6:「市場主体」が中国経済の鍵を握る?

 李克強が好み、会見でも何度も使った言葉が「市場主体」というものです。意味は、「マーケットで主体性を保持して動くプレーヤー」といったところでしょうか。李克強は次のように言います。

昨年、我々が改革を推進する過程で突出していたのが、マクロ政策を制定、実施する中で、市場主体の需要を考慮したこと、市場主体の困難を解決し、彼らの活力を生かすこと、それをもって、中国経済のファンダメンタルズを支えることだ。中国改革開放40年来、我々は社会主義市場経済を発展させてきた。市場主体を不断に育成、発展させてきたのだ。市場主体が育成されれば、市場が資源配置の中で決定的な役割を発揮し、政府がより健全な役割を発揮することが可能になる

 習近平という各分野の権力を手中に収める最高指導者の影に隠れ、権限が限られていると揶揄(やゆ)されてきた李克強が、それでも尽力してきた分野の一つが、マーケットに強く依拠した経済発展モデルの構築です。「市場主体」たちがよりダイナミックに経済活動に従事できる環境を作り、それが結果的に経済成長につながることを期待し、促そうとしたのです。

 李克強によれば、第13次五カ年計画の5年間で、中国の市場主体は6,000万社増加し、コロナ・ショックを乗り越え、現在では1億3,000社になった、また、自営業者は昨年1,000万社以上増え9,000万社に上り、2億以上の雇用を創出したとのことです。李克強は言います。

市場主体の積極性を活性化させること、活性度を向上させること、これこそが政府が改革を推進する上での努力の方向性である