12月の新興株<マザーズ、ジャスダック>マーケットまとめ

 誰もが身構えていた12月の新興株に対するリスクシナリオは「毎年恒例の損出し売り」と「IPO(新規公開株)ラッシュによる需給悪化」でした。とはいえ、全員が身構えていた悪い予感が、ここまで地合い悪化の形で的中するとは…想像していたけど、ここまで悪いとは思わなかった、そんな12月の新興株市場でした。

 11月末に向けて、すでに地合いの逆流は起きていました。「上がる株が正義」でバブルちっくな雰囲気を作ってきたグローバルウェイ、FRONTEOが11月下旬から急落。この時点で個人の信用評価損益率が年初来最悪レベルに悪化していました。

 人気銘柄でいえば、12月は大規模な増資をきっかけにエネチェンジや霞ヶ関キャピタルなどモメンタム銘柄も暴落。地雷だらけのムードは広がり、これはオミクロン型の感染拡大とか、FOMC(米連邦公開市場委員会)前のグロース株売りとか、外部環境とは関係なく起きた新興株安だったように見えます。

 14日に指数は節目の1,000ポイント割れ、こうしたタイミングで値ごろ感から何となくリバウンド買いが入る…こうした短期の買いも需給悪化要因となり、売りが売りを呼び、そこに被さってきたのが冒頭の12月特有リスクシナリオでした。

 安値銘柄が続出するなかでの12月。例年以上に「損出し売り」対象銘柄は多く、年内の損失確定を目的としたロスカットが方々で行われていたのでしょう。「損出し売りが一巡するまで待とう」という意識が働くことで、「下値は買うけど上値は買わない」で意思統一がなされていたような雰囲気でした。

 そこにきて、12月第4週のIPOラッシュ(1週間で24社、24日は過去最多の1日7社上場)。IPOのセカンダリーを買うのもほとんどが個人マネーです。超短期での一獲千金狙いで入る短期マネーは多かった印象ですが、それも値動きのいい数銘柄のみ。資金分散で初値上昇率は小さく(公募割れも続出)、既存のマザーズ銘柄の流動性低下要因にもなりました。

 ただ、損出し売りは相場観とは関係ない売りのため、年内に終わるタイプの売り。そしてIPOラッシュも日程さえ消化すれば終わる需給悪化要因。2020年のマザーズの陰の極は12月22日でしたが、2021年は12月21日のザラ場安値942ポイントで底入れ。年末に向けては、リバウンド狙いの短期資金がマザーズ市場に戻る場面も見られました。

 12月の月間騰落率はマザーズ指数が▲7.8%と世界屈指の指数下落率を記録。その他の指数では、日経平均株価+3.5%、TOPIX(東証株価指数)+3.3%、日経ジャスダック平均▲0.2%。マザーズ指数だけ年間でも▲17.4%と、「何があったら今年プラスになれたんだろう?」と言えるほど、外部環境無視で一人負け状態の1年に。

12月の売買代金ランキング

 値崩れする銘柄続出で、「突っ込み買いの噴き値売り」狙いの動きは目立ちました。ただ、いずれも短期リバウンド狙いのフロー。戻ったら売りに回るし、安値を切ればロスカットに回って下値を崩す元凶にもなります。

 リバーサル狙いの代表がトップのFRONTEO、そして前月上場の直近IPOサイエンスアーツが極端な売買代金でワンツーに。ただ、地合いが極端に悪いなか、その他のランクイン銘柄の過半が前月比では売買代金大幅ダウン。地合い悪化のほかにも、IPOラッシュに短期資金が奪われた影響も露骨でした。

 月末時点の25日移動売買代金でランキング化していますので、12月上場のIPO銘柄は含まれません。続々とIPOが出てくる過程で流動性トップ銘柄は変化していきましたが、マザーズIPOではJDSCが最初盛り上がり、その資金は値がさ系のエフ・コード、アジアクエストにシフト。

 12月後半は、マザーズ指数構成銘柄ではない11月・12月上場銘柄の売買代金がマザーズ全体の3~4割を連日占めていました。突き抜けて高い流動性の存在する銘柄にだけ個人が群がり、結果的にアルゴリズム売買も盛んになる…株式投資と名乗った単なるギャンブルにしか見えない日々でした。

