欧州が先行するカーボンニュートラル(炭素中立)策は、プラチナ市場の追い風
新型コロナの感染拡大は、消費減少を想起させるものの、プラチナの場合は生産の方が多く減少していること、フォルクスワーゲン問題は、欧州のプラチナ消費を激減させていないこと、金とプラチナの価格差は2つの価格の関係であり、単一銘柄の割高・割安感を示すものではないことについて、書きました。
見た目や、これまでの慣例にとらわれると、正確な状況把握ができなくなります。さまざまな情報を見聞きしても、心と頭をできるだけニュートラル(中立)に保つことが重要です。特に貴金属相場においては、過去の慣例が残っている分野だと筆者は感じています。“有事は金買いだ”などもその類(たぐい)です。
今後は、これまでの慣例にとらわれず、新しい材料に注目していくことが重要です。筆者が注目しているのは、欧州が先行するカーボンニュートラル(炭素中立)策です。これは、社会全体で二酸化炭素排出量を評価する考え方です。
例えば、これまで電気自動車は環境に配慮したクリーンな自動車だと言われてきましたが、その動力源となる電力は、まだまだ多くの国で、化石燃料を燃やし、二酸化炭素を排出しながら発電されている、というのが実情です。
社会全体で二酸化炭素の排出量を低減するため、今年(2020年)7月、欧州では水素を用いることに軸足を移すことが明言されました。このことにより、自動車業界を中心に、水素と二酸化炭素を合成したeFuel(合成液体燃料)の研究が本格化しました。日本でも、トヨタやホンダなどが、研究に着手したと報じられています。
カーボンニュートラルでは、二酸化炭素と水素から燃料を作ることで、二酸化炭素を削減したとみなします。今のところeFuelは既存の化石燃料に配合することが想定されているため、配合後の燃料を使って自動車が走行した時に排出された二酸化炭素は、燃料を作る際に削減された二酸化炭素で一部、相殺されたと考えます。
eFuelはまだコストに見合わないとする報道もありますが、ガソリンスタンドなどの既存のインフラを使うことができること、エンジン(内燃機関)を製作・開発する上でこれまでのノウハウを生かすことができる、など、メリットは大きいと言えます。欧州は、燃料電池で先行するアジアに依存しない体質を作ることを目指しているのではないか、との声も聞かれます。
欧州のカーボンニュートラル策は、欧州のディーゼル車に、まっとうに生き残る道を与えたと、筆者は考えています。プラチナを含む排ガス浄化装置向けの貴金属消費は、カーボンニュートラル策により、一定程度担保され、かつ、同時進行する環境規制への対応するため、今後、欧州における同消費は、長期的に、増加する可能性があると思います。
過去の常識や慣例にとらわれなくても、プラチナは長期視点で、非常に有望な銘柄であることを説明できると、筆者は考えています。記録的な安値水準にあり、過去の高値まで相当の上値余地を有している、かつ、長期的に消費が増加する可能性を秘めている点は、他のコモディティ銘柄のみならず、通貨や株式銘柄を見渡してみても、そう多くはないと思います。今後のプラチナ価格に、注目です。
[参考]貴金属関連の具体的な投資商品
純金積立
国内ETF/ETN
1326 SPDRゴールド・シェア
1328 金価格連動型上場投資信託
1540 純金上場信託(現物国内保管型)
2036 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ダブル・ブルETN
2037 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ベアETN
海外ETF
GLDM SPDRゴールド・ミニシェアーズ・トラスト
IAU iシェアーズ・ゴールド・トラスト
GDX ヴァンエック・ベクトル・金鉱株ETF
投資信託
ステートストリート・ゴールドファンド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)
三菱UFJ純金ファンド
外国株
ABX Barrick Gold:バリック・ゴールド
AU AngloGold:アングロゴールド・アシャンティ
AEM Agnico Eagle Mines:アグニコ・イーグル・マインズ
FNV フランコ・ネバダ
GFI Gold Fields:ゴールド・フィールズ
国内商品先物
金・金ミニ・金スポット・白金・白金ミニ・白金スポット・銀・パラジウム