ホテルREITへの投資は避けるべきと判断

 REITには、上記に挙げなかったもう1つの種類があります。ホテルやリゾート施設に投資するホテルREITです。今期、コロナ禍で、外国人および日本人の旅行が激減したために業績が大きく落ち込んでいます。

 問題は、コロナ後です。私は、コロナ後も、業績回復は鈍いと予想しています。したがって、ホテルREITには投資すべきでないと考えます。もし保有していれば売却して、オフィスREITや住宅・物流・流通REITに乗り換えた方が良いと思います。

ホテルREITの主要銘柄

出所:分配金利回りは10月21日時点の1口当たり分配金(会社予想)を同日のREIT価格で割り、年率換算して計算。インヴィンシブル投資法人は予想分配金を未定としている

 というのは、ホテルは、たとえコロナ禍が無かったとしても、供給過剰から業績が悪化していくリスクがあったからです。東京都内では、コロナ禍が起こる前から、「ホテルの2020年問題」が心配されていました。2020年にホテルが大量に新規開業し、供給過剰になるという不安でした。

 コロナが無くても供給過剰が心配されているところに、コロナ禍が起こったために、ホテル業界のダメージはきわめて大きくなりました。コロナが去っても、ホテルが供給過剰という構造問題は解決しないので、先行きが懸念されます。

 コロナが去れば、国内観光客は元に戻ると考えられますが、海外旅行は簡単には元に戻らないと考えられます。日本人が海外に行かずに、国内で旅行する分はプラスですが、外国人観光客が簡単には戻ってこないことが大きなマイナスとなる可能性があります。

 10月からGoToトラベルの対象に東京が加えられ、国内旅行が活性化する期待から、最近ホテルREITの価格が上昇していますが、私は、ホテルREITへの投資は避けるべきと考えています。

オフィスREITをコアに、レジデンシャル・物流・リテールREITに分散投資

 投資の参考銘柄として挙げたREIT7銘柄の分配金利回りをご覧いただくと2.8%から5.2%まで、幅広く分散しています。このような表を見ると、利回りの高いものほど有望で、利回りが相対的に低いものが魅力ないと考える方もいますが、そうではないことを強調しておきたいと思います。

 一般的に、利回りが高いファンドほど、将来、分配金が引き下げられるリスクが高く、利回りが低いファンドほど、分配金が引き下げられるリスクが低いと言えます。十分な投資資金があるならば、利回りが高いファンドと低いファンドに、分散投資することが望ましいと思います。

 REITに投資する場合、オフィスREITをコア(中核)として、望ましくは、レジデンシャル(住宅マンション)・物流・リテール(商業施設)REITに分散投資すべきと考えています。ホテルREITは、今は、投資を見合わせた方が良いと思います。

 REIT種別の投資方針を以下に記載します。

◆オフィスREIT
 利回りが相対的に低くても、分配金の安定性で評価できるのが、オフィスREITです。コロナショックが起こる前まで、都心の不動産は、需給がひっぱくし賃料の上昇が続いていました。ところが、足元、需給がやや緩み、空室率が上昇しています。平均賃料は7月まで上昇していましたが、8・9月は2か月連続で低下しました。それが、以下の三鬼商事のデータからわかります。

都心5区オフィスビルの賃料・空室率平均の推移:2004年1月~2020年9月

出所:三鬼商事、都心5区は東京都千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区

 コロナショックで、在宅勤務が増え、不動産需給はやや緩んでいます。感染が終息しても、在宅勤務を取り入れる流れは変わらず、オフィス需要に構造的な下押し圧力となる可能性もあります。ただし、オフィスの大量供給は2020年で一巡し、21・22年の供給は減少に向かうので、都心のオフィス需給がここから大きく崩れるとは考えていません。都心一等地のオフィスビルが相対的に堅調である見方は変わりありません。

 このレポートで紹介している3つのオフィスREIT(日本ビルファンド・ジャパンリアルエステイト・森ヒルズリート)は、いずれも都心の一等地のオフィスビルに投資するファンドで、REIT投資のコアとして保有するのに適格と考えています。オフィス需給に対するやや過剰な悲観が織り込まれていると考えています。日本ビルファンドは、三井不動産が運営する看板ファンドで、ジャパンリアルエステイトは、三菱地所が運営する看板ファンドです。森ヒルズリートは、森ビルの看板ファンドです。

◆レジデンシャル(住宅・マンション)REIT
 マンション市況にやや過熱感があることに注意が必要です。ただし、住宅・マンションは固定賃料が多く、コロナショックの影響を受けにくいと言えます。都心の賃貸住宅・マンションは稼働率が高く、中長期的に安定的なキャッシュフローが得られると考えらえます。

◆物流REIT
 中長期にEコマース拡大による需要増の恩恵を受けるので、投資対象として有望と考えています。

◆リテール(商業施設)REIT
 コロナ禍で、ダメージを受けています。テナントの休業、売上低下で、変動賃料が低下するなどの影響が出ています。ただし、コロナ感染が収束に向かえば、競争力の高い商業施設のテナント収入は回復し、安定すると考えています。