1.積小為大:小さなことからコツコツと

 金次郎がまだ17歳だった頃の話です。田植えを終えての帰り道に、植え残りの苗が捨てられていました。もったいないと思った金次郎はそれを拾い集めて、家の田園の片隅に植えてみることにしました。秋になると、これが一俵ほどの米になりました。

「捨てられた苗が一俵の米になるとは……」。このことで、「大きいことを望んでも、小さいことを怠るので、結局大きいことを成し遂げられない。大きいことをしたいと思えば、小さいことを怠らずに勤めなくてはならない」ということを金次郎は発見しました。

 資産形成する上でも、いきなり多額の資産を手にできるわけではありません。コツコツと貯めていった結果が大きな資産になっていきます。このことは、若いうちから積み立てをしたり、従業員持株会を活用して資産形成をしていくことと重なります。

「大きな資産を築きたいのであれば、小さいこと(コツコツ貯めること)を怠らずに」。積み立てや持株会は、まさに金次郎の教えそのものと言えるでしょう。

2.分度:収入はいくらで、支出はいくら? 

 金次郎が32歳の頃の話です。小田原藩の服部家から財政立て直しの依頼を受けます。服部家の実情は、石高は表面上1,200石あるのに対して実際には403石しかない、その上、246両の借金があるという状態でした。

 そこで金次郎は、「403石しかないのに、1,200石を基準にして支出をするので、毎年赤字になってしまう。質素倹約を守って、使う金額を3分の1にして、借金も計画的に返済していかなければなりません」と言って、立て直していきます。

 今後の生活を考えていく上で、現在の収支の状況、今のままいったら先々どうなるかはきちんと把握しておく必要があります。

 1つの目安として、働いている人であれば収入の範囲内に支出を抑えること、年金生活の人であれば貯蓄から毎年いくら取り崩していっても大丈夫かを把握しておくこと、借金がある人は返済計画をきちんと立てておくことは重要だと思います。

 支出に限度を設け、無計画な支出をしない、これが金次郎からの教訓です。