どんな危機が起きても中央銀行が危機を封印する!?

 英中銀のカーニー総裁は3日、合意なきEU(欧州連合)離脱に陥るリスクが「危機的に高い」状況になお直面しているとの認識を示した。4月12にも英国の「合意なき離脱」のリスクがあるにもかかわらず、マーケットはどこ吹く風といった楽観姿勢を続けている。

【カーニー氏はスカイニュースのインタビューで、「合意なき離脱という事態に偶発的、急に突入して、移行期間がまったく確保できない可能性がある」との認識を示した。合意なき離脱に踏み切った場合でも、WTO(世界貿易機関)の条件で実質的に関税ゼロで取引できるという一部離脱賛成派の考えは「完全にナンセンス」と指摘した。無秩序な離脱に対し、国内金融業界の準備はよく整っているが、輸出業者などは困難に直面すると見通した。】(4月3日ロイター)という。

「FRB(米連邦準備制度理事会)が将来ツイストオペや長期金利の釘付け政策をやるのではないか?」という観測が出ているように、米当局には「利下げのバッファーを温存しながらバブルを延命したい」という思惑があるようだ。米当局が意図的に長期金利を下げる方向に動いているという噂から、米国の長期金利は大きく下落している。「米国の逆イールドは当局の操作によるもので、不景気の兆候ではない」という報道も多い。いずれにせよ、長期金利の低下により、ジャンク債市場や不動産市場はバブル状況を維持している。

米長期金利(週足)

出所:石原順

 昨年12月23日にムニューシン財務長官が招集して動き出したPPT(プランジ・プロテクション・チーム=市場の急落を阻止するチーム)のPKO(株価維持政策)が功を奏して株が上がったことで、ウォール街の運用者からは、「心配するな!昨年12月からの動きを観ていたらわかるように、どんな危機が起きても中央銀行が危機を封印する。この相場は買いだ。まだバブルは膨張するぞ!」との楽観的な言葉が飛び出している。ミレニアル世代の運用者にはバフェット指標もシラー式PER(CAPE)も関係ない。「FRBが危機を封印するので株は上がる」という理屈がすべてのようだ。

NYダウ(日足) PPT(市場の急落を阻止するチーム)とFRBの動向

出所:石原順