失意のどん底にある者はやがてよみがえり、得意の絶頂にある者はやがて没落する

 2016年にノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のリチャード・セイラー教授は、リーマン・ショック(金融危機)の真実を描いた2016年の『マネー・ショート』という映画に出演しており、合成CDO(合成債務担保証券)という危険極まりない金融商品の説明をしていたことを思い出す。『マネー・ショート』は非常にいい映画だったが、今の金融界はすでにリーマンショックの反省など忘れて、同じ過ちを繰り返したのだ。

 セイラー教授は、「市場の低いボラティリティは油断の表れ」であり、「投資家が抱き続ける楽観論に懸念」を表明していた。その懸念が今到来しているのである。

 今年のノーベル経済学賞受賞者であるシカゴ大学のリチャード・セイラー教授は、活況が続き潜在的なリスクに無頓着とも映る現在の株式市場に警戒感を示した。セイラー氏はブルームバーグテレビジョンとの電話インタビューで、「われわれは人生で最も危険な時期にあると思われるが、株式市場は油断している様子だ。私には理解できないことを認める」と語った。昨年11月の米大統領選でのトランプ氏当選以降、米経済や労働市場が着実に成長する中で、S&P500種株価指数は最高値の更新が続いている。ワシントンでの実際の政策行動は限られているものの、減税への期待も追い風となっている。経済主体の不合理かつ衝動的な行動を研究し、行動経済学への貢献が受賞理由とされたセイラー氏は、市場のボラティリティー(変動性)の低さや、投資家が抱き続ける楽観論に懸念を表明した。セイラー氏は「自分は不安に感じている。投資家が神経質になれば、動揺しがちだと思われる。市場を動揺させるものは何もないようだ」と発言。株高が税制改革への期待に基づくものだとすれば、「投資家はその実現を信じられなくなっているはずだ」と述べ、税制改革が実行されるという「確信がどこから得られるのか」分からないと主張した。(『ノーベル経済学賞のセイラー氏:株式市場が心配、自分は理解できない』2017年10月11日 ブルームバーグ)

 Dr. Gloom(陰鬱博士)と呼ばれるマーク・ファーバーのレポート「The Gloom, Boom & Doom Report」の今月号には以下の言葉が添えられていた。

「群集の思想・情緒・感情・信念には病原菌のような強い感染力がある。(中略) 数頭の羊を襲ったパニックは瞬く間に群れ全体に広がるだろう。群がり集まった人々の場合、あらゆる感情が非常に急速に伝播する。それがパニックの突然性を説明している」

――ギュスターヴ・ル・ボン『群衆心理』(講談社)より

「(景気が)安定期に入ったのを知ると、安全余裕率を引き下げ、保有する現金を減らし、収益に不釣り合いなまでにキャッシュフローを大きくし、安全資産よりも高リスク資産の価格を押し上げる行動をとるようになる。しかし、そのすべてが組み合わさると、景気の腰が弱くなってしまう。ほんの少しの逆風が吹いただけで大きく動揺してしまうのだ」

――ローレンス・マイヤー(元FRB 理事、1944―)

「事態が悪くみえるとき、金融市場は決して崩壊しない。実際は正反対である。縮小が始まる前は、常にマクロ経済の流れが順調にみえてしまう。だからこそ、崩壊直前には常にエコノミストの大多数が『景気は極めて良好』と断言してしまうのだ」

――エルナン・コルテス・ダグラス(エコノミスト)

出所:マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート(パンローリング)

 Gloom, Boom & Doom(グルーム・ブーム・ドゥーム)とは、停滞、上景気、破滅を意味している。ホラティウスの『詩論』の言葉どおり、「失意のどん底にある者はやがてよみがえり、得意の絶頂にある者はやがて没落する」がマーク・ファーバーの投資哲学である。

3月18日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」

 3月18日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、土居雅紹さん(執行役員 兼 株式・デリバティブ事業本部長)をお招きして、「コロナショック下での投資プランを考える」、「FRBの利下げは失策!」というテーマで話をしてみた。

 ラジオNIKKEIの番組ホームページから土居雅紹さんと筆者の資料がダウンロード出来るので、投資の参考にしていただきたい。

出所:楽天証券
出所:楽天証券

3月18日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー(ラジオNIKKEI)

出所:YOUTUBE

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