原油価格の下落により、そろそろ現実的に米シェールが減少する可能性が高まっている

 長期的な視点で言えば、WTI原油価格が45ドル程度で推移する期間が長くなればなるほど、新規に掘削される井戸や、仕上げ(掘削済の井戸に対して原油生産を開始するために行う最終的な準備)が行われる井戸の数が減少し、米国のシェール主要地区の原油生産量が減少しやすくなると考えられます。

 以下のグラフは、米国のシェール主要地区における、開発工程の活況度合いを示す2つの指標(掘削済井戸数と仕上げ済井戸数)と、原油価格の推移を示したものです。

 今年に入り、原油価格が大きく下落しているため、足元の2つの指標は減少傾向にあります

図:米シェール主要地区の開発指標と原油価格の推移

出所:EIA(米エネルギー情報局)およびCMEのデータをもとに筆者作成

 逆オイルショック(2014年半ばから2016年末ごろまでの原油相場の急落・低迷)の際に、一時、原油相場は30ドルを割りました。

 その後の原油相場の反発の際、原油相場の急落と同時に減少していたシェール開発関連指標が増加し始めました。シェール開発関連指標が増加し始めた時の原油価格は、およそ45ドルです。

 45ドルを回復したことで、シェール業者の採算が合うようになり開発が活性化した、逆を言えば、45ドル近辺を下回ると開発が低迷すると言えます。

 つまり、45ドル近辺が、近年の米シェール業者の採算ラインと言えると思います。

 今月入り、WTI原油価格は採算ラインと見られる水準ギリギリで推移しているわけですが、この水準で原油価格が推移する期間が長くなればなるほど、比較的高コストの業者は撤退を余儀なくされる可能性があります。

 開発の低迷は、長きに渡ってOPECプラスの減産の効果を相殺し続けてきた米シェール主要地区の原油生産量を減少させる、つまり、長期的な視点で、原油相場にプラスの効果をもたらす要因になるとみられます。

 米シェール主要地区の各種データについては、毎月の統計を追っていますので、随時、本レポートで報告いたします。