新型コロナでプラチナ消費は減少したが、生産はそれ以上に減少した

 現在のプラチナは、価格水準の観点で、長期投資に向いているのではないか、と書きました。ここからは、今後のプラチナ価格の動向について考察します。

 以下の通り、プラチナは、およそ60%が産業用、25%が宝飾用に使われています。産業用も宝飾用も、その増減は世界の景気の良し悪しに左右される傾向があります。このため、新型コロナウイルスの感染拡大により、プラチナ全体の消費が大きく減少する懸念が生じています。

図:プラチナの需給バランス(2019年)

出所:World Platinum Investment Councilのデータより筆者作成

 また、以下は、需要全体のおよそ85%を占める産業用+宝飾用の推移(以下、主要消費)と、供給の72%を占める鉱山生産の推移です。(2019年時点)

図:プラチナの主要な需要と供給の推移(四半期ごと) 単位:千オンス

出所:World Platinum Investment Councilのデータより筆者作成

 新型コロナ拡大の影響を受けている2020年第1四半期から、主要消費も鉱山生産も、ともに大きく減少していることがわかります。新型コロナ感染拡大前の2019年第4四半期と2020年第2四半期を比べると、主要消費が65万5,000オンスの減少であるのに対し、鉱山生産は71万1,000オンスの減少でした。鉱山生産の減少量の方が大きいことがわかります。

 このことにより、以下のとおり、2020年第2四半期、プラチナの需給バランスが供給不足になりました。

図:プラチナの需給バランス 単位:千オンス

出所:World Platinum Investment Councilのデータより筆者作成

 “新型コロナ→消費減少懸念”というイメージを容易に描くことができる一方、実は供給の方が大きく減少しているわけです。鉱山生産は、新型コロナの感染拡大が始まってから減少が目立ち始めているため、鉱山生産も、新型コロナの影響を受けている可能性があります。

 報道では、新型コロナの感染拡大によるロックダウン実施のため、世界最大のプラチナの鉱山生産国である南アフリカの生産量が大きく減少、生産能力が本来の75~80%まで回復するのは年末になる、とされており、新型コロナ起因のプラチナの供給減少はまだ続くと考えられます。

 新型コロナは、現段階では、消費減少以上に、供給減少要因である点を意識する必要があります。つまり、プラチナ価格への影響で言えば、コロナは上昇要因とみられる、ということです。この点が、正したい勘違いの1点目です。