彼らが原油の減産をする理由(短期視点)

 OPECプラスはなぜ、原油の減産をするのでしょうか。短期視点、長期視点の二つから考えてみます。短期視点の理由は、「原油相場が安くなるから」です。一定の目安まで下落すると追加減産を決定したり、減産期間を延長したりして、減産を強化することがあります。

 今年4月の追加減産決定は、3月の銀行の連鎖不安を背景とした原油相場の急落が主因、今回の減産期間延長は5月の米国の債務上限問題噴出などを背景とした急落が主因だったと考えられます。3月も5月も、原油相場(WTI原油)は70ドルを下回りました。

図:主要産油国の財政収支が均衡するときの原油価格(IMF予測2021・2022年の平均)単位:ドル/バレル

出所:IMF(国際通貨基金)および V-Dem研究所(スウェーデン)のデータをもとに筆者作成

 上の資料は原油相場(WTI原油)が70ドルを割り込むと、彼らは行動する傾向があります。IMF(国際通貨基金)が示した主要産国における財政収支が均衡するときの原油価格です。赤の点線で囲った中東の湾岸産油国(5カ国)の均衡価格は、67ドルくらいだと考えられます。OPECプラスの70ドルを下回ると減産を強化する傾向と符合します。

 今後もOPECプラスは、彼らが「安い」と感じる水準まで原油相場が下がったとき、減産を強化する策を講じる可能性があります。冒頭で述べたとおり、閣僚会合並みに権限が大きくなったJMMC(共同閣僚監視委員会)は、二カ月に一度、行われます。少なくとも二カ月に一度、彼らは原油価格を上昇させるための具体的な策を講じる機会を有しています。