TOPIXは上昇ウェッジを形成
その一方で、「ここ最近は日経平均よりもしっかり」していたTOPIX(東証株価指数)の値動きについては、少し注意しておく必要が出てきたかもしれません。
■(図3)TOPIX(日足)の動き(2021年11月19日取引終了時点)
先週のTOPIXは、前回のレポートでも指摘した、9月14日の年初来高値を起点とする上値ラインの攻防が続きましたが、こちらも先ほどの図2のように、先々週は上値ラインよりも下、先週は上値ラインよりも上での推移となっていて、状況は良くなっていると言えます。
とはいえ、図3のオレンジ色の2本の線が示すように、ここ最近のTOPIXはやや「上昇ウェッジ」を形成しつつあるようにも見えます。
上昇ウェッジは、見た目は三角もちあいと似ていますが、上値の線と下値の線がともに同じ上方向を向きながらも、その角度が異なる形になるのが特徴です。下値の切り上がりの角度が急なのに対し、上値の切り上がりの角度が緩やかになっています。
つまり、上昇ウェッジは、「下値で積極的に買いが入っている割に、その後の株価反発による上値が重たい」状況が続いているため、その後の相場が下落することが多いとされています。今週も上昇ウェッジが続くのであれば、株価は上値の線に向かっていくことになりますが、下抜けしてしまった場合には、思ったよりも下落する展開には注意が必要です。
岸田政権の経済対策に対する初期反応に注目
さらに、今週は何かと注目材料の多い週となります。具体的には、(1)先週末に発表した岸田政権の経済政策に対する初期反応、(2)週末の26日(金)からスタートする米国の年末商戦(ブラック・フライデー)、(3)25日(木)の感謝祭までに公表されるとされる次期FRB(米連邦準備制度理事会)議長の人事などです。
まずは、(1)の経済政策に対する株式市場の初期反応の見極めが、日経平均3万円台への越えるべき最初のハードルになります。
岸田政権の具体的な経済政策に対する細かい分析や影響は他に譲りますが、ざっくりとしたポイントとして挙げられるのは、「過去最大規模(約55兆円)の財政支出」、「想定される実質GDP(国内総生産)の押し上げ効果は5.6%程度」、「いまだに成長への投資よりもコロナ対策や給付が中心」などです。
先週は、50兆円を超える規模が見込まれると報じられ、そのインパクトで株式市場が反応する場面がありましたが、発表された中身については、給付金が中心で、すでにコロナ後の成長を見据えて経済政策を打っている米国など海外と比べると、持続的な成長や新たな産業育成への投資に乏しい印象です。
もちろん、国内需要を喚起する必要はあり、バラマキという批判があっても、一定の効果が望めることや、政策の規模感や資金が向かうとされる分野の銘柄が物色されることで、日経平均が3万円台をクリアすることも考えられますが、今後も相場に方向性をもたらすかは微妙なところかもしれません。