市場 コード 銘柄名 12月末
終値
時価総額
(億円)
売買代金
25日移動平均値
(億円)
月間
騰落率
東証マザーズ 2158 FRONTEO 3,310 1,300 219.5 -8%
東証マザーズ 4412 サイエンスアーツ 6,900 232 180.3 -11%
東証マザーズ 9250 GRCS 5,750 75 93.0 -29%
ジャスダック 6890 フェローテック 4,235 1,883 69.7 14%
東証マザーズ 4385 メルカリ 5,860 9,363 67.1 -15%
東証マザーズ 3936 グロバルウェ 303 110 54.3 -67%
東証マザーズ 5759 日本電解 5,490 398 53.9 19%
ジャスダック 2702 マクドナルド 5,090 6,768 51.2 1%
東証マザーズ 4565 そーせい 1,904 1,552 47.5 -10%
東証マザーズ 4169 エネチェンジ 1,992 585 43.1 -43%
東証マザーズ 4591 リボミック 411 115 42.6 -39%
ジャスダック 4080 田中化研 2,345 763 38.8 12%
東証マザーズ 4934 Pアンチエイジ 9,250 807 33.5 -6%
東証マザーズ 4194 ビジョナル 9,710 3,482 31.7 19%
東証マザーズ 6522 アスタリスク 3,000 212 30.9 -19%
東証マザーズ 4880 セルソース 5,430 1,011 28.3 -20%
ジャスダック 6324 ハーモニック 4,860 4,681 27.6 4%
東証マザーズ 4485 JTOWER 9,650 2,123 27.2 -6%
東証マザーズ 4477 BASE 616 687 25.0 -10%
ジャスダック 3083 シーズメン 1,120 32 24.7 23%

売買代金ランキング(5銘柄)

1 FRONTEO(2158・東証マザーズ)

 追証発生が続出したとされる同社株の12月。11月26日に上場来高値5,300円を付けた翌日、29日より東証が増担保規制をかけました。増担保規制で急落することは多いとはいえ、29日のザラ場にストップ安まで売り込まれたのは衝撃。そして、翌30日と12月1日の2日連続でストップ安売り気配になったのは、それ以上の衝撃でした。

 最後に約定したのが11月29日で、その日の終値がストップ安の4,300円。そこから2日連続売り気配となり、下限の値幅制限が拡大された12月2日にようやく全株一致しましたが、その値段は2,557円。

 増担保規制ひとつで、高値の半値になる恐怖が個人投資家に知れ渡った案件といえます。マザーズの信用買い残が11月最終週時点で約180億円と断トツだった人気銘柄だけに、損切りせざるを得ない買いポジションが多過ぎたとはいえ…年前半のAI insideショックに並ぶショック安事例となりました。

2 サイエンスアーツ(4412・東証マザーズ)

 12月のIPOラッシュ手前まで、幕間つなぎ的に爆上げした直近IPO(11月24日上場)。デスクレスワーカー向けプラットフォーム「Buddycom」の開発・販売が主力ですが、今期予想の売上規模は4億円台と小さく、利益項目は全て赤字予想。ただ、公開価格ベースで時価総額が50億円台の小粒IPOでした。

 値段が飛びやすい案件だったこともあり、公開価格1,710円に対して、初値は4,545円と最近のIPOとしては初値から高騰。圧巻だったのが、品薄による需給ひっ迫で、初値形成直後から3日連続ストップ高したこと。

 そして、上場13営業日目の12月10日に付けた上場来高値は1万8,690円と、公開価格比でテンバガー達成! その後はIPOラッシュで資金が逃げ、流動性低下とともに急落しましたが、「上がる株は正義」「流動性あれば何でもOK」で集まる短期資金のすごみを感じさせた事例でした。

3 エネチェンジ(4169・東証マザーズ)

 11月に上場来高値を付け、マザーズのモメンタム銘柄として人気だったエネチェンジ。高値を付ける手前では、12月末の株主を対象とする株式2分割を発表していたことも刺激材料としていました。それが“ちゃぶ台返し”となったきっかけが、11月末に発表した公募増資(新株発行75万株、売出55.2万株)でした。

 希薄化を嫌って売られたうえ、12月中旬にかけたマザーズ市場の地合い悪化も下げに拍車をかけていきます。公募増資の発行価格は5,584円と8%超の大幅ディスカウントで設定されましたが、価格決定から受渡日14日にかけて下げ止まらず…受渡日の始値が公募価格を17%も下回るという、投資家にとって最悪のファイナンス案件となりました。

