★今回の記事『二宮金次郎に学ぶ、コツコツ型資産形成術:資産運用で人格を磨く(9)』のオンライン解説を、4月18日(日)17:00~17:30に行います(参加費無料)。
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 二宮金次郎と言えば、薪を背負って本を読んでいる銅像を想像する人も多いのではないでしょうか? その銅像からは勤勉な少年という印象ですが、勤勉なだけではありません。大人になってからは農村の復興で実績を上げていきます。

 幕末の藩の財政は苦しく農民の生活も困窮するという状況下、その活躍ぶりから関東、東北地方から依頼が絶えず、結果、600以上もの農村の復興を行うという、復興事業に人生を賭けた人物です。

 この実践を通して生まれたのが、「勤労(知恵を出し、よく働く)」「分度(身分相応に暮らす)」「推譲(世の中のために尽くす)」という教訓です。

 金次郎の功績には明治天皇も感激し、金次郎の一生を記した『報徳記』は勅版され、全国の知事に配布されました。これをきっかけに、小学校の教科書に「道徳のお手本」として掲載され、全国の小学校に負薪読書の銅像が建てられました。

 金次郎は教育だけでなく、経済界においても大きな影響を与えています。「道徳なき経済は犯罪であり 経済なき道徳は寝言である」が教えとして言われていますが、渋沢栄一、トヨタ自動車の始祖の豊田佐吉、パナソニックの始祖の松下幸之助も、金次郎の報徳思想に感化され、事業を発展させていきました。

 このように各方面に影響を与えた金次郎ですが、私は資産形成にも通じるところがあると思っていて、それが主に次の3つだと考えています。

1.積小為大:小さなことからコツコツと

 金次郎がまだ17歳だった頃の話です。田植えを終えての帰り道に、植え残りの苗が捨てられていました。もったいないと思った金次郎はそれを拾い集めて、家の田園の片隅に植えてみることにしました。秋になると、これが一俵ほどの米になりました。

「捨てられた苗が一俵の米になるとは……」。このことで、「大きいことを望んでも、小さいことを怠るので、結局大きいことを成し遂げられない。大きいことをしたいと思えば、小さいことを怠らずに勤めなくてはならない」ということを金次郎は発見しました。

 資産形成する上でも、いきなり多額の資産を手にできるわけではありません。コツコツと貯めていった結果が大きな資産になっていきます。このことは、若いうちから積み立てをしたり、従業員持株会を活用して資産形成をしていくことと重なります。

「大きな資産を築きたいのであれば、小さいこと(コツコツ貯めること)を怠らずに」。積み立てや持株会は、まさに金次郎の教えそのものと言えるでしょう。

2.分度:収入はいくらで、支出はいくら? 

 金次郎が32歳の頃の話です。小田原藩の服部家から財政立て直しの依頼を受けます。服部家の実情は、石高は表面上1,200石あるのに対して実際には403石しかない、その上、246両の借金があるという状態でした。

 そこで金次郎は、「403石しかないのに、1,200石を基準にして支出をするので、毎年赤字になってしまう。質素倹約を守って、使う金額を3分の1にして、借金も計画的に返済していかなければなりません」と言って、立て直していきます。

 今後の生活を考えていく上で、現在の収支の状況、今のままいったら先々どうなるかはきちんと把握しておく必要があります。

 1つの目安として、働いている人であれば収入の範囲内に支出を抑えること、年金生活の人であれば貯蓄から毎年いくら取り崩していっても大丈夫かを把握しておくこと、借金がある人は返済計画をきちんと立てておくことは重要だと思います。

 支出に限度を設け、無計画な支出をしない、これが金次郎からの教訓です。

3.推譲:世の中のためにお金を使おう

 二宮金次郎が生涯を賭けて何をしたかというと、この「推譲」と言えるでしょう。

 もし、金次郎が自分のために復興事業をしたとしたら、二宮財閥ができるくらいの財を成していたはずです。ところが、金次郎が亡くなったとき、自己所有の土地もなく、金銭もすべて報徳金として農村復興のために使ってしまっていたので、私有財産はほぼ皆無という状態でした。

 金次郎が願ったのは、貧村の困窮を救い、荒れ地を開墾し、村人の借金を返済し、村人の生活を安泰にすることで、そのために人生をすべて捧げ、まさに「大推譲」を成し遂げたのです。

 金次郎のような生き方を体現していくのも1つですが、並大抵なことではありません。ただ、私たちにも少なからず「推譲」はできます。金次郎は「貯蓄、子孫に遺すこと、親類、朋友、地域社会、国家に譲ることも推譲である。資産のある者はしっかりと分度を定めて、よく推譲すべき」と言っています。

 2.分度で示したように、収支に余裕を持たせ、余裕が出たら、翌年以降余裕がなくなるかもしれないときのため、子供に遺すためとして貯めておく、余裕のない親類、友人を助ける、資金を必要としている企業の増資に応じる、地域社会や国家のために税金を払う、寄付をするなど、私たちにもできることはあるのではないでしょうか。

 少額でもよいのでコツコツと資産を積み上げていき(積小為大)、収支を把握して家計に余裕を持たせ(分度)、世の中のために使っていく(推譲)。金次郎の実直な想いを胸に、私たちも実践していきたいですね。

参考文献:
『親子で学びたい二宮金次郎伝』 著者:三戸岡道夫(致知出版社)

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