第3次オイルショックを防ぐ4つの可能性
ロシアへの経済制裁は、制裁されるロシアだけでなく、制裁する欧州や日本・米国にもダメージを及ぼし始めています。このまま原油市況が上昇し続けると、それで世界景気が腰折れする「第3次オイルショック」リスクが高まります。
第3次オイルショックと呼ぶのは、原油高騰による世界不況が起これば、1973年の第1次オイルショック、1979年の第2次オイルショック以来となるからです。2つのオイルショックに見舞われた1970年代は、原油高騰によるインフレと世界不況が同時に起こるスタグフレーションとなりました。原油が上がり続けるとそのリスクが高まります。
1973年の第1次オイルショックは、第4次中東戦争をきっかけに起こりました。OPEC(石油輸出国機構)が原油供給を絞ると、原油価格が高騰し、世界景気を悪化させました。
1979年の第2次オイルショックは、イラン革命をきっかけに起こりました。革命波及を恐れるイラクとイランの開戦が避けられない情勢となり、中東産原油の供給不足への懸念から原油価格が高騰しました。1980年にイランイラク戦争が勃発し、1988年まで続きましたが、原油供給が減ることはなかったので、戦争中に原油価格は急落しました。
さて、これから第3次オイルショックは起こるのでしょうか? 現時点でこれから起こることを予測するのは困難ですが、私はこのまま原油価格が上昇し続ける可能性は低いと考えています。以下4つの可能性がどれか実現すれば、原油価格は反落すると思っています。
【1】欧米がロシア産エネルギー輸入を継続
欧米は、原油価格のさらなる上昇を防ぐために、ロシアからのエネルギー輸入を一定範囲内で続ける苦渋の選択を取る可能性があります。
【2】サウジアラビアが緊急増産
あまり期待できませんが、増産余力のあるサウジアラビアが緊急の増産要請に応じてくれれば、供給不足への恐怖はかなり和らぎます。
【3】ウクライナ停戦
現時点では可能性が低いものの、何らかの形でウクライナ停戦が実現すれば、それをきっかけにエネルギー価格が急落する可能性は残ります。
【4】米シェール増産
ロシア産エネルギーに依存する危険が明らかになったことで、米シェールオイルの開発投資が活発化すると考えられます。開発には時間がかかるのですぐ増産に結び付くことはありませんが、1年後くらいには供給が増えてくる可能性はあります。
以上【1】~【4】の可能性を考えると、現在、原油先物を高騰させている投機筋も、一本調子で上値を追い続けるのには不安を感じるはずです。現時点で、明確な予測としてお伝えするわけではありませんが、何らかのきっかけで原油先物を買い増ししていた投機筋がいっせいに売りに回る局面が来る可能性はあると思います。