4 リボミック(4591・東証マザーズ)

 11月に月間67%上昇した人気バイオ株で、動意のきっかけは11月開催の第2四半期決算説明会でした。この場で、加齢黄斑変性治療薬「RBM-007」への期待が高まり、12月も10日に付けた年初来高値で944円まで上がりました。「RBM-007」、このパイプラインの成功期待こそが同社株の全て、というような雰囲気。

 そんな朗報を待つ投資家を失望させたのが、28日に発表した米国での「RBM-007」フェーズⅡ暫定報告。「RBM-007」での単独治療、独バイエルの治療薬「アイリーア」との併用治療の双方で、「アイリーア」単独治療を上回る視力改善効果が認められなかったと開示しました。

 28日終値611円に対し、翌日から2日連続ストップ安売り気配、全株一致した1月4日の終値は298円…治験の失敗で株価は半値以下に。

5 ビジョナル(4194・東証マザーズ)

 マザーズ市場の最悪級地合いの中、度肝を抜く上方修正で逆行高を演じたのが求人サイト「ビズリーチ」運営のビジョナル。多額の広告宣伝費を中心とした販管費の重さから、利益水準が小さく、予想PER(株価収益率)が同業他社比で飛び抜けて高い…人材系では割高過ぎるグロース株というイメージが強かったといえます。が、これを上方修正一発で黙らせたようなインパクトでした。

 9日、通期の営業利益予想を従来26億円→60億円(前期比2.5倍)に大幅増額すると発表。コロナ禍の落ち着きで企業の採用意欲が想定より高まるなか、主力のビズリーチが需要を取り込んだようです。発表翌日はストップ高買い気配、全株一致した13日には上場来高値を1万1,550円と大幅更新しています。

 月末にかけて調整したものの、12月末時点の時価総額はマザーズ全体で3位(2位のフリーとほぼ同サイズ)。マザーズの中核銘柄としての地位を確立しました。

12月の株価値上がり率ランキング

 新興株市場の地合いが劣悪だった12月。多くの新興株が値下がりし、年初来安値の銘柄も続出。こうなると、個人投資家の売買スタイルが「リバウンド狙いの短期逆張り」に偏ります。

 下値は拾うけど、戻ったら売る…こうした買いの比率が高まると、大幅なリバウンドも起きにくくなります。リバウンドせず安値を切ると、逆張り買いの玉が売りに回るため短期需給が一層悪くなる悪循環。

 そんな地合いで逆行高したのが、今回のランクイン銘柄。値上がり率ランキングではウチダエスコが前月比2倍株となっています。ただし…これは高い値段で決まったTOB(株式公開買い付け)価格にサヤ寄せしただけ。ランクイン銘柄で時価総額最大のJAMも、パンパシHDによるTOB価格にサヤ寄せしたことが理由です。

市場 コード 銘柄名 月間
騰落率
12月末
終値
前月末
終値価格
時価総額
(億円)
ジャスダック 4699 ウチダエスコ 106% 4,125 2,003 149
ジャスダック 2195 アミタHD 75% 1,699 969 99
東証マザーズ 4599 ステムリム 67% 881 528 520
東証マザーズ 4888 ステラファーマ 66% 920 553 264
東証マザーズ 8922 JAM 66% 163 98 1,263
東証マザーズ 3691 リアルワールド 65% 1,309 792 48
東証マザーズ 7063 Birdman 63% 1,890 1,162 48
ジャスダック 7777 3Dマトリックス 55% 524 339 285
ジャスダック 4336 クリエアナブキ 52% 908 597 21
東証マザーズ 7375 リファインバス 51% 2,259 1,498 75
ジャスダック 3779 J・エスコムHD 50% 153 102 16
東証マザーズ 4377 ワンキャリア 48% 2,925 1,975 168
ジャスダック 6626 SEMITEC 41% 14,250 10,100 405
東証マザーズ 6618 大泉製 40% 1,067 763 90
東証マザーズ 6554 エスユーエス 36% 1,279 940 113
東証マザーズ 4936 アクシージア 33% 1,123 844 290
東証マザーズ 6182 メタリアル 33% 1,494 1,124 159
ジャスダック 6912 菊水電 32% 1,576 1,190 156
東証マザーズ 7378 アシロ 31% 756 578 52
ジャスダック 4579 ラクオリア 30% 1,174 902 246

値上がり率ランキング

1 ウチダエスコ(4699・ジャスダック)

 内田洋行の子会社、親子上場銘柄のウチダエスコが急騰。理由は、TOB価格に大きなプレミアムが乗ったことにあります。3日引け後、親会社の内田洋行が完全子会社化を目的としてTOBを実施すると発表。この日の終値は2,160円でしたが、内田洋行が提示したTOB価格は「4,130円」でした。プレミアムは91%という大盤振る舞い!

