先週の株式市場は米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ長期化懸念で大荒れでした。日経平均株価は週間で1,000円近く下落。今週9月5日(月)から9日(金)も嵐は過ぎ去りそうにありません。
先週:年内4%到達の利上げ予想とQTの資産圧縮倍増で下落続く!
先週の日本株は30日(火)に少し戻した以外、ほぼ一直線の下落が続きました。
市場は金利上昇におびえています。
9月2日(金)夜の米国株が反落したことから、今週の日本株も下げ継続で始まりそうです。
8月26日(金)のジャクソンホール会議でのジェローム・パウエルFRB議長の大幅利上げ継続発言以降、株価の下落が止まりません。
米国の金融政策を決めるFOMC(米連邦公開市場委員会)は9月21日(水)の次回会合後に、現在2.5%が上限の政策金利を0.5%上げるというのが大方の予想です。しかし、0.75%利上げの可能性もくすぶっています。
FRB内部では、物価高にもたらす米国内の旺盛な需要抑制には、年内4%超の水準まで金利を引き上げざるをえない、という主張が大勢を占めるようになっています。
FRBはコロナ禍の金融緩和で9兆ドル(約1,260兆円)まで膨らんだ総資産の額を今年6月以降、減らしています。
このQT(量的引き締め)の圧縮額が9月からは月間950億ドル(約13.3兆円)に倍増。
今後、急速に世の中に流れるお金の量が減ることも、株価にとって大ダメージです。
31日(水)には、米国当局が中国への半導体輸出規制方針を通知。エヌビディア(NVDA)が急落するなど、ハイテク株も大きく下げました。
そんな中、9月2日(金)に発表された8月米国雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比31.5万人増と堅調でした。
※米国雇用統計に関して、詳しくはこちら:1分でわかる!雇用統計と株価の関係
失業率は3.7%に上昇しましたが、これは労働参加率が上がったためです。
新たに職探しをする人の増加もあって、平均時給の伸びが鈍化したことは、インフレ圧力の低下につながります。
非常に明るい労働環境を受け、2日(金)の米国株は当初、上昇。
しかし、良好な雇用状況の中、FRBはますます強硬な金融引き締めを続けられるという不安感が台頭し、午後に入って急落しました。
日本では、金利上昇に弱い株価が割高な成長株が売られ、東証マザーズ指数は前週比3.5%安と急ブレーキ。
9月以降、東京都民の都内旅行が割引になる「都民割」が再開。外国人観光客の入国者数上限が5万人に引き上げられることを受け、JR東日本(9020)など旅行関連株が買われました。
また、1ドル140円台に到達した円安なども好感し、いすゞ自動車(7202)が年初来高値を更新するなど、自動車株がにぎわいました。
しかし、いずれも一時的な上げに終わり、全体相場は悪化の一途でした。
今週:波乱の多い9月相場に警戒感。8日のパウエル発言に注意!
今週は、5日(月)の米国市場がレイバーデーで休場になります。
そのため、5日(月)~6日(火)の日本市場は下げ基調ではあるものの、比較的穏やかな展開になるかもしれません。
米国では9月6日(火)から本格的な9月相場に入ります。
機関投資家が運用指針にするS&P500種指数にとって、1945年以降、9月は12カ月中、最もパフォーマンスが悪い月。
6日(火)夜に再開する米国市場の動向には注意が必要です。
ただ、ここ2週間の急速な下げで、株式市場はFRBの年内4%超までの利上げを、すでに織り込んだ可能性もあります。
好調な雇用統計など米国経済の健在ぶりが再評価されれば、株価が勢いよく反転上昇する可能性もないとはいえません。
今週は8日(木)夜に民間シンクタンクでパウエルFRB議長が講演します。
また同日にはECB(欧州中央銀行)が理事会を開き、政策金利を大幅に引き上げる予定です。
強硬な金融引き締め発言が飛び出たり、ECBが0.75%超の利上げに踏み込んだりすると、相場下落に拍車がかかるかもしれません。
日本では、8日(木)に2022年4-6月期の実質GDP(国内総生産)の改定値が発表されます。
速報値はコロナ明けの経済再開で個人消費が好調だったため、前期比0.5%増、年率換算で2.2%増でした。この速報値が年率換算で2.7%増まで、大幅に上方修正される民間予測になっています。
※GDPに関して、詳しくはこちら: 1分でわかる!GDPと株価の関係
「9月は相場が悪い」というイメージも手伝って、株式市場は8月末から売り一色の展開になりました。
しかし、先々週、米国で4-6月期の実質GDPの改定値が上方修正され、日本でもその可能性が濃厚であるなど、景気指標はそれほど悪くありません。
1ドル140円に到達した円安で、日本の外需産業の国際競争力や収益力は大きく向上しています。
「FRBが強硬な利上げを続けられるほど、景気は絶好調」
株式市場が金利ではなく、景気のほうに目を向ければ、下げ相場が転換するかもしれません。その可能性に賭けたい1週間といえるでしょう。