景気拡大末期の最大の運用目標は資産保全である

 パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は半期に一度の議会証言で、「貿易摩擦への懸念や世界経済減速への不安によって経済見通しを巡る不透明感が増している」とし「必要に応じ行動する」と言明した。パウエルFRB議長のハト派のトーンを受けて、7月末の利下げが実施されるとの観測が強まっている。 

出所:ゼロヘッジ

 パウエルFRB議長は気の毒な男だ。景気が過去最大の120カ月超も拡大しているのなら、米国の政策金利は4~5%になっていてもおかしくないはずだ。イエレン前FRB議長の利上げが大幅に遅れたためにパウエルはその後始末として景気サイクルの末期で利上げに追い込まれたのである。

 しかし、利上げ開始の時期が遅すぎた。借金大国の米国は貿易戦争の渦中にあり、もう金融緩和を止められないだろう。イエレン前FRB議長の負の遺産を引きついだパウエルFRB議長は、株価や景気の循環(景気の山と谷)は決して認めないトランプ米大統領と市場によって、株式市場が停滞するたびに、利下げを催促されるだろう。

FFレート(米政策金利)の推移とバブルの崩壊 

出所:ゼロヘッジ

 パウエルFRB議長が「何でもやる」「金融危機時に用いた手法を非伝統的と呼ぶのはやめるべきであろう」と発言していることから、現在の全資産バブルがさらに延命する可能性がある。これは片道分の燃料を積んで飛び立っていった神風特攻隊の悲劇のような政策で、バブルが延命すればするほど、その後始末は手に負えないものになるだろう。