードを決定付けた要素は挙げられます。昨年12月のFRONTEOショックは鮮烈でしたが、増担保規制ひとつで株価が異常に値下がりする先例が多く、人気銘柄の上値を追うリスクが周知されたこと。また、株価の上昇モメンタムが強い銘柄であっても、エネチェンジや霞ヶ関キャピタルのように高値圏での公募増資でモメンタムが破壊されるリスクが高いこと。

 いずれも上値を追う投資家を減らす要素ですので、しばらく、大きく値下がりした場面での短期リバウンド狙いばかりになりそう。

 米長期金利の動向と米グロース株の動向を見ながら“ヒット&アウェー”、こうした投資家しか居ないなかでは、1月の新興株にラリー発生を期待するのは無理がありそうです。