価格差は2つの価格の関係であり、単一銘柄の割高・割安感を示すものではない

 次に、金とプラチナの価格差について書きます。筆者は近年、プラチナのレポートを書く際、金とプラチナの価格差について、積極的に触れてきませんでした。“割安”というキーワードがミスリードを引き起こすきっかけとなることを懸念したためです。

図:金とプラチナの価格および、両銘柄の価格差の推移 単位:ドル/トロイオンス

出所:各種データ元より筆者作成

 金は史上最高値近辺まで上昇しました。一方、プラチナはリーマン・ショック直後の安値水準のままです。その結果、価格差(プラチナ価格-金価格)は、マイナス方向に拡大しました。

 しばしば、価格差が過去にないほど拡大しているから“プラチナは割安だ”、という話を耳にします。価格差拡大がプラチナの割安感を強めているという話です。この点について申し上げたいのは、価格差は2つの銘柄の関係を数値化したものであり、片方の1つの価格の割高・割安を示す指標ではない、ということです。

 また、金よりもプラチナが安いことは考えにくい、という話も耳にします。この点についても、このおよそ5年間、価格差は拡大の一途をたどっていることから考えれば、この“考えにくいこと”を手がかりに、売買の目安を探ることの有効性は、低下していると考えられます。

 さらに言えば、価格差が拡大していることを “金がプラチナよりも割高だ”、とする説明をなかなか聞かないのは、なぜなのでしょうか? 過去にないほど金が割高なのであれば、金は売った方がよいのでしょうか?

 金はプラチナよりも安いものだ、これだけ拡大していることはあり得ない、という考え方をもとに売買することは、以前はできたかもしれませんが、現代の環境においては、なかなか難しいと思います。この点が、正したい勘違いの3点目です。