SARS相場からみる新型コロナウイルスの市場への影響は?

 現在大騒ぎとなっている新型コロナウイルスの影響はどのように捉えておけば良いのか。ロイターの記事「How a virus impacts the economy and markets(「ウイルスはどのように経済とマーケットに影響を与えるのか」)」を参考に探ってみよう。

 記事によると、2017年に発表された論文では、パンデミック・リスクから予想される年間損失は約5,000億ドル、つまり世界所得の0.6%と推定されている。またマーケットにおける価格形成に関しては、影響は限定的だとしている。2003年に中国当局がSARS(重症急性呼吸器症候群)の発生をWHO(世界保健機関)に報告した後、MSCI中国株価指数は世界の指数に比べて大きく下落したものの、わずか6カ月で失われた分を戻したとしている。

2003年のSARSの発生と日経平均の推移

出所:石原順

 個別に見れば、新型ウイルスの発生は医薬品株に利益をもたらす傾向がある一方、観光や旅行関連の株(ホテル、航空会社、高級品や消費財)にはダメージとなる。「人々は公共交通機関を利用せず、仕事から遠ざかり、お店、レストラン、映画館、会議などに近づかなかった」ように、SARSの発生期間中、中国の小売売上高は個人消費が大きな打撃を受け著しい減少を示した。

 世界経済における中国の存在感が2003年当時とは比較にならないほど大きくなる中、前回の経験則はもはや役に立たないかもしれない。新型コロナウイルス騒動で、ゴールドや米国債に資金が避難しているが、為替相場では先週から中国経済と関係の深い豪ドル/円の売りが目立つ。

豪ドル/円(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル

出所:楽天MT4・石原順インディケーター

豪ドルのシーズナリーチャート(過去20年間)

出所:エクイティクロック

 春節の中国市場休場中は、代替市場として日本株が売られることに注意が必要だろう。

日経平均(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル

出所:石原順