減産継続の針路はいまだ視界不良

 今回の減産継続決定には、参加国が全力で減産に取り組む姿勢があるのか、不透明感がぬぐえません。産油国として原油価格を支えたい思いはあるとみられますが、数字のトリックの可能性、駆け込み増産の利用、トランプ大統領とロシアを忖度する姿勢など、懸念点は複数あり、中でもOPECのリーダーであるサウジの温度感が低いとみられる点は大きな懸念であると思います。

 そもそも、この規模の削減ではデータ面での心もとなさがあり、それを「減産継続決定」「予想を超える減産規模」というアナウンス効果で相殺し、市場参加者の心理や、ムードを改善させて原油価格を引き上げようとしている可能性があります。

 また、今回の会合でプロセス、および決定事項は、OPECのリーダーであるサウジアラビアが、トランプ大統領やロシアを忖度せざるを得ない状況に立たされていることを表しているといえます。特にトランプ大統領にサウジ殺害記者事件で擁護してもらったという借りが重くのしかかっていると筆者は考えています。

 米中貿易戦争、欧州の混乱などで消費減少懸念が高まる中、これ以上過剰在庫を積み上げないようにするため、生産削減はさけられないとの判断から、価格上昇を目指す減産ではなく、消費減退懸念への配慮のための減産という側面もあるかもしれません。一方で日に日に関与が強まるトランプ大統領やロシアを忖度した結果が“骨抜き”ともいえる減産継続だったということなのかもしれません。

 今回の総会は、米国、サウジ、ロシアという世界屈指の産油国間の、サウジの立ち位置を一段と引き下げたと言えると筆者は感じています。

 今後の原油価格の動向を見る上で、サウジ率いるOPECの動向以上に、トランプ大統領率いる米国、そしてロシアの関与にこれまで以上に注視していくべきだと思います。

 今回の減産継続決定を歓迎するムードで原油価格は目先、上昇するかもしれません。しかし、要求が通らなかったトランプ大統領からの下落圧力が強まったり、減産開始後に減産の進捗が芳しくないデータが公表されたりした場合、この減産継続がかえって重荷になり、原油価格は下落する可能性があることに注意が必要だと思います。