日足に方向性がないときは、順張りモデルはつらい
筆者は直近のセミナー、ラジオ、レポート等で「この相場はしばらく乱高下の横ばい相場になるのではないか?」という相場観を述べてきた。その理由は、米長期金利の金利上昇トレンドがとりあえず一服し、インフレ懸念(長期金利急上昇)からのリスクオフ的な相場がピークアウトしたからである。
現状の過剰流動性(バブル)相場が延命できるか否かの焦点はインフレだ。したがって、長期金利に方向性がないと、株式市場も為替市場も空中戦的な往来相場になるだけだろう。
標準偏差ボラティリティトレードモデルでは、相場に方向性が出てくると、標準偏差ボラティリティとADX(アベレージ・ディクショナル・インデックス)が上昇する。標準偏差ボラティリティとADXが低い位置から上昇する場合は、相場が保ち合いを離れ、強い方向性をもつシグナルとなる。
相場に大きなトレンドが発生する可能性のある局面は、標準偏差ボラティリティが上昇し、ボリンジャーバンドの±1シグマ(個別株および株式インデックスのみ0.6シグマを使用)をブレイクしたときである。相場がボリンジャーバンドの±1シグマ(株式インデックスの場合は0.6シグマ)の外側にあるうちはトレンド相場が継続しており、ポジションを持ち続けるという手法だ。
標準偏差ボラティリティトレードモデルでみると、株式市場も為替市場も日足相場に明確な方向性がない。トレンド(方向性)のない調整相場は、チャートのフォーメーションが読みづらい。加えて、相場のボラティリティ・レベルも高いので、場味の良いところで相場に参入すると、「売ってやられ、買ってやられ」という消耗戦になりかねない。
米10年国債金利(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル
![](/mwimgs/d/a/-/img_da78ee42c67f7f9dd71880ccf30dcd6f63355.png)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)
出所:石原順
NYダウ(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル
![](/mwimgs/e/a/-/img_ea8fd5b9e94017edfb8fc5f6fad65dd656514.png)
下段:21日ボリンジャーバンド±0.6シグマ(緑)
出所:石原順
日経平均(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル
![](/mwimgs/9/2/-/img_92f450299fe4ad11e23fb49ec3f26e4b66749.png)
下段:21日ボリンジャーバンド±0.6シグマ(緑)
出所:石原順
ユーロ/ドル(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル
![](/mwimgs/d/2/-/img_d2d5e6352ad2842ceaf4ece2d8a7855660186.png)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)
出所:石原順
ポンド/ドル(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル
![](/mwimgs/9/c/-/img_9c4b105c6c3959c13127513394abc41261752.png)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)
出所:石原順
ドル/円(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル
![](/mwimgs/5/e/-/img_5ea590a1430c17682f70731371d1191363833.png)
ユーロ/円(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル
![](/mwimgs/0/a/-/img_0a2ac2add6517798be180fd6e4780d5c69696.png)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)
出所:石原順
ポンド/円(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル
![](/mwimgs/9/6/-/img_967154e139763e824a5f718ba18c6f0d70396.png)
豪ドル/円(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル
![](/mwimgs/0/a/-/img_0a07966457427650725d9484679f989e77849.png)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)
出所:石原順
カナダドル/円(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル
![](/mwimgs/2/6/-/img_26882b769941805d27b8ec0d910f2f9a59262.png)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)
出所:石原順
日足にトレンドがないときは取引タイムフレーム(時間枠)の短期化で収益を狙う
日足のチャートをみれば、現在の市場にトレンドがないのは明確である。こういった環境でのトレード戦略は、取引タイムフレーム(時間枠)の短期化である。筆者は標準偏差ボラティリティトレードモデルを使って、NYダウも日経平均も通貨も短期のタイムフレームでのトレードを頻繁に行っている。
ユーロ/円(30分足)
![](/mwimgs/f/b/-/img_fbc72ba5f824e82616c9f450bf8ba5fd33940.png)
中段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
下段:赤色の期間=買いトレンド・黄色の期間=売りトレンド
出所:MT4・石原順インジケーター
ユーロ/円(1時間足)
![](/mwimgs/f/b/-/img_fbc72ba5f824e82616c9f450bf8ba5fd33940.png)
