お金と投資をもっと身近に
facebook twitter
「自社株買い」その後の落とし穴~自己株式の「処分」で株価が下落?
足立 武志
知って納得!株式投資で負けないための実践的基礎知識
株式投資がうまくいかない、という個人投資家の皆様へ。実践をベースにした「すぐに役立つ真の基礎知識」は、お客様の株式投資戦略に新たなヒントを提供。負けない、失敗しないためにはどのよ…

「自社株買い」その後の落とし穴~自己株式の「処分」で株価が下落?

2014/9/11
・実は「自社株買い」には続きがあった!
・自社株買いの最終的なゴールは「処分」か「消却」の2つ
・増加したはずの1株当たり当期純利益が自己株式の処分で逆に減少?
・自己株式の消却は株価へのプラス効果も期待?
facebook twitter メールで送る 印刷

実は「自社株買い」には続きがあった!

企業が自社株買いを実施すると、それは株高の要因になるというのが一般的な解説です。当コラムでも以前のコラムにてこれを取り上げました。

企業が自社株買いにより自己株式を取得すると、1株当たり純利益を計算する際の発行済株式数が減少します。そのため、1株当たりの価値が上昇し、1株当たり純利益が増加することになります。1株当たり純利益が増加すれば、PERは低下しますので、株価の上昇要因となります。

また、自己株式は純資産のマイナス項目のため、自己株式を取得すると純資産が減少し、ROEの改善にもつながります。これも株価が上昇する一因です。

さらには、市場に出回っている株を吸収することによる需給の改善も期待できます。

でも、実は自社株買いの話はこれで終わりではありません。この先にまだ続きがあったのです。

自社株買いの最終的なゴールは「処分」か「消却」の2つ

企業は自社株買いを実施したあと、取得した自己株式をどのようにしているのでしょうか。ひとまずはそのまま保有を続けるのが一般的ですが、最終的な処理方法としては2つしかありません。それは「処分」と「消却」です。

自己株式の処分とは、言い換えれば売却です。企業自身が保有していた自己株式を、他に売却することです。自己株式の消却とは、文字通り保有している自己株式を消し去ってしまうことです。

実は、自己株式を「処分」するのと「消却」するのとでは、意味合いが全く違います。そして、株価に対する影響も大きく異なってくるのです。

例えば、8月29日に自己株式の処分を発表した日新製鋼(5413)の株価は、週明け9月1日には前週末比8%安の1,012円まで下落しました。

翌2日の日本経済新聞の記事では、発行済株式数の約9%の自己株式の売り出しによる1株当たりの価値低下や需給の緩和を警戒した売りが膨らんだ、と解説されています。

増加したはずの1株当たり当期純利益が自己株式の処分で逆に減少?

結論から申し上げますと、自己株式の「処分」は株価下落の要因となります。上の日新製鋼のケースはまさにこれに該当します。

自己株式の取得は1株当たり当期純利益の増加やROEの改善につながり、株価上昇の要因となることは上で説明したとおりです。

しかし、この「1株当たり当期純利益の増加」や「ROEの改善」は、あくまでも計算上のものでしかないのです。ですから、自己株式の取得によって株価が上昇したとしても、油断はできません。

具体例を挙げて時系列で説明してみましょう。なお、当期純利益は毎年1億円で変わりないものとします。

  1. A社(発行済株式総数100万株)は、2年前に20万株の自社株買いを行いました。

自社株買い実施前:発行済株式数(※)100万株

    1株当たり当期純利益:1億円÷100万株=100円

自社株買い実施後:発行済株式数80万株

    1株当たり当期純利益:1億円÷80万株=125円

自社株買いにより1株当たり当期純利益が100円から125円に増加し、PERも低下しますので、株価の上昇が期待できます。

(※)1株当たり当期純利益計算上のもの。以下同様

  1. A社は今年になり、自己株式として保有している20万株を公募形式により処分することとしました。

自己株式処分前:発行済株式数80万株

    1株当たり当期純利益:1億円÷80万株=125円

自己株式処分後:発行済株式数100万株

    1株当たり当期純利益:1億円÷100万株=100円

このように、自己株式の処分によって1株当たり当期純利益が125円から100円に減少し、PERも上昇しますので、株価下落の恐れが高まります。

自己株式の消却は株価へのプラス効果も期待?

