株主還元策として自社株買いを実施する企業が増えてきた
ここ数年、自己株式の取得を実施する企業が増えてきました。自己株式の取得は、「自社株買い」とも言われ、配当金と並び、代表的な株主還元策の1つです。
しかし、配当金であれば実際に株主が金銭を受け取ることができますが、企業が自己株式の取得をしても、株主には何の身入りもありません。では、なぜ自己株式の取得が株主への還元策といえるのでしょうか。その答えはPER(株価収益率)にあります。
自己株式の取得を発表した企業の株価は上昇する傾向にありますが、これは自己株式取得によりPERの数値が改善するからです。
「自己株式取得=株価にプラス」のカギはPER
具体的な数値を挙げてみましょう。自己株式取得前の株価は1,000円、発行済み株式数が100万株、予想当期純利益が5,000万円のA社を想定します。
A社の1株当たり予想当期純利益は5,000万円÷100万株=50円となります。したがって、A社のPERは、1,000円÷50円=20倍です。
ここで、A社が10万株の自己株式取得をすると、1株当たり当期純利益計算上、発行済み株式数が90万株に減少します。
すると、1株当たり予想当期純利益は5,000万円÷90万株=55.56円となります。これを用いてA社のPERを計算し直すと、1,000円÷55.56円=18倍に低下します。
自己株式取得によってA社の業績は何ら影響を受けないので、自己株式取得前の当初のPER20倍まで株価が修正されるのが妥当と考えることができます。PERが20倍となる株価は、55.56円×20=1,111円です。
つまり、この例では自己株式の取得により、株価が1,000円から1,111円まで上昇する効果が期待できるのです。