日足に方向性がないときは、順張りモデルはつらい

 筆者は直近のセミナー、ラジオ、レポート等で「この相場はしばらく乱高下の横ばい相場になるのではないか?」という相場観を述べてきた。その理由は、米長期金利の金利上昇トレンドがとりあえず一服し、インフレ懸念(長期金利急上昇)からのリスクオフ的な相場がピークアウトしたからである。

 現状の過剰流動性(バブル)相場が延命できるか否かの焦点はインフレだ。したがって、長期金利に方向性がないと、株式市場も為替市場も空中戦的な往来相場になるだけだろう。

 標準偏差ボラティリティトレードモデルでは、相場に方向性が出てくると、標準偏差ボラティリティとADX(アベレージ・ディクショナル・インデックス)が上昇する。標準偏差ボラティリティとADXが低い位置から上昇する場合は、相場が保ち合いを離れ、強い方向性をもつシグナルとなる。

 相場に大きなトレンドが発生する可能性のある局面は、標準偏差ボラティリティが上昇し、ボリンジャーバンドの±1シグマ(個別株および株式インデックスのみ0.6シグマを使用)をブレイクしたときである。相場がボリンジャーバンドの±1シグマ(株式インデックスの場合は0.6シグマ)の外側にあるうちはトレンド相場が継続しており、ポジションを持ち続けるという手法だ。

 標準偏差ボラティリティトレードモデルでみると、株式市場も為替市場も日足相場に明確な方向性がない。トレンド(方向性)のない調整相場は、チャートのフォーメーションが読みづらい。加えて、相場のボラティリティ・レベルも高いので、場味の良いところで相場に参入すると、「売ってやられ、買ってやられ」という消耗戦になりかねない。


米10年国債金利(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル

上段:14日修正平均ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)
出所:石原順


NYダウ(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル

上段:14日修正平均ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±0.6シグマ(緑)
出所:石原順


 日経平均(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル

上段:14日修正平均ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±0.6シグマ(緑)
出所:石原順


 ユーロ/ドル(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル

上段:14日修正平均ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)
出所:石原順


 ポンド/ドル(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル

上段:14日修正平均ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)
出所:石原順


ドル/円(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル

上段:14日修正平均ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青) 下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑) 出所:石原順


 ユーロ/円(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル

上段:14日修正平均ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)
出所:石原順


 ポンド/円(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル

上段:14日修正平均ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青) 下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑) 出所:石原順


豪ドル/円(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル

上段:14日修正平均ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)
出所:石原順


 カナダドル/円(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル

上段:14日修正平均ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)
出所:石原順

日足にトレンドがないときは取引タイムフレーム(時間枠)の短期化で収益を狙う

 日足のチャートをみれば、現在の市場にトレンドがないのは明確である。こういった環境でのトレード戦略は、取引タイムフレーム(時間枠)の短期化である。筆者は標準偏差ボラティリティトレードモデルを使って、NYダウも日経平均も通貨も短期のタイムフレームでのトレードを頻繁に行っている。


ユーロ/円(30分足)

上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ
中段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
下段:赤色の期間=買いトレンド・黄色の期間=売りトレンド
出所:MT4・石原順インジケーター

ユーロ/円(1時間足)

上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ
中段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
下段:赤色の期間=買いトレンド・黄色の期間=売りトレンド
出所:MT4・石原順インジケーター


ポンド/円(30分足)

上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ 中段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青 下段:赤色の期間=買いトレンド・黄色の期間=売りトレンド 出所:MT4・石原順インジケーター


 ポンド/円(1時間足)

上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ
中段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
下段:赤色の期間=買いトレンド・黄色の期間=売りトレンド
出所:MT4・石原順インジケーター


ドル/円(30分足)

上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ
中段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
下段:赤色の期間=買いトレンド・黄色の期間=売りトレンド 出所:
MT4・石原順インジケーター


ドル/円(1時間足)

上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ 中段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青 下段:赤色の期間=買いトレンド・黄色の期間=売りトレンド 出所:MT4・石原順インジケーター

逆張りのATRチャネルトレードモデル

 ATRチャネルは、筆者が相場の天井と底の発見、すなわち、相場の転換点をとらえるのに用いている逆張りの道具(ツール)である。ATR(アベレージトゥルーレンジ)はTR(窓開けを含めた1日の最大値幅)の平均である。このATRを移動平均線にプロットしたものがATRチャネルだ。

 下のチャートはATRチャネルトレードモデルで、相場の大転換・小転換ポイントで売買シグナルを発生させている。このモデルで3つの逆張り売買手法を実践できるようになっている。大転換ポイントは、相場がATRバンドの外にあるとき、ADXと標準偏差ボラティリティの両方がピークアウトしたときである。

逆張りは順張りより難易度が高い売買手法であり、ストップロスを置かないと壊滅的な損失を被る可能性がある。それらに留意したうえで、筆者はATRチャネルトレードモデルを使って、株式インデックスや通貨市場の短期のタイムフレーム(30分~4時間足)で頻繁に売買を行っている。

 ATRチャネルトレードモデルは、すべての市場と時間枠(タイムフレーム)に拡張が可能である。


ユーロ/円(30分足)

上段:ATRチャネルと相場の転換点シグナル
下段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
出所:MT4・石原順インジケーター


 ユーロ/円(1時間足)

上段:ATRチャネルと相場の転換点シグナル
下段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
出所:MT4・石原順インジケーター


ポンド/円(30分足)

上段:ATRチャネルと相場の転換点シグナル
下段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
出所:MT4・石原順インジケーター


ポンド/円(1時間足)

上段:ATRチャネルと相場の転換点シグナル
下段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
出所:MT4・石原順インジケーター


ドル/円(30分足)

上段:ATRチャネルと相場の転換点シグナル
下段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
出所:MT4・石原順インジケーター


ドル/円(1時間足)

上段:ATRチャネルと相場の転換点シグナル
下段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
出所:MT4・石原順インジケーター


日経平均CFD(30分足)

上段:ATRチャネルと相場の転換点シグナル
下段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
出所:MT4・石原順インジケーター


日経平均CFD(1時間足)

上段:ATRチャネルと相場の転換点シグナル
下段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
出所:MT4・石原順インジケーター  

 筆者は30年超にわたり相場に携わってきたが、取引タイムフレームの分散と取引手法(順張り・逆張り)の分散によって、運用成績が安定することは疑いのない事実である。そして、30年間いろいろな運用者をみてきたが、成功している投資家はシステマティックなトレーディング戦略を使っている。「長期的に成功している投資家は、自由裁量トレーダーであれ、システムトレーダーであれ、例外なくシステマティックなトレーディング戦略を使っている」(ロバート・パルド)のである。

 相場のトレンドを認識するのに有効な指標は非常に少ないが、近年のトレンド相場衰退の中で、筆者は何をやれば稼げるのかを常に探っている。その結果わかったことは、順張りだけで楽に儲かる時代ではなくなったということだ。

 逆張りは相場のトレンドに逆らってポジションをとるので、大きな損失を被る可能性がある。ある意味でとても危険な売買手法である。相場にトレンドが発生したときは、逆張りをすぐに中止しなければならない。

 相場に絶対の法則はない。相場を正確に予測することは誰もできない。それでも「相場とは一体何か」と言えば、それは「確率に賭けるゲーム」だろう。筆者が心がけていることは、勝つ確率の高い局面で投資を行うということである。