一方、自己株式の「消却」は株価下落の要因とはなりません。その理由を具体例で説明しましょう。前提条件は上記の「処分」のケースと同じです。

  1. A社(発行済株式総数100万株)は、2年前に20万株の自社株買いを行いました。

自社株買い実施前:発行済株式数100万株

    1株当たり当期純利益:1億円÷100万株=100円

自社株買い実施後:発行済株式数80万株

    1株当たり当期純利益:1億円÷80万株=125円

自社株買いにより1株当たり当期純利益が100円から125円に増加し、PERも低下しますので、株価の上昇が期待できます(上記「処分」のケースと同様)。

  1. A社は今年になり、自己株式として保有している20万株を消却することとしました。

自己株式消却前:発行済株式数80万株

    1株当たり当期純利益:1億円÷80万株=125円

自己株式消却後:発行済株式数80万株

    1株当たり当期純利益:1億円÷80万株=125円

このように、自己株式を消却しても1株当たり当期純利益に変動はないため、株価下落の要因とはなりません。

むしろ、消却した自己株式は元に戻せないため、将来自己株式の処分による1株当たりの価値低下の恐れがなくなることから、株価にプラスの要因として働く可能性もあります。

いかがでしょうか。自己株式を「処分」するのと「消却」するのとでは大違いであることをご理解いただけたでしょうか。

次回は、自己株式の処分の法的な意味合いや、自己株式処分による株価下落リスクへの対処法などについて解説をしていきます。

【この記事に対するアンケート回答はこちらから】

トウシルのオススメ記事

▲トウシルトップページへ

 

つみたてNISA
人気記事ランキングTOP

 

このレポートについてご意見・ご感想をお聞かせください「自社株買い」その後の落とし穴~自己株式の「処分」で株価が下落?

本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。

記事についてのアンケート回答確認

「自社株買い」その後の落とし穴~自己株式の「処分」で株価が下落?

今回のレポートはいかがでしたか?
コメント

 

 
フレッシャーズ

 
タイムトリップ
 

 

 
メールマガジン

直近1日の記事を配信します

配信:平日毎営業日配信
祝日・GW・夏季/冬季休暇 を除く

公式SNS

タイムリーな情報を
ゲットできます

配信:記事配信時 随時
facebookおよびTwitterには一部配信しない記事もあります

TOP
×
トウシル メールマガジン および SNSについて
メールマガジン 申込み

トウシルメールマガジンではレポートやコンテンツ等、直近1日の記事をお知らせします。
本メールは配信希望のお客様に平日毎日お届けしております。
リアルタイムでの情報取得は、公式SNS(facebook、twitter)もあわせてご利用ください。

  • 「メールマガジン 選択/受付」画面から購読を選択できます。
  • 楽天証券のメルマガをすでに配信希望にされている方は、
    初期設定としては購読申し込みとなっている場合があります。
  • メールマガジン購読申し込みには、楽天証券会員登録(口座開設)が必要となります。
Gmailサービスをご利用の方へ
メールマガジンを受信時正しく表示されないことがございます。あらかじめご了承ください。
メールマガジン サンプル
メールマガジンサンプル
  • 「メールマガジン 選択/受付」画面から購読を選択できます。
  • 楽天証券のメルマガをすでに配信希望にされている方は、
    初期設定としては購読申し込みとなっている場合があります。
  • メールマガジン購読申し込みには、楽天証券会員登録(口座開設)が必要となります。
Gmailサービスをご利用の方へ
メールマガジンを受信時正しく表示されないことがございます。あらかじめご了承ください。