チャイナリスクを見極め、世界市場に挑もう

 日ごろ、各国の機関投資家から、リスク回避という観点から聞かれる質問に対して、整理しながら回答してきました。私は決して、「中国は危ない」と言いたいわけではありません。前述のように、中国共産党にとって、台湾侵攻は「最期の手段」です。可能性は否定できない、それが起こり得る根拠は示しました。ただ、それが実際に起こるのかどうか、どう展開するのかに関しては慎重に慎重を重ねた分析が必要です。私自身、このような事態が安易に発生するとは考えていません。

 仮に発生したとして、その後の世界がどう変わるかに関しては、あらゆる不確定要素が複雑に絡み合い、新たな形でマーケットにインパクトをもたらすでしょう。そして、そこにはネガティブなものばかりではなく、新たな希望の光が見えてくる可能性も十分にあります。

 漠然と悲観的になるのは非生産的だと思います。

 このレポートを読んで、「それでは中国市場への投資は考え直そう」と考える方がいるとしたら、率直に言って、甘過ぎます。私が上記で論じてきた事情が及ぼす、与える影響の範囲は、決して、中国本土、香港、台湾のマーケットだけではなく、日本や米国を含めた、世界中すべてのマーケットに(程度の差はあれ)確かなインパクトをもたらさずにはいません。

 誤解を恐れずに申し上げますが、チャイナリスクから逃げたいのであれば、投資を止めるべきです。なぜなら、チャイナリスクから逃げられる投資領域など存在しないからです。

 私がこのレポートを通じて皆さんと共有したいのは、リスクを直視し、それを終始念頭に置いた上で、臨機応変にリスクをヘッジし、状況次第ではそれを取りにいく姿勢にほかなりません。

 私自身、日ごろ中国動向を追う過程で、「このリスクは押さえておくべきだ」「このニュースは世間で言われているほど深刻ではない」といった分析を行った場合には、このレポートで随時報告していきたいと考えています。逃げずに議論していきましょう。