 両社の主力事業がともにICT事業を基盤としているため、一体になることが双方の持続的な成長実現につながると判断したようです。買付期間は2022年1月24日まで、完全子会社化を目的とするため下限(保有割合の31.42%)を上回る応募株は全部買うと。

2 アミタHD(2195・ジャスダック)

 廃棄物リサイクルを主力とする地味な業種、かつジャスダックの低流動性銘柄。この銘柄が一躍、人気デイトレ銘柄に浮上したきっかけは大幅な“株式分割”でした。同社は11月26日、12月末時点の株主を対象とした1対5の株式分割を実施すると発表。企業価値に何ら影響を与えない株式分割ですが、この発表を機に驚くほど仕手株化が加速します。

 発表翌日から2日連続ストップ高買い気配となり、値幅制限が4倍に拡大されたのが12月の月初1日。この時点で、発表前に比べて株価は2.2倍に。さらに、ここから13日に付けた高値まで、発表前に比べて約7倍に! 小型マイナー銘柄に投機マネーが群がるとこうなるのか…しかも株式分割だけで7倍とは…衝撃の展開でした。が、投機マネーの正体は個人の信用買いばかり。

 23日より増担保規制がかかり、実際に5分割されると処分売りが加速。株式を分割すれば流動性が向上するといいますが、実際は株式分割を発表したことで流動性が向上し、分割後は流動性が元に戻り、上値に巨大なシコリを残すだけ?

3 リアルワールド(3691・東証マザーズ)

 時価総額50億円未満の小型株ということもあり、珍しい理由が強い買い材料になりました。10日、同社の菊池社長が自身のブログを更新。投資家向け動画に出演したようで、動画の紹介を兼ねて「粗利倍増計画」というタイトルで自身の見解を書かれていました。その内容は、2022年9月期に粗利倍増、2023年9月期に過去最高の営業利益と時価総額を目指し、数年以内にテンバガーを目指すといったもの。

 最初にブログ更新に気付いた投資家の発見力には驚きますが、株価の反応から話題が広がり、ブログ更新の2日後に瞬間最大で時価総額が約7割アップ。お金をかけず、時価総額を膨張させるコスパ抜群のIR事例でした。

4 Birdman(7063・東証マザーズ)

 時価総額50億円未満の小型株に、(業績に与える強度は不明ながら)何だかすごそう的材料が付いて噴き上がったのが同社。10日の午前、ソフトバンクのグループ会社のリアライズ・モバイル・コミュニケーションズとデジタルコンテンツ創出で業務提携したと発表しました。

 共同プロジェクトの第1弾は、没入感の高い3Dのライブ映像で新たなバーチャル体験が可能となるサービス「さわれるライブ 5D LIVE」の提供と。

 リアルタイムで「さわって」楽しめる新しい体験型のデジタルコンテンツということで、解釈的には市場で人気テーマの「メタバース」に合致。発表当日に18%高し、翌日も15%高と噴き上がり…発表2日後が7%安、3日後が14%安で、2日上がって2日下がって全部帳消しの“往って来い”に。

5 アシロ(7378・東証マザーズ)

 まずは、14日に発表した今期ガイダンスを好感。主力の弁護士相談サイトの拡大を理由に、2022年10月期の二ケタ増益予想で提示しました。

 営業利益は前期の着地が8.5%増、一方でガイダンスは12.4%増ですので伸び率アップ。さらに、追撃の買い材料になったのが23日に発表した自社株買いでした。

 マザーズのネット関連株の「自社株買い」はレアといえます。同社は営業利益率で2割超の高収益体質。ここまではネット関連株に多いパターンですが…稼いだ利益を成長投資に回すのが一般的な“低株主還元体質”のマザーズ銘柄にあって、1億円を上限とする自社株買い枠設定はある意味サプライズに。

