なぜ、多くのCEOが史上最高の経済活況の中、会社を去ったのか?

 人生においても相場においてもタイミングがすべてであり、時には単に幸運に恵まれることもあろう。しかし、企業のエリートにカテゴライズされる人の中で、あまりに多くの人が同時に「幸運」に恵まれるのは奇妙ではないだろうか。金融市場が高値に向かって順調に上昇して2019年、過去最高となる1,480人のCEOが辞任し、さらには企業のインサイダーと言われる人々は株式市場が崩壊する直前に、数十億ドル相当の自社株を売却していた。

 フォーチュンの「the great CEO exodus of 2020(CEOの大脱出2020)」及び、ゼロヘッジの記事「Why Did Hundreds Of CEOs Resign Just Before The World Started Going Absolutely Crazy?(世界がひどく狂い始める直前に、なぜ何百人ものCEOが辞任したのだろうか?)」から引用してご紹介する。

 NBCニュースが発表したデータによると、去年1月から10月末までに1,332人以上が辞任したと言う。不況の真只中においては、企業のCEOが追われるように会社を後にするのは珍しいことではないかもしれないが、企業収益が順調に伸び、株式市場が記録的な高値となる中で、このように多くのエグゼクティブが辞任したことは注目に値するだろう。

 世界経済が減速しているという兆候はいくらでもあったが、株式市場が高値を追い続ける中、多くの専門家が景気後退の後ズレを予測するなど、差し迫った景気後退は予想されていなかった。それなのになぜ多くのCEOが同じようなタイミングで次に進む時がきたと判断したのであろうか。 

 以下は、2019年に退任することを選択したビッグネームのCEOたちの一部である。もちろん退任せざるを得ないそれぞれ個別の事情が浮上したケースもあるが、ボーイング、ユナイテッドエアライン、ギャップ、マクドナルド、ベストバイ、ナイキなど、現在、コロナウイルスの影響をもろに受けている企業のトップも少なくない。

  • Boeing — Dennis Muilenburg 
  • United Airlines — Oscar Munoz
  • Alphabet — Larry Page 
  • Gap — Art Peck 
  • McDonald’s — Steve Easterbrook 
  • Wells Fargo — Tim Sloan 
  • Under Armour — Kevin Plank 
  • PG&E — Geisha Williams
  • Kraft Heinz — Bernardo Hees
  • HP — Dion Weisler
  • Warner Bros. — Kevin Tsujihara
  • Best Buy — Hubert Joly
  • New York Post — Jesse Angelo
  • Colgate-Palmolive — Ian Cook
  • MetLife — Steven Kandarian
  • eBay — Devin Wenig
  • Nike — Mark Parker

 CEOの大量流出は2019年で終わったわけではない。2020年1月と2月にそれぞれ約200人が職を離れており、年初から合計すると前回の金融危機時におけるエグゼクティブ辞任数を上回っている。

 2020年に辞任した有名CEOの一部である。

  • Bob Iger, CEO of Disney
  • Ginni Rometty, CEO of IBM
  • Matt Levatich, Harley-Davidson CEO 
  • John Legere,  T-Mobile’s CEO 
  • Jeff Weiner,  LinkedIn CEO 
  • Ajay Banga, Mastercard CEO 
  • Keith Block, co-CEO of Salesforce
  • Tidjane Thiam, CEO of Credit Suisse
  • Randy Freer, Hulu CEO 

 さらに、ウォールストリートジャーナルによると、企業トップたちは、市場が完全に落ち込む直前に、数十億ドル相当の自社株を売却していたという。結果論ではあろうが、企業エリートの多くは市場退出の完璧なタイミングを知っていたように見える。おそらく、彼らは本当に幸運だったのかもしれない。いずれにせよ、手遅れになる前に株式を売却できた人にとってはうまくいったということである。

 決して彼らを批判しているわけではない。ここで共有したいのは、相場は「ファーストイン・ファーストアウト」であるということ。最後まで相場に付き合っていてはいけないのである。相場は常にバブルとその崩壊を繰り返している。それでも儲けたいという欲望から、投資家は最後まで相場と付き合ってしまうことになる。バブルだとわかっていても、売った後に相場が上昇するとたまらず買ってしまい、高値掴みをして、結局は安値で投げさせられ大きな損失を出してしまう。大きな損失を出せば、その後の投資効率は大きく下がってしまう。相場とはそういうことの繰り返しだ。幸運を手にするには彼ら企業CEOのように人よりも先に相場から降りることである。