習近平総書記の思惑

 二つ目に、中国の最高指導者である習近平(シー・ジンピン)総書記(以下敬称略)による公式の主張です。約2年前、2019年1月2日、習近平は「台湾同胞に告げる書」40周年の談話を発表しました。中国の台湾政策を分析する上で核心的に重要な素材です。その中で、習近平は次のように主張しています。

「中国人は中国人と戦わない。我々は最大限の誠意を持って、平和的統一という前景を勝ち取りたい、平和的な方式を通じて統一を実現したいと思っている。それが両岸の同胞、全民族にとって最も有利な方法だからだ。しかし、我々は武力行使を放棄しない。すべての必要な措置を講じる選択肢を保留する。それらが標的とするのは、外部勢力による干渉であり、極少数の台湾独立分子による分裂的活動であり、台湾同胞に対するものでは絶対にない」

 主張は非常に明確です。中国共産党として、(1)平和的統一が最良だと考え、そのように動いていく、(2)武力行使は放棄しない、(3)台湾の独立は外部勢力との結託プロセスになると見積もっている、というものです。逆に言えば、台湾が外部勢力、特に米国、および米国と価値観や安全保障上の利益を共有する同盟国やパートナーと結託する、それらにあおられる形で独立を宣言する(昨年1月、蔡英文[ツァイ・インウェン]総統は英BBCのインタビューにて、「我々には、自分たちが独立主権国家だと宣言する必要性はない。我々はすでに独立主権国家であり、我々はこの国を中華民国、台湾と呼んでいる」と主張している)、あるいは独立的な動きを見せない限りは、武力行使には踏み切らないということです。

 とはいえ、習近平による「武力行使は放棄しない」という最新、公式、権威ある立場の主張は重大な意味を持ちます。これは台湾に対する単なる脅しでも、米国に対する外交辞令でも、世論に対する政治的迎合でもありません。れっきとした、綿密な戦略と計画を元に打ち出された、中国共産党・人民解放軍の台湾政策なのです。これが二つ目の根拠です。