1月に注目したい新興株の動き

 新しい年になりました。「今年は稼ぐぞ!」という前向きな気持ちで臨んだ個人投資家の心を、ここまであっさりへし折るとは…。多くの投資家がイメージしていた1月相場と180度違うスタートになりました。

 年初の新興株の当初イメージでいえば、12月で節税目的の損出し売りは終了、怒涛(どとう)のIPOラッシュも無事通過、これで売りが減るなかで新規マネー流入による新興株のプチラリー。だったはずが…、4日の大発会はいきなり寄り天でマイナス(日経平均が510円高したのに)、そして5日にマザーズ指数5%安の急落が起きました。

 マザーズが大きく下げた前年(2021年)でも、1日の最大下落率は2月24日の4.3%安です。その下落率を、開始2日目にして超えたわけです。何かがおかしい…。

 このタイミングで何が起きたかを整理しておきます。年が替わった直後から露骨に起きたことは、「大規模なポートフォリオ見直し」のような動きでした。ポートフォリオ見直しですから、個人投資家ではなく、機関投資家(巨大ファンド)の話。目を引いたのが、バリュー株(低PBR銘柄)でも大型の銘柄に限って急激な値上がりを見せたこと。

 代表的なのは時価総額トップのトヨタ自動車株ですが、ソニーや日立、業種では銀行、保険、海運、総合商社など。いずれもバリュー株です。そして、グロース株(高PBR:株価純資産倍率銘柄)の大型の銘柄では、同時多発的に急落が起きました。

 バリュー株が買われ、性格が異なるグロース株が売られる(その逆も然り)現象は昨年も頻発しました。これは、ロングショート戦略をとる投資家のアンワインド(もしくは新規ポジションの構築)が主因と見られます。

 では、なぜそうした行動に出たのか? でいえば、「長期金利の上昇」しか見当たりません。米長期金利は1カ月ぶりに1.6%台となり、マイナス金利の独長期金利も2カ月ぶりに▲0.12%の水準に上がってきました。まだ水準自体は低いのですが、利上げ開始を前に「今年は金利がもっと上がる」という見立てがコンセンサス化しているのでしょう。

 機関投資家のアンワインドですので、舞台は大型株。マザーズは関係ないのですが、大型グロース株の急落に恐怖感が広がり、大型バリュー株の上昇で潮目変化への不安が広がり、「バリュエーションの高いマザーズ株は処分しておこう」「リバウンド狙いの買いはまだ控えておこう」という心理が広がります。

 そもそも昨年来の安値圏だった銘柄が多いだけに、ロスカットの重みに耐えきれず下値を崩していく…機関投資家とは関係ないマザーズ銘柄にも、個人投資家の行動変化を通じて伝染していったように見えます。年初からセンチメントが最悪に傾き、「トヨタやソニーを売買しておいたほうが安全」とか、「日本株より米国株のほうがやはり安全」といった認識も急速に広まった印象です。

 昨年も強烈な「バリュー株買い/グロース株売り」は何度か発生しましたが、いずれもトリガーは米長期金利の上昇でした。昨年までは、先高観が広がった米長期金利の上昇にブレーキがかかり、グロース株売りも早期収束を繰り返しました。今年はどうなのか? 現時点では、米長期金利の推移と、それに米グロース株がどういう反応をするか…これを見ながら、その都度判断(この場合、短期スタンスでしか参加できませんが)するしかなさそうです。

 金利以外にも、マザーズ敬遠ムードを決定付けた要素は挙げられます。昨年12月のFRONTEOショックは鮮烈でしたが、増担保規制ひとつで株価が異常に値下がりする先例が多く、人気銘柄の上値を追うリスクが周知されたこと。また、株価の上昇モメンタムが強い銘柄であっても、エネチェンジや霞ヶ関キャピタルのように高値圏での公募増資でモメンタムが破壊されるリスクが高いこと。

 いずれも上値を追う投資家を減らす要素ですので、しばらく、大きく値下がりした場面での短期リバウンド狙いばかりになりそう。

 米長期金利の動向と米グロース株の動向を見ながら“ヒット&アウェー”、こうした投資家しか居ないなかでは、1月の新興株にラリー発生を期待するのは無理がありそうです。