中国の「台湾侵攻」の本気度:キーワードは「核心的利益」

 そのような悪夢は実際に起こり得るのでしょうか?

 私の彼の問題提起への回答でもありましたが、実際に、起こり得ます。

 その背景、根拠、理由ですが、大きく分けて三つあります。

 一つ目に、「核心的利益」という中国共産党が定める国益にまつわるものです。

 2011年9月、中国共産党は「中国の平和的発展」と題した白書を発表し、その中で「核心的利益」について次のような定義を下しています。

中国は断固として国家の核心的利益を守っていく。中国の核心的利益には、国家の主権、国家の安全、領土の保全、国家の統一、中国の憲法が確立した国家の政治制度と社会の大局安定、経済社会の持続可能な発展の基本的保障が含まれる

 この定義に対して、私が近年与えてきた解釈は、中国の核心的利益とは、仮にそれらの利益が何らかの勢力によって、何らかの形式で脅かされた場合、武力行使すら辞さない利益を指します。仮にその勢力が国内にいる場合は武力による鎮圧、海外からやってくる場合、戦争という手段に訴えてでも死守しようとする利益を意味します。

 そして、私の解釈によれば、中国が定める核心的利益は、地域的には、台湾、香港、新疆ウイグル、チベット、南シナ海、そして尖閣諸島を含めた東シナ海を含みます。制度的には、共産党が領導する中国の特色ある社会主義、が典型的です。仮に、この制度を転覆し得る勢力が、主権が及ぶ範囲内で現れたと党が主観的に判断すれば、党はその勢力や人物を問答無用に抑圧すべく動きます。例として、中国で初めてノーベル平和賞を受賞した人権活動家の故・劉暁波(リュウ・シャオボー)氏、香港の民主活動家・周庭(アグネス・チョウ)氏などは紛れもなくその対象です。

 台湾問題とは、まさに核心的利益の中のど真ん中、換言すれば、中国共産党が最も重視する、上記6つある定義のうち、国家の主権、国家の安全、領土の保全、国家の統一という四つが“直接的”に関わってくる利益です。これが、私が中国の台湾侵攻が「起こり得る」と推察する一つ目の背景です。