近年は景気の山谷がはっきりしない

「後退には至らない停滞」と「景気回復の実感のない長期回復」を繰り返している

 日本経済は、平成に入ってから徐々に「サービス化社会」に入りつつあります。製造業の影響が徐々に小さくなるにつれて、景気循環の波は、分かりにくくなってきました。

 日本経済では今でも製造業が重要な役割を果たしていますが、それでも製造業の影響力は年々低下しています。代わって、広義のサービス業、IT産業の比率が高まっています。製造業でも、製造そのものを海外にアウトソースし、開発やマーケティングに特化する「ファブレス(工場を持たない)」製造業が増えています。

 消費が少し盛り上がったり停滞したりすることで起こる「消費主導の循環」は、製造業の山谷に比べて、かなりなだらかです。

 内閣府は、景気後退期を決めることで、景気循環を定義しています。でも、それでは消費が停滞するだけの悪化局面は、景気後退期の定義を満たさないことになります。そこで、景気後退期がないままに、「戦後最長の景気拡大が続いている」という話が出やすくなっています。「景気回復の実感がない」と言われながら、いつまでもだらだらと回復期が続くことになります。