日経平均はつかみどころのない値動き。上方向への意欲は残る印象

 先週末11月19日(金)の日経平均は2万9,745円で取引を終えました。前週末終値(2万9,609円)からは136円高と小幅に上昇しています。

 早いもので、来週の半ばには12月に入り、2021年相場も残り1カ月を切ります。

 今週は、日本は23日(火)、米国では25日(木)が祝日のため、日米ともに取引日が4日間と短くなるわけですが、その12月相場に向けて、今週の日本株は「様子見で方向感に欠く」展開となるのか、それとも「一花咲かせる」動きで上昇するのかが焦点になりそうです。

 まずはいつもの通り、先週の日経平均の動きを振り返ってみます。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2021年11月19日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の日経平均ですが、16日(火)の取引時間中に2万9,960円の高値をつけ、3万円の大台に迫る場面があった一方、18日(木)には2万9,400円割れ寸前まで値を下げる場面を見せるなど、「強いのか弱いのか、つかみどころのない」値動きとなりました。

 直近高値(11月4日の2万9,880円)は超えたものの上昇に勢いが出ず、先高観がイマイチ盛り上がらない印象です。

 ここ何回かのレポートでも、「チャートからは相場の上方向への意欲が感じられ、3万円台乗せも想定内」という論調でお伝えしてきましたが、なかなかその3万円台に乗せきれない状況が続いています。

 それでも、直近安値の10月6日を起点とするオレンジ色の下値ラインはしっかり機能しており、3万円の水平ラインとのあいだで、いわゆる「三角もちあい」を形成しているようにも見え、上方向への意欲はまだ残っている印象です。

 ただ、ちょっと気掛かりなのは、16日(火)と17日(水)のローソク足の組み合わせが「抱き線」っぽくなっていることです。日経平均が年初来高値を更新した9月14日直後にも抱き線が出現し、その後の株価が下落していった経緯があります。

 厳密に言うと、先週の抱き線はヒゲを考慮すれば完全な抱き線ではないのですが、一応、頭の片隅に置いた方が良いかもしれません。

■(図2)日経平均(日足)のギャン・アングル(2021年11月19日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 また、上の図2は、前回のレポートでも紹介した、8月20日の年初来安値から、9月14日の年初来高値更新時を起点とした、水色の上昇ギャン・アングルと、そこから10月6日の直近安値を起点とする、黄緑色の下降ギャン・アングルになります。

 ここ2週間の日経平均は黄緑色の下降ギャン・アングルの8×1ラインに沿った攻防が続いていますが、先々週は8×1ラインよりも下、先週は8×1ラインより上で株価が推移していて、状況は良くなっています。

 10月6日からの株価の値動きとギャン・アングルを重ね合わせると、「上昇ギャン・アングルの4×1ラインまで上昇して、下降ギャン・アングルに沿ってしばらくもみ合う」というリズムで株価を切り上げており、そのリズムを保っているのであれば、再び上昇ギャン・アングルの4×1ラインに向かうことになり、3万円の株価水準はその通過点になります。

TOPIXは上昇ウェッジを形成

 その一方で、「ここ最近は日経平均よりもしっかり」していたTOPIX(東証株価指数)の値動きについては、少し注意しておく必要が出てきたかもしれません。

■(図3)TOPIX(日足)の動き(2021年11月19日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週のTOPIXは、前回のレポートでも指摘した、9月14日の年初来高値を起点とする上値ラインの攻防が続きましたが、こちらも先ほどの図2のように、先々週は上値ラインよりも下、先週は上値ラインよりも上での推移となっていて、状況は良くなっていると言えます。

 とはいえ、図3のオレンジ色の2本の線が示すように、ここ最近のTOPIXはやや「上昇ウェッジ」を形成しつつあるようにも見えます。

 上昇ウェッジは、見た目は三角もちあいと似ていますが、上値の線と下値の線がともに同じ上方向を向きながらも、その角度が異なる形になるのが特徴です。下値の切り上がりの角度が急なのに対し、上値の切り上がりの角度が緩やかになっています。

 つまり、上昇ウェッジは、「下値で積極的に買いが入っている割に、その後の株価反発による上値が重たい」状況が続いているため、その後の相場が下落することが多いとされています。今週も上昇ウェッジが続くのであれば、株価は上値の線に向かっていくことになりますが、下抜けしてしまった場合には、思ったよりも下落する展開には注意が必要です。

