来年の景気回復を先取りする株価

世界景気は「18年好調→19年悪化→20年回復」か

 日経平均株価・NYダウが最近強いのは、2020年の世界景気回復を織り込む動きと考えています。足元の世界景気は悪化していますが、株価は、景気循環よりも半年~1年先行して動きます。

 2020年4月あたりから、5G(第5世代移動体通信)、半導体の投資が盛り上がり、世界景気が回復すると考えるならば、今の日米株価の動きは、過去の経験則通りです。

過去の景気循環を振り返り:昭和までは山谷がはっきりしていた

 それでは、過去の景気循環を見てみましょう。まず、内閣府が認定している「景気後退期」をご覧ください。

内閣府が認定した景気後退期

出所:内閣府

 昭和では、景気の山谷がはっきりしていたので、内閣府も「景気後退期」の認定に、迷うことはなかったと思います。ところが、近年は、景気の山谷がはっきりせず、景気循環を定義するのが難しくなってきています。

 理由は、昭和では日本経済の主導は製造業だったからです。製造業主体の経済では、景気の波がはっきりと出ます。短期の波は「キチンの波」と言われ、製造業の在庫調整を主体として発生します。景気が良い時、ついついたくさん作り過ぎてしまい売れ残った在庫が積みあがると調整期に入ります。在庫調整が済むと、また生産が増えて景気は回復します。これが、「在庫調整の波」です。

 製造業主体の経済で、もう少し大きな波として「ジュグラーの波」があります。設備投資サイクルが作り出す波です。景気が良い時、ついついたくさん設備投資をし過ぎてしまい、余剰設備ができて稼働率が低下し、景気後退期に入ります。こちらは、在庫調整よりも深刻です。それでも、時間がたつと余剰設備は解消し、再び前向きな設備投資サイクルに入ります。昔の教科書に、ジュグラーの波は10年周期と書いてありましたが、今は、技術革新による設備の陳腐化が早いので、設備投資の波ももっと短くなっています。

 このように、製造業主導の経済では、どうしても良い時と悪い時が周期的に現れます。これが、景気循環として定義され、株価はその循環を半年~1年先取りして動いてきました。