「低金利下の業績相場」が米国株式の支え

 季節性に沿い夏から秋にかけて調整を経ることはあっても、米国株は底堅いトレンドを維持しそうです。

 図表3は、代表的な時価総額加重平均指数であるS&P500指数ベースの予想EPS(12カ月先予想1株当たり利益/市場予想平均)の推移を示したものです。

 セクター(業種)や企業別に好・不調の差はあっても、業績見通しはコロナ危機で減益を余儀なくされた2020年に底入れ。総じて「V字型回復」との表現しか思い浮かばないほどの回復に転じ、今やコロナ危機前(2019年)の水準を大きく上回っています。

 直近の予想EPSは205.36に拡大し、過去12カ月累計実績EPSに対して約24.2%の前年比増益率が見込まれています。売上高の回復、利益率(生産性)の改善、自社株買い効果を主要因とする業績改善は、2021年も2022年も過去最高益を更新する見通しです。

<図表3:米国市場の業績見通しは拡大を続けている

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2011年初~2021年8月13日)

 実際、現在と似ているとされる2011年(米国債務危機)や2013年(バーナンキショック)当時も一時的な株価波乱はみられましたが、相場は株価変動を乗り越え堅調トレンドに回帰しました。

 市場が最近神経質となっている「テーパリング」(量的金融緩和の縮小)をFRB(米連邦準備制度理事会)が決定したのは2013年12月で、金融当局がゼロ金利(FF金利の誘導目標上限は現在と同じ0.25%だった)から最初の利上げに転じたのは2015年12月でした。

 そうした間にも米国株式の堅調は続きました。とはいっても、株式が一本調子に上昇し続けるということはありません。株価が休みなく上昇すると「バブル」が醸成されてその反動も大きくなりがちです。

 高値圏では悪材料に反応しやすいのも相場の特徴。適度の株安はむしろ「健全」と考えたいものです。米国市場では、直近高値から10%以内の株安は「コレクション」(正常な株価調整)とみなされます。その調整場面がいつかを正確に予想できる市場参加者はいません(効率的市場仮説)。

 株価調整と向き合うにあたっては、「リスクはリターンの源泉なり」(リスクがあってこそのリターン)とのプリンシパルを再認識し、冷静に対応しましょう。

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