中段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
下段:赤色の期間=買いトレンド・黄色の期間=売りトレンド
出所:MT4・石原順インジケーター
ポンド/円(30分足)
![](/mwimgs/7/d/-/img_7dc2b92a13be3d35a74a86fa97fcd02834995.png)
ポンド/円(1時間足)
![](/mwimgs/4/7/-/img_4755d927245c1496de5d62ca480db14b33179.png)
中段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
下段:赤色の期間=買いトレンド・黄色の期間=売りトレンド
出所:MT4・石原順インジケーター
ドル/円(30分足)
![](/mwimgs/d/e/-/img_decc69f798f2c52892320e1e86ee6c8631858.png)
中段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
下段:赤色の期間=買いトレンド・黄色の期間=売りトレンド 出所:
MT4・石原順インジケーター
ドル/円(1時間足)
![](/mwimgs/7/8/-/img_786fa6da27db9b1ef7f75c19f602204e37552.png)
逆張りのATRチャネルトレードモデル
ATRチャネルは、筆者が相場の天井と底の発見、すなわち、相場の転換点をとらえるのに用いている逆張りの道具(ツール)である。ATR(アベレージトゥルーレンジ)はTR(窓開けを含めた1日の最大値幅)の平均である。このATRを移動平均線にプロットしたものがATRチャネルだ。
下のチャートはATRチャネルトレードモデルで、相場の大転換・小転換ポイントで売買シグナルを発生させている。このモデルで3つの逆張り売買手法を実践できるようになっている。大転換ポイントは、相場がATRバンドの外にあるとき、ADXと標準偏差ボラティリティの両方がピークアウトしたときである。
逆張りは順張りより難易度が高い売買手法であり、ストップロスを置かないと壊滅的な損失を被る可能性がある。それらに留意したうえで、筆者はATRチャネルトレードモデルを使って、株式インデックスや通貨市場の短期のタイムフレーム(30分~4時間足)で頻繁に売買を行っている。
ATRチャネルトレードモデルは、すべての市場と時間枠(タイムフレーム)に拡張が可能である。
ユーロ/円(30分足)
![](/mwimgs/1/d/-/img_1d45d60dd3d709780c4a0777d1bb59b649389.png)
下段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
出所:MT4・石原順インジケーター
ユーロ/円(1時間足)
![](/mwimgs/2/2/-/img_22b8db6f84d555bd02e4aa6ad74c810e52689.png)
下段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
出所:MT4・石原順インジケーター
ポンド/円(30分足)
![](/mwimgs/2/d/-/img_2d61e79278d852d76bc7bba305691c1550583.png)
下段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
出所:MT4・石原順インジケーター
ポンド/円(1時間足)
![](/mwimgs/f/4/-/img_f4dc0857e18f518ffc41b4cd926c427249026.png)
下段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
出所:MT4・石原順インジケーター
ドル/円(30分足)
![](/mwimgs/b/e/-/img_be984c198e3ca29b619c9afe6188dec550795.png)
下段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
出所:MT4・石原順インジケーター
ドル/円(1時間足)
![](/mwimgs/2/6/-/img_26e3b9748b7ce52d04d1a6cac6708b3c46765.png)
下段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
出所:MT4・石原順インジケーター
日経平均CFD(30分足)
![](/mwimgs/8/3/-/img_831ff69095715c6662e15d55e3c1c88854291.png)
下段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
出所:MT4・石原順インジケーター
日経平均CFD(1時間足)
![](/mwimgs/2/0/-/img_209712f6eb26de77512800a73555ac1651597.png)
下段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
出所:MT4・石原順インジケーター
筆者は30年超にわたり相場に携わってきたが、取引タイムフレームの分散と取引手法(順張り・逆張り)の分散によって、運用成績が安定することは疑いのない事実である。そして、30年間いろいろな運用者をみてきたが、成功している投資家はシステマティックなトレーディング戦略を使っている。「長期的に成功している投資家は、自由裁量トレーダーであれ、システムトレーダーであれ、例外なくシステマティックなトレーディング戦略を使っている」(ロバート・パルド)のである。
相場のトレンドを認識するのに有効な指標は非常に少ないが、近年のトレンド相場衰退の中で、筆者は何をやれば稼げるのかを常に探っている。その結果わかったことは、順張りだけで楽に儲かる時代ではなくなったということだ。
逆張りは相場のトレンドに逆らってポジションをとるので、大きな損失を被る可能性がある。ある意味でとても危険な売買手法である。相場にトレンドが発生したときは、逆張りをすぐに中止しなければならない。
相場に絶対の法則はない。相場を正確に予測することは誰もできない。それでも「相場とは一体何か」と言えば、それは「確率に賭けるゲーム」だろう。筆者が心がけていることは、勝つ確率の高い局面で投資を行うということである。