<大統領の金融作業部会>の株価PKOによる株の上昇で、米国の証券会社も活況かと思って聞いてみると、なんと、その逆だと言う。証券会社やFX会社の話では、過去2カ月間で顧客の売買が急速にしぼんだという。レポートやラジオ等で、「今年に入って急激に景気が悪くなっている」と申し上げてきたが、世界中の企業でリストラが始まっている。

 2月12日の「Traders With $515 Billion Boycott Stocks for Cash Despite Rally」というブルームバーグの記事によると、「トレーダーは株を減らしてキャッシュポジションを44%まで引き上げている」という。つまりトレーダーは現在の米国株の上げで“売り逃げ”を図っているということだ。

 1月31日のブルームバーグには、「ヘッジファンド、金融危機直後のようにリスク回避―ストラテジスト」という記事が載っていたが、「ヘッジファンドは1月の米株回復の波に乗ろうとはしていない。むしろ、2008年の金融危機直後の時期のようにリスクを避けているもようだ」と報道されている。最もリスクをとるヘッジファンドも今の株高には素知らぬ顔をしているのである。

 

バルティックドライ指数とS&P500の連動性

 バルティックドライ指数の急落とS&P500の連動性がファンド筋で話題となっている。バルティックドライ指数とS&P500指数の連動性は高い。株の強気筋は中国の財政刺激、金融緩和、あるいは噂される人民銀行による株価PKO等により、バルティックドライ指数は近く底をつけるとみているようだが、世界景気の悪化で高値圏にある株価を支えるのはかなり難しくなってきているのではないだろうか?

 年金や証券会社を動員してバブルの延命を図っているのが今の相場だが、現在の株価や金利の水準はシラーPERやバフェット指数をみても明らかなように、歴史的バブルの状態であり、これを維持するには日銀のようなさらに上を買う投資主体やQE4(量的緩和政策の再開)並みの追加緩和が必要だろう。

 ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンもこの相場に警鐘を鳴らしている。グルーグマンは、「米経済がリセッション(景気後退)に向かっている可能性があり、米金融当局には景気の落ち込みに適切に対処できるだけの余力がない」との見解を示している。

S&P500指数とバルティックドライ指数の2カ月先行のチャート

S&P500(日足)

上段:200日移動平均線
中段:14日ATR・オプションボラティリティ
下段:ボリンジャー%b
出所:石原順