3.推譲:世の中のためにお金を使おう

 二宮金次郎が生涯を賭けて何をしたかというと、この「推譲」と言えるでしょう。

 もし、金次郎が自分のために復興事業をしたとしたら、二宮財閥ができるくらいの財を成していたはずです。ところが、金次郎が亡くなったとき、自己所有の土地もなく、金銭もすべて報徳金として農村復興のために使ってしまっていたので、私有財産はほぼ皆無という状態でした。

 金次郎が願ったのは、貧村の困窮を救い、荒れ地を開墾し、村人の借金を返済し、村人の生活を安泰にすることで、そのために人生をすべて捧げ、まさに「大推譲」を成し遂げたのです。

 金次郎のような生き方を体現していくのも1つですが、並大抵なことではありません。ただ、私たちにも少なからず「推譲」はできます。金次郎は「貯蓄、子孫に遺すこと、親類、朋友、地域社会、国家に譲ることも推譲である。資産のある者はしっかりと分度を定めて、よく推譲すべき」と言っています。

 2.分度で示したように、収支に余裕を持たせ、余裕が出たら、翌年以降余裕がなくなるかもしれないときのため、子供に遺すためとして貯めておく、余裕のない親類、友人を助ける、資金を必要としている企業の増資に応じる、地域社会や国家のために税金を払う、寄付をするなど、私たちにもできることはあるのではないでしょうか。

 少額でもよいのでコツコツと資産を積み上げていき(積小為大)、収支を把握して家計に余裕を持たせ(分度)、世の中のために使っていく(推譲)。金次郎の実直な想いを胸に、私たちも実践していきたいですね。

参考文献:
『親子で学びたい二宮金次郎伝』 著者:三戸岡道夫(致知出版社)

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