「長期の株式強気相場は近いうちに終わりを迎える」というロバート・シラー教授の警鐘

 ノーベル経済学賞学者で米エール大学経済学教授のロバート・シラー氏が、「今年ないし来年のリセッション入りの高い確率が見受けられる」、「長期の株式強気相場は近いうちに終わりを迎えるとの感覚を持っている」と発言して話題となっている。

米経済、年内にもリセッションに陥る可能性―ロバート・シラー教授
(ブルームバーグ 2019年2月13日)

 ノーベル経済学賞受賞者で、米エール大学経済学教授のロバート・シラー氏は12日、米経済がリセッション(景気後退)に陥るリスクは現実的なもので、年内にもその可能性があるとの考えを示した。

 米中通商対立を巡る不確実性や企業収益悪化の見通し、世界的な成長鈍化を背景に米経済が不況に見舞われるかどうかは投資家の間で最も活発に議論される話題の1つとなっている。そうした不透明な情勢の下で、過去10年近くにわたる米株価の上昇局面は昨年12月、終了寸前にまで至った。

 シラー教授はフロリダ州ハリウッドで開かれたインサイドETFコンファレンスのパネル討論会で、「今年ないし来年のリセッション入りの高い確率があると見受けられる」と指摘。「人々が心配していることを示す一連の兆候がある。株式市場は最長級の強気相場でもあり、それが近いうちに終わりを迎えるとの感覚がある」と語った。

 ロバート・シラー教授のシラーPER(CAPE)は過去の平均値からみるとかなり割高で、現在は1929年の10月29日の悲劇の火曜日と同じ水準に位置している。

シラーPER 2月13日現在30.13

バフェット指標 2月13日現在136

NYダウ(日足)と大統領の金融作業部会の動き

出所:石原順

<大統領の金融作業部会>の株価PKOによる株の上昇で、米国の証券会社も活況かと思って聞いてみると、なんと、その逆だと言う。証券会社やFX会社の話では、過去2カ月間で顧客の売買が急速にしぼんだという。レポートやラジオ等で、「今年に入って急激に景気が悪くなっている」と申し上げてきたが、世界中の企業でリストラが始まっている。

 2月12日の「Traders With $515 Billion Boycott Stocks for Cash Despite Rally」というブルームバーグの記事によると、「トレーダーは株を減らしてキャッシュポジションを44%まで引き上げている」という。つまりトレーダーは現在の米国株の上げで“売り逃げ”を図っているということだ。

 1月31日のブルームバーグには、「ヘッジファンド、金融危機直後のようにリスク回避―ストラテジスト」という記事が載っていたが、「ヘッジファンドは1月の米株回復の波に乗ろうとはしていない。むしろ、2008年の金融危機直後の時期のようにリスクを避けているもようだ」と報道されている。最もリスクをとるヘッジファンドも今の株高には素知らぬ顔をしているのである。

 

バルティックドライ指数とS&P500の連動性

 バルティックドライ指数の急落とS&P500の連動性がファンド筋で話題となっている。バルティックドライ指数とS&P500指数の連動性は高い。株の強気筋は中国の財政刺激、金融緩和、あるいは噂される人民銀行による株価PKO等により、バルティックドライ指数は近く底をつけるとみているようだが、世界景気の悪化で高値圏にある株価を支えるのはかなり難しくなってきているのではないだろうか?

 年金や証券会社を動員してバブルの延命を図っているのが今の相場だが、現在の株価や金利の水準はシラーPERやバフェット指数をみても明らかなように、歴史的バブルの状態であり、これを維持するには日銀のようなさらに上を買う投資主体やQE4(量的緩和政策の再開)並みの追加緩和が必要だろう。

 ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンもこの相場に警鐘を鳴らしている。グルーグマンは、「米経済がリセッション(景気後退)に向かっている可能性があり、米金融当局には景気の落ち込みに適切に対処できるだけの余力がない」との見解を示している。

S&P500指数とバルティックドライ指数の2カ月先行のチャート

S&P500(日足)

上段:200日移動平均線
中段:14日ATR・オプションボラティリティ
下段:ボリンジャー%b
出所:石原順

ボラティリティが下降中はゴルディロックス相場の継続か…

 米国株の動きをもう少し実践的に見てみよう。NYダウは200日移動平均線を少し上回るところまで上昇してきたが、株の弱気筋はこの上げは三尊天井(ヘッドアンドショルダー)の右肩だと主張している。つまり、最高値を抜くことはないという見方だ。「14日のATRやオプションボラティリティが下落中はゴルディロックス相場が続くが、戻り終われば下げるだろう」とみている運用者は少なくない。

NYダウ(週足)三尊天井パターンか!?

出所:石原順

NYダウ(日足) オプションボラティリティと14日ATR

出所:石原順

 

 米著名投資家のラリー・ウィリアムズは、騰落 AD ラインに注目しているという。「騰落ADラインはプライスよりも弱くなっています。価格構造では、E-miniS&P500 先物は下げてすぐに戻してきて、一見強くみえますが、そうではありません。これは売りパターンです」と述べている。

S&P500先物(日足)と騰落ADライン

出所:ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)2019年2月12日 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載

 

 ラリーによると、「アメリカの株式市場の ADライン(黒線)とサイクルフォーキャストを重ねると、ADラインはプライスの動きよりスムーズでサイクルの転換点と一致しているのが分かる。下のグラフのADライン(黒線)の方が、S&P500 やダウの値動きよりはっきりしており、上昇と下落の転換点がより明確になっている」ということらしい。

アメリカの株式市場の AD ライン(黒線)とラリー・ウィリアムズのサイクルフォーキャスト(赤線)

出所:ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)2019年2月12日 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載。有料レポートのため、チャートおよび文章の一部を隠しています

ドル/円相場の行方は株次第

 ドル/円は株次第の相場となっている。それ以外の材料は後講釈である。結局、株をどうみるかということではないだろうか?

 筆者はコンピューターによる自動売買では売り買いしているものの、裁量トレードでは今の円安や株高に参入する気はない。その理由は、2008年の金融危機の時のようにリスクを避けているからである。したがって、現在は小さなポジションでしか売買をしていない。

ドル/円(日足)標準偏差ボラティリティトレードモデル

上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ
中段:ADX(14)=黄・標準偏差ボラティリティ(26)=青
下段:赤色の期間=買いトレンド・黄色の期間=売りトレンド
出所:楽天MT4・石原順インジケーター

ドル/円(4時間足)標準偏差ボラティリティトレードモデル

上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ
中段:ADX(14)=黄・標準偏差ボラティリティ(26)=青
下段:赤色の期間=買いトレンド・黄色の期間=売りトレンド
出所:楽天MT4・石原順インジケーター

ドル/円(1時間足)標準偏差ボラティリティトレードモデル

上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ
中段:ADX(14)=黄・標準偏差ボラティリティ(26)=青
下段:赤色の期間=買いトレンド・黄色の期間=売りトレンド
出所:楽天MT4・石原順インジケーター

 

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