岸田政権の経済対策に対する初期反応に注目

 さらに、今週は何かと注目材料の多い週となります。具体的には、(1)先週末に発表した岸田政権の経済政策に対する初期反応、(2)週末の26日(金)からスタートする米国の年末商戦(ブラック・フライデー)、(3)25日(木)の感謝祭までに公表されるとされる次期FRB(米連邦準備制度理事会)議長の人事などです。

 まずは、(1)の経済政策に対する株式市場の初期反応の見極めが、日経平均3万円台への越えるべき最初のハードルになります。

 岸田政権の具体的な経済政策に対する細かい分析や影響は他に譲りますが、ざっくりとしたポイントとして挙げられるのは、「過去最大規模(約55兆円)の財政支出」、「想定される実質GDP(国内総生産)の押し上げ効果は5.6%程度」、「いまだに成長への投資よりもコロナ対策や給付が中心」などです。

 先週は、50兆円を超える規模が見込まれると報じられ、そのインパクトで株式市場が反応する場面がありましたが、発表された中身については、給付金が中心で、すでにコロナ後の成長を見据えて経済政策を打っている米国など海外と比べると、持続的な成長や新たな産業育成への投資に乏しい印象です。

 もちろん、国内需要を喚起する必要はあり、バラマキという批判があっても、一定の効果が望めることや、政策の規模感や資金が向かうとされる分野の銘柄が物色されることで、日経平均が3万円台をクリアすることも考えられますが、今後も相場に方向性をもたらすかは微妙なところかもしれません。

米国株市場の状況

 また、米国では祝日明けの26日(金)から年末商戦が本格スタートします。そこで、米国株市場の状況についても見ていきます。

■(図4)米NYダウ(日足)フィボナッチ・ファンとMACD(2021年11月19日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週末19日(金)のNYダウ(ダウ工業株30種平均)終値は3万5,601ドルでしたが、最高値(11月8日)からの下落基調が目立つようになってきました。

 前回のレポートで「目先の下げ余地」としていた25日移動平均線を下抜けたほか、フィボナッチ・ファンの38.2%ラインも下回ってしまいました。下段のMACDも0ドルラインを割り込むところまで下げていて、チャートの形は悪化しています。そのため、3万5,500ドル水準の節目で踏ん張れるかが今週の焦点になります。

 次にS&P500種指数についても見ていきます。

■(図5)米S&P500(日足)フィボナッチ・ファンとMACD(2021年11月19日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週のS&P500の値動きはNYダウに比べるとしっかりとした印象です。

 先週末の株価は、フィボナッチ・ファンの38.2%ラインや25日移動平均線まで、まだ距離を残しているほか、4,700pの株価水準でのもみ合いを続けており、11月5日の最高値を超えることができれば一段高のシナリオが残されています。

 最後にNASDAQです。

■(図6)米NASDAQ(日足)のボリンジャーバンドとMACD(2021年11月19日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週のNASDAQはわずかに最高値を更新する動きを見せています。その意味では、NYダウやS&P500種指数に比べて強かった印象ですが、直近高値を抜けきった感はまだなく、さらに上昇するか、下落に転じてしまうのかの分岐点に位置していると言えます。

 実際に、チャートを過去にさかのぼると、バンド・ウォーク形成の過程で直近高値を上抜けて一段高となるケースと、抜け切れずに反落するケースの両方が確認できます。

 とはいえ、下段のMACDは右肩上がりとなっており、シグナルを上抜けてくれば上値トライの勢いが増してくる可能性もあり、期待したいところです。

 今年の米国の年末商戦は、供給網の混乱による品不足への懸念によって、セールが前倒しで始まっているという見方もあり、その初動が注目されます。

 また、12月に入ると、米債務上限問題の再燃や中国恒大集団の大規模な利払いといったイベントが控えていること、先週の米国株市場でNASDAQが最高値を更新し、過熱感も意識され始めていること、そして次期FRB議長人事の発表待ちもあります。

 例年の期待感だけでなく、株価調整への意識も持っておく必要がありそうです。

 とはいえ、日米の株式市場はともに基本的には上方向への意欲がまだ残っているほか、個別銘柄では高値を更新している銘柄も散見されているため、今週は相場全体が年末株高へ向かうムードを醸成できるかが試される週になりそうです。